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光と影が交わる一点  作者: 柳瀬 鯨
第一章 王の誕生
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第十三話 合同演習

 数年後。

 王都の外れ、緩やかな丘陵が続く平野。

 戦場ではなく、鳥のさえずりとそよ風が支配する穏やかな場所だ。

 今日も“夜帷軍”と“晨輝団”の合同演習――と言っても、半分は顔合わせと親睦会のようなものだった。

「ユウ様! あの影の兵士って、どうやって呼び出すんですか!?」

 夜帷軍の兵士だけでなく、晨輝団の兵士までユウの周囲にわらわらと集まっていた。

 ユウは困ったように笑う。

「いや、そんなにすごいもんじゃないって……」

ユウの足元から影がふわっと伸び、ぽん、と晨輝団の兵士の肩を優しく叩く。

「ひッ!? こ、こんにちは……?」

「……返事してるみたいだな」

 兵士たちは怖がりつつも興味津々。

 戦場での恐怖の力も、こういう場ではただの“おもしろい特技”になってしまう。

 一方のアレンは――

「アレン様! その光の魔法、明かりとしても使えるんですか!」

「焚き火よりあったかい!」

 兵士の子どもみたいな歓声が上がり、気がつけば彼の周りだけやたら明るい。 

どちらが子供か分からないくらいだ。

「いや、お前ら……俺はただのランタンか?」

「ですが便利です!」

「アレン様は夜営でも頼りになります!」

「褒めてる方向が地味だな……?」

 とはいえ、兵士たちは完全に懐いていた。

 光の魔法は戦場では脅威だが、平時では“安心の象徴”だった。

午後からは、簡単な体力テストや訓練競技をする予定だった。

「じゃあまず、的当てだな」

「おおー!」

 弓兵が矢を放ち、魔法兵が光球や風刃を撃ち、影兵は……

 なぜか影が勝手に的を持ち上げて動かしてしまう。

「ユウ様!? 的が動いたら当たらないんですけど!?」

「ご、ごめん! やめて! 今は遊ぶな!」

 兵士たち、大爆笑。

 ユウは耳まで赤い。

 次はアレンのターン。

 光で的を照らしてくれるつもりだったのだが――

「うおっ!? 光が反射して眩しい!」

「アレン様、少し弱め……!」

「ま、待て! 今調整してる!」

 なぜか全員が目を細めてしまい、的当てどころではなかった。

 結局、的当ての勝者は……普通の弓兵だった。

丘の上、木陰で休むユウとアレン。

「なんか……僕たち、隊のエースって感じじゃなかったね」

「むしろ場を乱してた気がするな……」

 二人とも微妙に肩を落としている。

 だが、下を見れば兵士たちは笑顔だらけだ。

 夜帷軍の兵士と晨輝団の兵士が自然と混ざり合い、

 互いの武器を見せあったり、昼食を交換したりしていた。

「まぁでも……なんか、いいよな」

「うん。戦場じゃないなら……これくらいがちょうどいい」

 ユウの影がふわりと伸びて、アレンの背中にタオルを届ける。

「ありがと。……ほんと器用だな、それ」

 アレンは笑いながら、空を見上げた。

 光と影が交わる、穏やかな午後。

 部隊同士は仲良くなり、

 何よりユウとアレン自身が人を率いる重みを自然に感じる時間だった。

 あれから数年・・

 戦火は広がらず、王国は久しぶりに穏やかな季節を迎えていた。

 ユウの夜帷軍は、影の偵察能力と隠密性を買われ、ほとんどが国境警備や治安維持の任務に当たっていた。

 戦うより、夜間に迷子になった村人を探したり、盗賊団の巣を影で包囲したり――

 派手さはないが、民からの信頼は大幅に高まっていた。

「ユウ様、最近は影が子供に手を振られてますね」

 影がヒョコっと形を変えて、ひらひらと返事している。

 子どもたちは拍手喝采。ユウは今日も少しだけ困っていた。


一方、アレン率いる“晨輝団”は工兵としての評価が急上昇。

 光魔法が土木作業と抜群に相性が良く、

 街道整備や橋の補強、軍の訓練場の改修など、国の生活基盤を整える大仕事に貢献していた。

「アレン様、光で瓦礫を一気に固めるのは反則です」

「いや、ただの効率化だ。俺は魔法でできることをやってるだけだぞ?」

「……職人の仕事が増えるから助かってます!」

 労働者たちからも大人気。

 晨輝団は“光の工兵”として定着しつつあった。


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