第二五話 光極のアラン、英雄の再誕
「アレン殿、急報です!」
「また敵襲か?」
「いえ……光柱が立ちました。
北の聖域から……天へ貫くほどの光が……!」
アレンは眉を寄せた。
「……僕の魔法じゃない。じゃあ、誰が?」
報告を聞いた瞬間、胸が疼く。
(ユウ……? いや、違う。あいつの気配じゃない)
アレンは即座に動く。
そこは本来、王族すら容易に入れない神殿跡であり、かつてエルフの光の巫女が管理していた場所。
今は滅んだエルフとの国交断絶後は荒れ果て、今では封鎖されているはずだった。
だが——
神殿の中心で、宙に浮かぶ光の結晶がアレンを待っていた。
それは人工物ではない。
自然の生成物でもない。
世界が作った光の核——ライトコア。
触れた瞬間、視界が白に染まる。
アランの脳裏に、一気に流れ込む。
◆光の巫女が失われた理由
◆エルフ族が言う光の継承者の正体
◆光魔法の本質
そして——
〈我ら光の巫女も、次代の王を探していた〉
〈選ばれし者の素質はただ一つ〉
〈——心の純度〉
アレンの胸が光り、思わず息を呑む。
「純度……って……そんなことで……?」
〈善でも悪でもない〉
〈私欲でもない〉
〈守りたいという意志の強さ、それだけ〉
(守りたい……?
僕は……ユウを守れなかった……)
胸の奥に刺さっていた後悔が、光に触れたことで燃え上がる。
〈だからこそ、お前が選ばれた〉
〈失った者を追い、後悔し、それでも前に歩く者にのみ〉
〈光は宿る〉
光核がアレンの胸に吸い込まれる。
アレンの身体から炎のような光が噴き上がる。
ただ眩しいだけではない。
闇そのものを拒絶し、焼き払う光。
ユウの影が世界の裏側へ沈むほど濃くなっていく今、
アレンの光はバランスを取るかのように極端へ振れた。
背中に浮かんだ紋章は、古代エルフの王族が持つ太陽紋。
本来ならエルフ族最高位の証。
「やっぱり……僕とユウは、同じ方向へは進めないのか……」
光が涙を蒸発させる。
王城へ戻ると、騎士団も魔法師団も目を奪われた。
「ア、アレン様!? その後光は……!」
「気配が……以前の倍以上……!」
「もはや人族の魔力ではありません!」
国王でさえ立ち上がる。
「……アレン。
その力は……世界の均衡を揺るがすぞ……」
アレンは静かに頭を下げる。
「分かっています。
でも、この力が……友を救えるなら。
僕は使います。」
友という言葉に騎士たちはざわついた。
皆、誰のことか知っているからだ。
ユウの名は、今や強大な影の魔人として噂になり始めていた。
王国はユウの行方を掴めていない。
ダンジョンに行ったっきり出てこない。
(ユウ……君がどこにいても、僕は必ず——)
拳を握ると、光が弾け、周囲の魔力を弾き飛ばす。
アランは試しに魔力を流してみる。
光が実体化し、剣となる。
ただの剣ではない。
空間そのものを浄化して形を保つ存在の剣。
振った瞬間、余波が地面を白く焼く。
(これが……光の本質……)
その夜、アレンは城壁に立ち、空を見上げた。
影が世界のどこかで脈動し、
光がそれに呼応するように強まり続けている。
「ユウ……君が影の王になるなら……僕は光の王になる。」
光が拳から溢れ、星空を照らした。
ユウとアレンの道は完全に分かれた。
光と影——
世界の極点が、ついに均衡を破り始める。




