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光と影が交わる一点  作者: 柳瀬 鯨
第一章 王の誕生
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第十四話 再びの謁見

 数年という時間は二人にも変化をもたらした。

 ユウは以前より堂々とした立ち振る舞いになり、

 兵士に指示を出す声も落ち着いた。

 戦闘以外の任務が多かったおかげで、

 影の使い方も精密で柔らかい方向へ進化していた。

(影で民家の荷物運びを手伝う日が来るとは……)

 本人は若干戸惑っている。

 アレンは、規格外魔法と戦術を組み合わせる研究に没頭。

 ここ数年で新しい光魔法の応用形も開発し、

 兵士たちは「アレン様は安定感がえぐい」と尊敬を越えて崇拝気味になっている。

(ユウが影で人気なら、俺は光で人気……まあ悪くない)

 そんな余裕も出てきた。両者筋トレも頑張り中である。

 半年の訓練と交流を経て、夜帷軍と晨輝団はもはやセットのような関係になっていた。

 夜の偵察は夜帷軍、

 朝の索敵と整備は晨輝団、

 そのまま一日の任務が流れるように繋がり、

 兵たちは互いを兄弟部隊のように扱っていた。

「ユウ様、晨輝団からまた差し入れが来てます」

「え、昨日もじゃなかった?」

「光魔法の実験で余った暖かいスープだそうです」

「ありがたいけど……なんか仲良すぎない?」

 逆に晨輝団に行けば、

「アレン様、夜帷のやつらが荷物運んできました!」

「げ、いつの間に…」

 という状態。

 影と光の相性の良さは、部隊の絆にも現れていた。

 そんな穏やかな季節が過ぎたある日。

 王城から正式な召集状が届いた。

『ユウ、アレン。両名は明朝、謁見の間へ参られたし――

 次なる任務について話がある。』

 ユウとアランは顔を見合わせた。

「最近、平和だったけど……ついに来たか」

「戦かは分からないけど、王が呼ぶってことは……大きい話だな」

 影がざわりと揺れ、アレンの光が小さく光ったように見えた。

 数年の成長を経て、二人は新たな局面に臨むのだった。


 翌朝、ユウとアレンは王城の謁見の間へ向かった。

 今日は兵士や魔法より、言葉と判断が力を持つ日だ。

 玉座の前には国王陛下だけでなく、

 王国宰相、外交官、軍務卿など、

 王国の中枢を担う人物がずらりと並んでいた。

(うわ……今日はまじめな政治の空気だ)

(俺たち、こういうの苦手なんだけどな……)

 ユウもアレンも内心で溜息をつきつつ、姿勢を正す。

 国王は静かに口を開いた。

「ここ数年、国境は安定しておった。両名の働きによるところが大きい。

 だが……平和の裏で国内が揺れ始めておる」

 ユウとアレンは目を見合わせる。

「国内、ですか?」

「ええ。隣国との小競り合いが止まったため、王国貴族たちに余計な余裕が生まれましてな」

 宰相が、書簡を数通ユウたちに見せる。

「こちらをご覧ください。

 各地の貴族が“独自の私兵強化”に動き始めています」

「私兵……?」

「ええ。この半年、あなた方の夜帷軍・晨輝団が人気を博しておるでしょう?」

 外交官のミラが柔らかく微笑む。


「特にユウ様。商人ギルドや北方領主から影の部隊に共同訓練をして欲しいという依頼すら来ています」

(うわ……人気になりすぎた?)

(いや、晨輝団も工兵として評価が……)

 アレンも気まずそうに目をそらす。

「貴族たちは“王国直属の二大部隊が存在感を増している”と感じています。

 つまり――王権強化と受け取ったのです」

 その言葉に謹厳な軍務卿ドルガが付け加える。

「今のままでは、貴族連中が勝手に勢力争いを始めかねん。国として統制せねばならぬ」

「だが困ったことに、貴族たちの間では噂が広がっていてな」

 国王は重い声で言った。

「ユウ、お前の影は魂を縛る禁呪ではないかと」

「アレン、光の規格外魔法はエルフ王家の血を継ぐ者ではないかと」

 ユウとアレンは同時に意味不明の顔をした。

「いやいやそんなわけないだろ!」

「俺たちも初耳だよ!」

 宰相レギンがため息をつく。

「噂は政治では毒にも武器にもなる。事実よりも『どう見えるか』が問題なのです」

 国王は姿勢を正し、改めて二人に向き合う。

「そのため、両名に命じる。数年かけて育てた部隊を、各地の主要貴族へ巡察せよ」

「巡察……?」

「はい。彼らに“戦力を誇示する”ためではありません」

 ミラが優雅に言葉を継いだ。

「むしろ逆です。

 夜帷軍も晨輝団も王国の一部であり、貴族の敵ではないと示すための外交なのです」

 宰相も頷く。

「具体的には、以下だ。

 ・貴族領で軽い治安維持や演習を行う

 ・各領の問題(盗賊、物流、魔物)を助け、恩義を作る

 ・噂の払拭と、部隊の正当性を伝える」

 アレンは腕を組んだ。

「つまり、喧嘩を売りに行くんじゃなくて、

 『味方だよ』って挨拶して回る……ってことか」

「そういうことだ」

 ユウは影が不安そうに揺れるのを感じながら尋ねた。

「影兵は……怖がられるかもしれませんね」

「構いません。怖がられる前に助けてしまえばよいのです」

 国王は穏やかに笑った。

「敵意は恐れを生むが、恩義は心を開かせる。それが政治というものだ」



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