第7話 *ルハロ殿下視点~ラスト(過去編)~*
更新遅くなってしまい大変申し訳ありませんでした。
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_____2週間後
僕はもう正直心が折れていた。理由は簡単、ルナが全く靡かないからだ。僕はますます彼女に夢中になっているぐらいなのに。
あらゆる手を尽くしてときめかせようとしたが、ふわりと微笑んではのらりくらりとかわされる。
でも、もう約束の刻限だ。つまりそれは、ルナへの恋を諦めなければいけない時になったということ。
───────それでも諦めきれない、どうしても僕はルナがいい。絶対にルナじゃないとダメなんだ。
分かっている、頭では理解している。婚約者のいる僕が彼女と恋仲になるのは許されないことだというのも、ルナと付き合ったら必ず後悔するということも。
何故かはわからない、分かりたくもない。分かったら正気じゃいられなくなると思うから。
──────ルナのことが好きだと自分に思い込ませているだけだと気づきたくないから。
好きだと自分に思い込ませないと、僕はきっと狂ってしまう。
ただでさえルナと話していると、時折どうしようもないほどの高揚感で気分が悪くなるのに。
彼女が秘めた、何か得体のしれないものが確実に僕の心を蝕んでいるのだ。
それから必死に逃げようとしたけど‥‥‥‥‥
─────────もう逃げられない。
こうなるのは分かっていた。後悔はない、ないけど‥‥‥‥一つだけ心残りがある。
婚約者のミハーリア・ビューラルヘン公爵令嬢のことだ。
元々僕は婚約者が怖かった。人間味がなく、機械的だった彼女の笑顔が僕を拒絶しているようだったし、それを受けて僕も無愛想になっていった。おかげで、二人の間にあった薄かった壁が、今や辞書のように分厚く取り返しのつかないものとなっている。
それでも、こんな僕でも婚約者に対するある程度の好意や愛情は持ち合わせている。それを「愛」とは呼ばないのだろうが。
きっと僕は変わってから彼女を傷つけてしまう。ああ見えて繊細な彼女はきっと心を病んでしまう。
彼女に事が伝わったら多分どうにかなるだろうと考えた僕は、紙片にメッセージを残した。
『ミハーリア・ビューラルヘン公爵令嬢へ
突然だが、これからきっと僕は僕でなくなって、君のことを傷つけてしまうだろう。それでも、前向きに生きてほしい。あまり親しくもない婚約者にそんなことを言われても響かないとは思うが。
正直に言って、僕は笑わない君が怖かった。いつも君は無表情だった。でも、そうさせたのはきっと僕なんだろう。
いままで冷たい態度をとってしまって本当に申し訳なかった。
僕を好いてくれてありがとう。僕がいつ君に愛を返せるかわからないけど、待っていてほしい。
そして、いつか僕を助けてね。』
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「くだらない‥‥‥‥こんなもの」
そう呟いてボクは紙切れを握りつぶした。
昔のボクがあの「地味令嬢」ミハーリア・ビューラルヘンにこんなメッセージを残していたなんて‥‥‥‥。
今も昔も、確かに僕は婚約者である彼女に興味はなかった。
だというのに、こんな、「君を愛している」とでも言いそうな勢いのメッセージを残すというのは、いったいどんな心理状態で書いたのだろう。
「僕」とボクは似て非なる存在だ。だから「僕」の考えていたことはボクには分からない。
でも一つだけ分かるのは‥‥‥‥。
「僕は既にミハーリア・ビューラルヘン公爵令嬢に惹かれていたのか‥‥‥‥」
「僕」にとってミハーリア・ビューラルヘンはどんな存在だったのだろう。
ボクはそれがどうしようもなく気になった。
「‥‥‥‥話してみるか、彼女と」
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