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光と影が交わる一点  作者: 柳瀬 鯨
第一章 王の誕生
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第三十三話 降りる影昇る陽

視界は歪み狭く、足は何度も崩れそうになる。

それでも、ユウは進んだ。

「……俺が……やるしか……」

リアナの泣き声が後ろから聞こえる。

「ユウ様ぁ……行かないで……っ!」

しかし彼は振り返らない。

魔獣が巨腕を振り上げる。

山を砕くような質量の一撃がユウに迫る。

リアナが叫ぶ。

「いやぁああああ!!!

 誰か……誰か……助けて……!!」

もう誰も間に合わない――

そう思った、その瞬間。

時間が、引き延ばされるような感覚に陥った。

それは気のせいでは無かった。

すると、雲の向こうから太陽そのものが落ちてきたかのような、眩い光。

森全体が白に染まり、禁忌魔獣は依然、動きを止めている。

ユウの影が長く伸び、リアナは思わず息を呑んだ。

「……光?」

「……アレン……?」

次の瞬間――

光の中から、翼 が広がった。

白銀の翼が三対。

柔らかな光の粒子を散らしながら、大地へと降り立つ。

その頭には、羊のように巻いた神聖な角。

エルフの伝承では数千年に一度現れるとされる、

《光角の聖獣》の象徴。

アレンはその姿をまとい、光の鎧を纏って現れた。

リアナは涙を落としながら呟く。

「……アレン様……本当に……?」

アレンは、震える弟分に似た親友の名を呼ぶ。

「――ユウ!」

その声は、光の神の使いかと思うほど澄み切っていた。

ユウは朦朧としながら顔を上げる。

「……アレン……?その姿は……」

「後で説明する。今は――お前を死なせに来たわけじゃない」

血の中でユウは思わず笑った。

「……うるせぇ……」

アレンは肩越しに微笑む。

「お前が無茶するのなんて、昔から分かってたからな」

光の翼を広げながら、アレンは空へと跳ぶ。

白銀の光が地面に残像を描く。

「リアナ、ユウを頼む!」

「は、はい!」

リアナは泣きながらも強く頷き、全力で治癒魔法を放つ。

アレンは両手に光の槍を生成し、空中で構える。

天から降り注ぐ光の矢が、魔獣へと突き刺さる。

魔獣が吠え、森が震える。

アレンはユウの前へ立ち、剣を構える。

その背に広がる六枚の天使翼が光を放ち、周囲の魔力を押し返す。

「ユウ。

お前は限界だ。ここからは――俺が時間を稼ぐ。」

「勝手に決めるな…!」

「だったら立ち上がってみせろよ。

お前の芯は、本当はまだ折れちゃいねぇだろ!」

ユウの瞳に、久しく見なかった“人の光”が宿る。

――バサァッ!

アレンが天に舞う。

禁忌魔獣が追撃するが、アレンは光速の軌道でかわし、逆に拳を巨獣の顔面へ叩き込んだ。

神撃ミカエル・インパクト!」

大地が割れ、巨獣が後退する。

アレンは叫ぶ。

「ユウ!

お前の影兵が完全展開できるまで、俺が持たせる!」

ユウは血まみれの指で地面に印を刻む。

「……影よ。俺に力を貸してくれ」

黒い魔力が渦を巻き、影の軍団が次々と立ち上がる。

二体の影火竜が咆哮し、地響きを起こす。

リアナの治癒魔法がユウに流れ込み、折れた骨がわずかに形を取り戻す。

(……これが、アレンの“本気”…)

ユウがその力の眩しさに一瞬だけ目を見張る。

アレンは翼を羽ばたかせ、光の線を描きながら急降下。

「――神槌ハンマードミニオン!!」

拳が巨獣の鼻先へ叩き込まれ、巨体がよろめき、森が揺れた。

続けざまにアレンは巨獣の肩に飛び移り、光刃を生成して切り裂く。

「ぐ、ぉぉおおおお!!」

巨獣の悲鳴と共に、その腕の軌道が乱れ、反撃が鈍る。

アレンは重さを乗せず、スピードと撹乱に徹する。

ユウに影を組ませるための完全な“時間稼ぎ”。

獣型影兵、人型影兵、魔獣影兵が次々に溢れ出す。

影火竜も姿を現し、鬣のような影の炎を揺らす。

リアナの治癒魔法が後ろから流れ込む。

「ユウ…お願い、死なないで……!」

彼の背中がわずかに再生し、魔力循環が滑らかになる。

ユウが顔を上げる。

「……アレン。いくぞ」

「やっと来たか! 相棒!」

巨獣が怒りに任せて両腕を振るう。

アレンが前に出る。

光壁セラフィックシールド!!」

透明な光の防壁が出現し、巨獣の攻撃を斜めに受け流し、軌道を逸らす。

その隙間から――

「影火竜、前へ!」

ユウが影火竜を突撃させる。

影炎が巨獣の脚へまとわりつき、動きが鈍る。

アレンは巨獣の頭上へ瞬間的に飛び、声を張り上げる。

「ユウ! 上に誘導する!」

「了解」

アレンが翼を広げ、巨獣の注意を完全に引きつける。

巨獣の掌がアレンを潰そうとして振り下ろされ――

アレンはそれをギリギリで上昇してかわす。

巨獣の腹部が丸見えになった。

「……そこだ」

ユウの手の大鎌が黒炎をまとう。

影刃連鎖チェイン・アビス!」

鎌が五連撃の残像を残しながら巨獣の腹へ切り込む。

影火竜の炎が次の瞬間、斬撃の裂け目に流れ込み内部から爆ぜた。

巨獣が苦痛の咆哮を上げる。

アレンは上空から降下しながら、

「ユウ、合わせろ!」

「……ああ!」

アレンは拳に光を集め、ユウは鎌に影を凝縮する。

二人が両側から巨獣へ同時に向かう。

アレン

光撃ホーリースマッシュ!!」

ユウ

影穿シャドウピアス!!」

光と影の衝撃が、巨獣の胴体を挟むように突き刺さった。

巨獣の体がくの字に折れ、大地に叩きつけられる。

地面が裂け、森が揺れ、砂塵が舞う。

巨獣はまだ死んでいなかった。

千切れた腕を再生し、二人を叩きつぶそうと振りかぶる。

「ユウ、俺が抑える! お前が終わらせろ!」

アレンが光翼を展開し、巨獣の腕に衝突。

そのまま押し返す。

光と瘴気が激しくぶつかり合う。

「アレン!! そのまま押さえてろ!」

ユウは影兵すべてを一つの影塊に集約する。

影葬剣アビス・レクイエム!!」

黒い大鎌が巨獣の首へ突き刺さり――

そのまま、影が内部へ侵食し、外からも内側からも巨獣を削り取る。

アレンが最後に光閃を浴びせる。

「ゼロ距離光断!!」

光と影が同時に弾け、巨獣の首が吹き飛んだ。

神獣が、崩れる。


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