第十九話 賞賛と孤独
こうして教会もエルフも、一夜にして沈んだ。
そして世界には、こんな噂だけが残る。
『影を従える少年』
『光を統べる少年』
その名はまるで――
新たな神話の始まりのように見えた。
2人ともあらがうと決めた日でもあった。
数日後、街へ戻った途端、空気が重かった。
商人も、子供も、兵士も――誰もが距離を置く。目は怯え、声はひそひそと。
「……おまえ、教会を壊滅させたって本当か?」
「あんなの……魔族の手先じゃ……」
耳に入る言葉は、すべて嫌悪と恐怖。
教会の教えが完全に浸透し、ユウは街の住人すべてから魔族扱いされていた。
「僕は……ただ、皆を教会の支配から守ろうとしただけなのに……」
胸が痛む。影が静かに揺れる。息ができない。
でももう、街の誰も理解してくれない。
信仰の力は強大すぎる。
否応なく、周囲を支配してしまう。
信頼も笑顔も――もう戻らない。
小さな商店に立ち寄っても、店主は震えながら扉を閉める。
兵士に挨拶をしても、武器を構えられる始末だ。
「……ここが、僕の居場所……?」
冷たい力が、心の隙間にすーっと入り込む。
(あれ、僕どこで間違えた?この前はあんなに楽しく笑い合ったじゃないか)
小さな闇が胸に落ちた。
一方、アレンは街の中心で歓迎を受けていた。
民衆は拍手を送り、旗を振り、子供たちは「光の勇者!」と叫ぶ。
「アレン様、すごい光魔法でした!」
「これで街も安全です!」
エルフの森を制したことは、あっという間に王国中に伝わり、
人々は光魔法を制御した英雄としてアレンを崇めた。
「……やはり、力は人を守るためにあると示すのが一番だな」
アレンは微笑み、兵士たちに向かって光の魔法を軽く放った。
ほんの少しだが、空気が明るく照らされ、民衆の歓声がさらに大きくなる。
「そうだ、ユウ、ユウはどこにいる?」
近くにいた兵士に尋ねる。
「かのものは我らの憩いの場であった教会を破壊しただけでなく司教様まで手にかけたかの大罪人は今頃、己の罪の重さを理解することでしょう」
「なに?もう一度言ってみろ」
「よ、要するに神の怒りを買ったのです」
理解が追いつかなかった。




