第十一話 反省会とアレンの光
前線の戦いが終わり、朝焼けの光が戦場を淡く染める。
ユウは砂だらけの鎧を直しながら、大鎌を肩にかけて立っていた。
影兵たちは静かに整列し、周囲の荒れた地面に静かに膝をつく。
「ふぅ……やりすぎたかな……」
小さく呟いたその声は、誰にも届かない。
あの“黒い死神”の演出――影を吸い込み、砦を一瞬で制圧した光景――
振り返れば、あまりにも自分が厨二すぎたと、自覚せずにはいられなかった。
「僕……ちょっとやりすぎたかも……」
口の端を指で押さえ、顔を赤らめるユウ。
そんな姿は誰も想像していなかった。
一方、自国の兵士たちは戦場を歩きながら、歓声を上げていた。
「ユウ様最高!! 見たか!? あの黒い軍隊!!」
「まさかあれほどまでとは……完全に無敵じゃねえか!」
「もうお前がいれば、敵国は絶対勝てねえ!」
砂だらけのユウを取り囲み、肩を叩きながら笑う。
その熱気に、ユウは思わず目を逸らす。
「……いや、あの……僕……やりすぎて……」
兵士たちは大爆笑。
「影を従えて砦を粉砕とか、戦神かよ!!」
「影兵もすげぇ! 俺たちやることなかったわ!」
ユウはしばし目を泳がせる。
「……僕……本当に……」
「いいんだよ! それで敵を震え上がらせるなら、むしろ大歓迎だ!」
歓声と笑い声が戦場跡に響く。
ユウはため息をつきつつも、心のどこかで少し嬉しさを噛みしめた。
(僕って意外と強いのかも!!)
影兵たちが静かに周囲を守る中、戦士たちの笑顔と歓声が、戦場の緊張を和らげていた。
その日、ユウは心の中で誓った。
「次はもう少し、控えめに……いや、たぶん無理だな……」
でも自国兵士の歓喜と笑顔を見て、少なくとも今日は“戦場の英雄”として、皆のヒーローであることを素直に楽しむユウであった。
東方の荒野、砂煙と朝霧が交錯する戦場。
ここではユウの“死神”の噂はまだ届いていなかった。
光に選ばれた子アレンは、騎士団と歩兵を率いて敵の補給路封鎖任務に就いていた。
「全員、構えろ。敵は夜明けまでに補給線を通る。叩き潰すぞ」
兵士たちは緊張と期待が入り混じった表情で応じる。
だが、アレンの目には冷静さと、もう一つ、力の昂ぶりがあった。
(よし……ここで見せてやる……俺の力を)
アランは掌に魔力を集中させた。
光の粒子が指先に集まり、太陽の光を凌ぐ輝きに変化する。
その光はただ明るいだけではない。
兵士の目には、まるで天使そのものが降臨したように映った。
遠くに、敵の補給隊が見える。
荷馬車、軽装兵、護衛――すべてが隊列を整え、悠々と進んでいる。
「光よ……」
アレンが手を振ると、掌から放たれた光が巨大な刃のように敵陣へ振り下ろされる。
光は風を切る音すらなく、一直線に敵兵を裂き、城壁をも切り伏せる。
補給物資は瞬く間に燃え、荷馬車は粉々に崩壊する。
「うわ……なんだあれ……!?」
敵兵の叫び声が戦場に響く。
光はまるで意思を持つかのように追尾し、逃げる者を容赦なく打ち倒した。
アレンはさらに光を集中させる。
大地に手を触れると、砂塵が一瞬で白金の閃光に包まれ、敵の隊列を一気に切り裂く。
光の規格外魔法が爆発的に広がる。
敵の大砲も、弓も、魔法も、まるで光の前では無力。
大地が震え、砂塵が光に変わるその光景に、兵士たちは歓声を上げる。
アレンは冷静な声で指示を飛ばす。
「全員、退路を封鎖する。補給物資を奪え。」
兵士たちは魔力と戦術を信じ、次々に敵兵を取り囲む。
補給隊はあっという間に投降するか、逃げ場を失った。
戦いの後、荒野に立つアラン。
光の魔法の残滓が砂に反射して、まるで戦場全体が白金に染まったかのようだ。
「ユウはうまくやってるかな」




