表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『Echoes of Logos ― 夢幻令嬢、迷宮に堕つ。―』  作者: ちょいシン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/49

第4話:空白の記録

目を覚ました紗雪と縷々(るる)が見たのは、月明かりに照らされた図書室の片隅。あの教室での出来事は夢じゃなかった。縷々の震える声が告げる、「もうひとりの私」の存在。その言葉は、冷たい現実として二人にのしかかる。


そして、奇妙な風の音に導かれ見つけたのは、五年前に焼失した旧校舎の**『学級記録』。ページをめくると、あるべきクラス全員の名前が「空白」に塗りつぶされていた。さらに、一枚の写真に写る「顔のない少女」**。その異様な光景に既視感を覚えた瞬間、図書室のドアが静かに、だが確実に閉まる。


「…“あれ”、ここに来た」縷々の囁きに、部屋の空気が一変する。逃げられないと悟った紗雪は、記録簿の裏に挟まっていた震える筆跡のメモを手に取る。そこには、背筋を凍らせる一文が記されていた。


「“わたし”の名前を呼ばないで。あなたの中に、入るから」


この空白の記録が示す真実とは? そして、迫りくる「あれ」の正体は? 紗雪と縷々の、終わらない悪夢が今、再び幕を開ける――。

「……ここ、どこ……?」


目を覚ましたのは、図書室の隅、カーテンの影。


月明かりが差し込む静かな空間に、紗雪と縷々は肩を寄せ合って座っていた。


「……夢じゃ、なかったよね」


紗雪の問いに、縷々は小さく頷いた。


「でも、あたしは――あの教室に閉じ込められてた。“名前”を呼ばれた瞬間から、何かが私の中に入ってきて……」


「……でも、あんたはあんたのままだった。だから、助けに行けた」


ふたりは目を合わせ、微かに笑みを交わす。だが、それも束の間。


縷々がふと顔を曇らせ、震える声で告げた。


「ねえ、紗雪……“あたし”がふたり、いたよね」


「……見えたんだ」


「うん。あの影……あたしの“形”を真似てた。今も、あれがどこかにいる気がする。


“あたし”の代わりに、ここに残ってる」


紗雪は無意識にポケットの中のお守りを握りしめた。


お守りは冷たく、だが確かな存在感を持っていた。


そのとき、図書室の棚の奥――普段は施錠されている資料保管棚の隙間から、風のような音が響いた。


「……開いてる?」


ふたりが近づくと、そこには分厚い一冊の記録簿が置かれていた。


『桜咲学園 学級記録 第七号』。


年代は五年前。ちょうど、旧校舎が火災に遭った年と一致していた。


「これ、何?」


紗雪がページをめくる。出席簿、備考欄、行事記録、写真……だが――


「……おかしい。あるべき“名前”が、全部、消えてる」


まるで、誰かが意図的に修正液で塗りつぶしたように、クラス全員の名前が「空白」になっていた。


縷々が震える指で、一枚のページを指差す。


「この写真……見覚えある。あたしたちの教室……でも」


写っていたのは、整然と並ぶ机、笑顔の生徒たち。そして――


その中央に立つひとりの少女。


顔が、ない。まるで塗りつぶされたかのように、黒い靄に覆われていた。


「この子が、“あれ”……?」


紗雪は強い違和感を覚えた。

(この写真の“気配”、どこかで……)


と、そのとき。


ぱんっ


図書室のドアが、勝手に閉まった。


風もないのに、本棚の一角が揺れ、本がひとりでに崩れ落ちる。


縷々が息を呑む。


「……“あれ”、ここに来た」


一瞬にして、部屋の空気が変わる。冷気とも、重力とも違う、“視線”のような圧が押し寄せてきた。


だが、紗雪は静かに立ち上がった。


「逃げても、追ってくるなら――あたしたちの方から、正体を暴くしかない」


そう言って、記録簿の奥、ページの裏に挟まれていた一枚のメモを取り出す。


そこには手書きの文字が、震える筆跡で綴られていた。


「“わたし”の名前を呼ばないで。あなたの中に、入るから」


空白の記録、顔のない少女、そして不可解なメモ……。旧校舎の火災から五年、封印されていた過去の断片が、今、紗雪たちの目の前に姿を現しました。そして**「あれ」**は、ついに二人のいる図書室まで追いついたようです。逃げ場のない状況で、紗雪が手にしたメモに書かれた言葉の意味とは? 次回、二人はこの謎にどう立ち向かうのでしょうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ