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光と影が交わる一点  作者: 柳瀬 鯨
第一章 王の誕生
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第二十三話 影の真理、深淵の扉へ

ユウは影地竜の背に乗り、下層への階段へ向かう。

影の海が、王を囲むように静かに流れ続けていた。

地竜を屈服させた後の階層は、まるで別世界だった。

空気が重く、冷たく、魔力が霧のように漂っている。

生物の気配は少なく、その代わりに——

影そのものが濃くなっていた。

影がユウの足元で波打ち、何かを訴えるように揺らめく。

「……そう。ここは影に近い場所なんだな」

影魔法は、ただ闇を操る技ではない。

ユウはそれを薄々感じていた。

ミノタロスや地竜の影を喰らうたび、魔力が増えただけでなく、

影そのものの声がはっきりと聞こえるようになっていた。

影は言葉ではなく、感情と情報の塊として直接脳に伝わる。

今日は特に強い。

〈もっと奥へ来い〉

〈影の底に答えがある〉

そんな囁きが、ずっと続いていた。

ユウは影地竜の背に乗り、進みながら考察する。

「影魔法……これは“魔族の魔法”と呼ばれ、忌避された。

でも、魔族でさえ本質を理解していなかったのかもしれない」

影の軍勢から、情報の断片が流れてくる。

〈影は存在の裏側〉

〈光があれば必ず影が生まれる〉

〈影は“力の反転〉

〈死者の残滓も影となり、世界の底に溜まる〉

「つまり……影は世界中に遍在している。目に見えるすべてに影はある。

影を支配するということは、世界そのものの裏側を掴むということ……?」

ユウは自分がどれほどの領域に踏み込んでいるのか、ようやく理解し始めていた。

影地竜が低く唸り、同意するように影を揺らした。

「……僕は、ただの人間のままじゃいられないんだろうな」

声に悲しみはない。ただ淡々と、事実を受け入れていた。

中層から深層にかけて、ユウは多くの魔獣を倒してきた。

•地獄犬の影〈影ヘルハウンド〉

→影炎を纏い、影兵を強化する焔を吐く

•大蜥蜴王〈影サーペントロード〉

→毒・麻痺・錯乱などの“状態異常影”を生成

•天井竜骨鳥〈影ボーンバード〉

→空中制圧と偵察が可能

•瘴気巨人〈影ガルム〉

→影の巨兵として前衛に最適

影軍勢はもはや個人で所有できる域を優に超えていた、

ひとつの国家なら簡単に滅ぼせるくらいだ。

影地竜はその頂点。

ユウは影たちの膨大な情報を整理しながら歩みを進めていた。

階段を降りていくと、空気が変わる。

重たく、濃密で、息が苦しくなる。

影地竜が足を止めた。

「……これは」

足元の影が、これまでで一番強くユウへ訴えかける。

〈ここがお前の起源だ〉

〈影を使う者の源流〉

〈影魔法の本当の主〉

〈その封印が……この先にいる〉

「影魔法の“主”……?」

それは魔族でも、魔王でも、闇の精霊でもない。

もっと古く、もっと危険で、

人類が存在するより前から地中に眠っていた存在。

影たちが震えるのは恐怖ではない。

歓喜だった。

「最下層……ついに着くのか」

ユウは息を吸った。

ただのダンジョン攻略ではない。自身の魔力の根源に触れる旅だ。

最下層への扉前

巨大な黒石の門が、冷たい風を吹き出していた。

紋様は影のように揺らぎ、門自体が生きているように蠢いている。

影地竜がひざを折り、道を開くように頭を垂れた。

影兵たちも全員が跪き、一斉に静寂に包まれる。

「……ありがとう。ここから先は、僕が行く」

扉に触れた瞬間、影がユウの手に吸い込まれた。

次の瞬間、門が勝手に開いた。

古い、深い、底の見えない闇が広がっている。

「影魔法の真理……。影の王に続く答えが、この奥にある」

ユウは一歩、闇へ踏み込む。

そして扉は、音もなく閉じた。

闇の中で、影が囁く。

〈歓迎する……我らの王よ〉

最下層は広大な空洞ではなかった。

そこはまるで、巨大な城の玉座の間そのものだった。

壁は黒い石でできている。

だが近づくとそれが石ではなく、影の層が固まった物質だと分かる。

ユウは息をのむ。

そして視界の奥に——

豪華な白銀の装束をまとった骸骨が、玉座に座っていた。

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