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光と影が交わる一点  作者: 柳瀬 鯨
第一章 王の誕生
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第二十二話 地を揺らす竜、影を束ねる王

ダンジョン中層。

岩肌がむき出しの巨大なホールに、地鳴りのような唸りが響いていた。

地面が震えるたび、砂が雨のように降り注ぐ。

そして——。

──ズルゥ……ドンッ!

巨大な竜が姿を現した。

■〈地竜アースドラゴン

•全長20m

•全身を覆う岩石の鱗は物理無効、各属性にも強い耐性がある

•地属性魔法を自在に扱い、地形そのものを支配

•下層への通路を守護する中層の王

人間のパーティなら百人単位でも勝てない。討伐隊を編成するほどだ

ただの竜ではなく、地脈の魔力を取り込んだダンジョンの権化。

ユウは立ち止まり、静かに影の軍団へ視線を走らせた。

背後には百を超える影兵。

その中には、

•影ミノタロス

•影狼

•影蜥蜴

•影蜘蛛

影飛竜ワイバーン

など、これまで倒した魔獣の影が並ぶ。

「……行くよ。俺の影たち」

影がざわり、と揺らめいた。

地竜が咆哮した瞬間、地面が隆起する。

地穿ちせん〉!

大地の槍がユウを串刺しにせんと突き出してきた。

だがユウは動じず、ただ静かに手を振る。

己の影が壁のように広がり、岩槍を受け止める。

衝撃で壁が何重にも千切れたが、ユウの姿は傷一つない。

「正面からは分が悪いね……」

ユウの呟きを聞き、影兵が動く。

天井から十数体の影蜘蛛が一斉に糸を射出。

地竜の脚を拘束し、動きを鈍らせる。

だが地竜が吠え、地震のような剛力で糸が弾け飛ぶ。

俊敏な影狼が左右から跳びかかり、鱗の隙間を狙う。

地竜は尻尾で薙ぎ払い、影狼が何体も霧散した。

「……やっぱり硬い」

ユウは感情の薄れた目で戦況を読み取る。

「正面からの突破は不可能。でも俺には影がある」

影ミノタロスがユウに目配せした。

その巨大な影が一歩前に出る。

「……ああ、行こうか」

影ミノタロスが上半身をねじり、影の大槌を振り下ろす。

地竜が前脚で受け止めようとした瞬間——

影槌がすり抜けて内側から爆ぜた。

「影の武器は質量を裏切る。外からは硬いなら……中に潜ればいい」

岩の鱗の内部から黒い煙が噴き出し、地竜が苦しげに身をよじる。

影蜥蜴十数体が鱗の割れ目から内部へ侵入。

毒をばらまき、内臓に直接ダメージを与える。

地竜の咆哮が苦痛に満ちていく。

「大物ほど……影の餌には最適だよ」

ユウの声は冷たい。

怒り狂った地竜が魔力を暴走させる。地面が割れ、溶岩のような赤光が走る。

〈地脈暴走〉!

——“大地そのもの”が敵になる。

「まずい……ブレスが……」

影兵が数十体、一瞬で吹き飛ばされ霧散した。

ユウの髪が揺れる。

熱風が肌を焦がす。間一髪で、影で全身を覆う。

その表情には恐れではなく、むしろ“喜び”すら宿っていた。

「強い……強いほど、良い影になる」

ユウは右手を掲げる。

影王領域シャドウ・ドミニオン〉解放

床、壁、天井——

全ての影が波紋のように揺らぎ、ユウを中心に渦を巻いた。

ダンジョンそのものが暗く染まっていく。

影兵が次々と再生し、失った個体も瞬時に補充される。

「ただ魔力効率が鬼のように悪いんだよねー」

地竜は、自分が影の海に沈みつつあると気付いた。

だが逃れられない。

「終わりだ。——喰らえ、影達」

影兵百体以上が一斉に飛びかかり、

影狼が関節を噛み砕き、影蜘蛛が糸で動きを封じ、影蜥蜴が内部に潜り、

影飛竜が頭を抑え込み、影ミノタロスが致命の影槌を叩き込む。

地竜の首が、地鳴りとともに落ちた。巨体が沈黙すると、ユウは歩み寄る。

「出てこい」

影がその亡骸の下から溢れ出し、波のようにユウの足へ吸い込まれていく。

黒い竜影が生まれ、ユウの前で跪く。

影地竜シャドウドラゴン〉 誕生。

普通の影兵とは比べ物にならない圧のある存在。

体長10m。

「ちょっと縮んだかな?」

岩鱗は闇の装甲に変わり、魔力の濃度は先のミノタロスの十倍。

ユウは静かに微笑む。

「まぁ……ようこそ。僕の王国へ」

影の軍勢が震えて喜びを表す。

「このダンジョンは……もうすぐ全部、僕のものになる」

誰も聞いていない。

聞くのは影だけだ。

影たちは裏切らない。

それだけで十分だった。

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