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立秋VS渡瀬

月光が勝利し、そのままぐっすり眠り込む三十分前──。


立秋と渡瀬は、まさに鉢合わせしてしまった。


互いの目には相手の姿と、向けられた敵意の炎が映り込む。まるで水神・共工と火神・祝融の戦いが、今にも始まろうとしているかのようだった。


二人はガラス玉をぎゅっと握りしめ、空気は一瞬で張り詰めた。


一方そのころ。


六日は岩の間を苦労しながら移動していた。昆虫のような彼女の羽は小さくて軽く、長く飛び続けることができない。悪魔の身体というものは、長所ばかりではないのだ。七つの大罪に属する悪魔それぞれで身体構造は異なり、能力もまったく違う。


立秋はカラスで、空を見上げれば黒いダイヤのように輝く巨大な翼が天を翔けているのが見える。則保はクモで、糸を使い自由自在に移動していた。


時折、間欠泉に吹き上げられて火傷している悪魔が目に入り、六日は思わず身震いする。前の者たちの失敗を見た六日は、噴き上がるタイミングを観察し、慎重にこの危険だらけの地帯を越え始めた。


やっとのことで火山が見えてきたその時──突然、一つの影が彼女の目の前に飛び出してきた。


「えっ……」六日は思わず固まる。


そこには、笑顔を浮かべて立春満が立っていた。まるで目の前の相手が敵ではないかのように、親しげで丁寧な声で挨拶してくる。「こんばんは、六月ちゃん。」


こちらでは、立秋が先手を打った。立夏月光を相手にした時と同じ技を再び発動する。巨大な鳥の巣がまるで雲のように連なり、人工の陽光を受けて黒曜石のようにきらめく羽根が再びカラスへと変じ、「ケケケッ」と不気味に笑う。


意外なことに、渡瀬は何もしてこない。ただ立秋を観察しているかのようで、その警戒心はさらに深まっていった。


カラスがくわえる魔力が増えるほど、立秋の身にまとわりつく魔力も濃くなり、ついに渡瀬へ向けて第一撃を放つ。紫黒の魔力弾が渡瀬へ向かって疾走する──その瞬間。


まるで海賊映画に出てくる巨大なサメのような二体の悪獣が突如として飛び出し、鋭い歯をむき出しにした大口でその攻撃を丸ごと飲み込み、完全に無効化してしまった。そしてサメは攻撃を喰らった分、さらに巨大化していく。


他者の魔力を奪い取る──それは“強欲”の眷属がよく使う手段だ。だが、自分の大罪の性質を理解していても、それが必ず勝利に繋がるとは限らない。


攻撃が吸収されたのを見て、立秋も黙ってはいられない。鳥の巣を使って大気中の魔力を集め続け、次々と攻撃を放つ。炎暑祭を経て、彼は飛躍的に成長しており、攻撃の間隔はどんどん短くなり──最終的には、もはや弾幕と言っていいほどの連撃となった。


轟音と砂煙が会場を覆い、観客の悲鳴が交錯する。濃厚な煙と砂塵がしばらく立ちこめたのち──視界が晴れた時、渡瀬寒はなんと無傷だった。しかもサメの数は倍に増えている。


巨大な血盆口から次々と氷柱を吐き出し、まるで海賊映画で互いの船が砲撃し合うように、立秋へ向けて激しく掃射してくる。再び濛々と砂塵が舞い上がり、立秋をかすめる勢いで氷柱が突き刺さった。


「本来なら、魔力を吐き出したら小さくなるはずだ……奪っているだけじゃない? いや、これは……」


理解できない状況に、立秋は観察を続けるしかなかった。


渡瀬寒は奇妙な男だ。冷淡な性格ならまだしも、あの日、月光に向けた助言は、ただの冷酷さではない何かを感じさせた。彼にも何らかの執念があるのだろう。だが、それが何なのか、情報が少なすぎる。


以前、渡瀬寒を狩ろうとしたこともあったが、彼は逃げ切った。数少ない、立秋の不快な“ミス”のひとつだ。彼は悪魔の読心能力を使っているのか?


もし立夏月光と戦場で相対したら、あれも苦戦は免れなかっただろう。


立秋は別の攻撃を試す。

無謀に見えるほど前に出て射撃──

だが、その攻撃はまるで巨大な鷲のように形を変え、

先ほどよりも明らかに重く鋭い殺気を帯びて渡瀬へ迫った。


今回、渡瀬のサメは防ぎきれなかった。巨鷲の攻撃は圧倒的な威力でサメを粉砕し、悪霊は風に散らされるようにあっという間に消えていく。立秋の耳にはサメの断末魔が微かに残った。


まるで本物の鷹が獲物の肉を裂くかのように、その一撃は渡瀬を大きく損傷させた。


修練の成果で魔力量は増えている──しかし、これは単なる魔力のぶつけ合いではない。


この一撃は、果たして渡瀬を立ち上がれないほどに追い込み、彼自身も冬森立秋と同じく満身創痍となっていた。サメはもう一度あのように集合することができず、情けない話だが、先ほどのように再び頂点を極めるには、冬森立秋の大量の魔力を奪うほか方法がない。しかし、あの攻撃の威力はあまりにも強大で、自分自身も体力を使い果たしてしまったのだ。観客たちは渡瀬がもはや打つ手なしだと思い込み、ざわざわとささやき始めていた。


渡瀬は口元の血を拭い、ここで負けるわけにはいかないと自分に言い聞かせる……。持ち歩いていた小瓶を確かめた瞬間、彼は苛立ちを覚えた。ガラス瓶の半分が溶け落ち、中の水も蒸発して熱を帯びていたのだ。周囲の空気も異様に乾燥している。ここは間欠泉地帯でもないため、水分を集めるのは難しい。彼は立秋を睨みつけた。立秋は何事もなかったかのように静かに立っており、すでに渡瀬の策略を見抜いているのは明らかだった。


大暑紅葉から少しでも教えを受けておいて良かった……いや、あの理解不能な馬鹿でも、能力だけは悪魔の中でも引く手あまただ。無視できる存在ではない。


渡瀬の戦い方は、周囲の水気を集め、それを魔力で無理矢理一つの攻撃へと変換するものだ。強力な水砲弾になることもあれば、鋭利な氷柱になることもある。まさに水の扱いを自在に操る男だった。しかし、ただ周囲の水分を集めるだけではない。渡瀬は普段から自分の攻撃を強化するために液体を携帯する癖がある。緑茶、白湯、さらには炭酸飲料まで使えるのだ。だが今日は、用意していた水がすべて冬森立秋によって蒸発させられてしまっていた。短時間で強力な攻撃を再び練り上げることはできない。


蒸発……そうなると、立秋はついに火属性を扱えるようになったということか?


火属性は悪魔の中でも稀少で、万物を蒸発させるほどの強烈な火力を扱える者となればさらに少ない。大暑紅葉でさえ、温度を上げて燃焼させるのが限界だ。そもそも火属性の力は、この世界の最高位の存在により意図的に抑制されており、本来は“天上の高位者”だけが使える力だと言われている……。


渡瀬は魔力を代償にさらに遠方の水気を強引にかき集め始めた。長刀を取り出し、祈りのように振りかざす。立秋も彼が何をしようとしているのか興味津々だった。


集められた水気のサメは、長刀の舞いとともに再び四散し、瞬く間に姿を変えた。もともとは見慣れた姿のサメだったが、その巨体は膨れ上がり、目つきはさらに邪悪に、牙は増え鋭く研ぎ澄まされていた。まるで毒でも盛られたかのように狂気じみた動きを見せながら、不気味にのたうつ大サメがついに姿を現す。


そのサメは、びっしりと並んだ鋭利な牙だけでなく、吐き出す魚雷のような魔力弾を猛烈な勢いで立秋めがけてぶっ放してきた。立秋は最初の一発、二発を華麗にかわしたものの、三発目の魚雷に不意を突かれた。すでに傷だらけだった身体は、さらにボロボロに裂かれてしまった。


多様な変化……あれは色欲の設計を混ぜているからだろうか。


なぜそんなことをする必要があるのかは分からないが――と立秋は思った。


敗北が目前に迫る中、立秋は再び全身の魔力を銃に集中させ、次の一撃で勝負を決めようとする。しかし渡瀬の大サメはまさに“殲滅”そのもので、絶え間なく立秋へ攻撃を浴びせ、砂塵と煙を巻き上げた。


ようやく訪れた一瞬の隙を逃さず、立秋は魔力を銃に収束させ、先ほどと同じ必殺の一撃を再び放った。しかも威力は先ほどを上回り、まだ余力を残していたことを証明していた。渡瀬の巨大なホオジロザメは光の中で再び霧散し、渡瀬自身はその攻撃をまともに受けてしまう。これほどの一撃を食らっては、立夏月光ももう自分を軽く見ることはないだろう。


観客は再び舞い上がる砂煙を見つめ、今度こそ勝敗が決したと思った。立秋は勝利を確信しながらも、力尽きたようにゆっくりと地へ降りた。もう本当に飛べそうになかった。魔力も完全に底をつき、もう一度と言われれば今度こそ降参するしかない。しかし、場の空気は彼に“もう一度”を要求しているようだった。


観客のどよめきの中、渡瀬が再びゆっくりと立ち上がったのだ。頭を垂れ、半ばしゃがみ込み、両脚は今にも折れそうで、まるで折れた枯れ木が必死に立っているようだった。

手放して落ちた長刀は地面に転がり、彼自身も今にも息絶えそうな状態だ。それでもなお立ち上がってくる渡瀬を見て、立秋は思わず叫んだ。


「はぁ?! もういいだろう! 私たちもうボロボロなんだ、いい加減お互いを解放しよう!!」


しかし渡瀬は聞こえていないかのように、力の入らない四肢を震わせながら立秋へ歩み寄る。その途中、地面に落ちていた長刀を拾うことも忘れなかった。


立秋の我慢は限界に達し、撃ち抜こうと銃を構えた――その瞬間、遠方の火山が爆発した。誰かがガラス球を火口に投げ入れたのだ。「……なんだって?」


二人はそのまま支えを失い、糸が切れたように地へ崩れ落ちた。結果は引き分け。その後、二人は仲間に支えられながら退場し、意識を取り戻すまでには長い時間を要した。


「結局、あの時の衣装を返されたってわけか……正直かなりビビったよ。」六日は衣装袋をまとめながら呟いた。満は早朝にはすでにどこかへ行ってしまっていた。


ウェイウェイは言った。「吾輩は、こういう場なら無理に着んでもよいと思うがの。」


その時、小さなタンポポの綿毛が、六日の袖にひらりと留まり、なかなか取れなかった。




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