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月光 vs マリア vs 満

観客席は今日も満員だった。


昨日、悪魔たちが見せた壮絶な戦いぶりが話題となり、誰もが次の試合を心待ちにしている。五色のリボンと風船が期待と緊張と興奮を乗せて、ゆっくりと空へ舞い上がった。各ギルドが次々と入場し、本日の第一戦を待ち構えていた。


大会司会のダニエルが高らかに宣言する。「本日の第一試合のテーマは――『忘れられぬ怒り(わすれられぬいかり)』です!」


トラが続けて説明した。「全員に‘火種ひだね‘が一つずつ配られます。その火種を、競技場の中心にある火山口へ投げ入れることが目的です。ただし、火山口に火種を投げ入れられるのは最初の一組のみ。最初に成功したチームがその火山を制覇したことになります。火種は持ち主の感情を感知し、その炎が勢いよく燃え上がるか、あるいは消えてしまうかで得点が変わります。ですから、火種を大切に扱ってくださいね。」


ダニエルがさらに補足する。「また、昨日と同じくこのフィールドには多数の罠が仕掛けられています。そしてこの空間自体が、参加者の感情や意志に反応して変化します。十分に注意してください。]


「最後の一文だけど、はっきりは書いてないけど、火の種はどんどん膨らんで、突然爆発するんだ。もし火口で爆発しなかったら、失格になる。」


ギルドのメンバーたちは順に火種を受け取り、次々とフィールドへ入っていった。


月光は、手の中のガラス球に封じられた火種を見つめた。


その火は白く、銀色を帯び、静かに揺れている。――それはまるで、自分のぼんやりとした思考そのもののようだった。


他の者たちの火種もそれぞれ違った色を放っていた。星児は海のようなあお色、海棠は鮮やかな紅紫こうし、雨水は陰鬱な灰青はいせい


月光は火種をそっとしまい込み、戦場へと足を踏み入れた。


そのとき、マリアの視界に一枚の紙切れが舞い込んできた――。


今回は昨日と異なり、四人は別々の地点からスタートだった。一面の赤岩、草一本生えぬ荒野。月光は岩山を越え、進むほどに熱気を強く感じた。


――火山口はきっと、この先にある。


月光は歩みを速め。「今度こそ、チームの順位を上げてやる……」


地形は険しく、障害物も多い。ついに月光は翼を広げ、空へと舞い上がった。高く飛べば視界が広がる。だが、他の者たちも同じことを考えているようだ。月光は負けじと速度を上げ、空を切り裂く。


――そして、ついに火山口を見つけた。


勝利を確信したその瞬間、下方から突然の一撃。


「うっ!」鋭い痛みが身体を貫き、月光は悲鳴を上げながら墜落した。


地面に叩きつけられ、顔を上げると、そこにはマリアが立っていた。その眼差しには怒りと憎悪が宿っている。「貴様に――十五夜の月は、もう見せないわ。」


月光は武器を構え、戦う覚悟を決める。だが、武器を握った瞬間、手が強烈に痺れ、動かなくなった。

断罪が地面に落ちる。拾おうとしても、指一本動かない。その瞬間、月光は悟った。


――これが、マリアの能力だ。


「……姉妹は同じ能力か。」月光は小さくつぶやいた。血のつながりがあるから、能力まで同じなのか?

だが、自分の体や四肢は縮んでもいない。ただ、動く力だけを奪われていた。


そう考える間もなく、マリアが猛然と突進してきた。まるで獣を調教するかのように、鞭を何度も振り下ろす。もう少しで月光の火の種を落とすところだった。月光は、ポケットの火の種がじわじわ膨らんでいるのをかすかに感じた。


鋭い痛みが絶え間なく襲い、月光の体には赤い痕が幾筋も走った。


――どうする?月光は必死に頭を回転させ、突破口を探した。そして、命を懸けた一か八かの考えが頭の中で膨れ上がっていく。


「血のつながり……か。」何かが、脳の奥で動き出した。血とともに魔力が全身を巡り、やがてすべてが脳へと集中していく。


月光は剣を天へ突き上げた。すると突風が吹き荒れ、雨粒が次第に密になり、灰色の雲が渦を巻き始める。


「風と雨を……呼び寄せた?」マリアは驚き、同時に警戒した。だが月光も余裕ではない。頭皮が痺れ、四肢が焼けるように痛い。暴走する魔力が体を爆撃し、骨が軋む感覚まで伝わってくる。


風はさらに強まり、雷鳴が轟いた。


天災のような光景に、観客たちの視線が一斉に集まる。特に六月は、その方向を凝視していた。


月光は好機を逃さず、天から降り注ぐ数本の巨大な雷光を放った。マリアの目前の地面が黒く焦げ、煙が立ちのぼる。その煙の向こうに立つ月光の姿は、まるで神の怒りを体現したかのようだった。


さらに雷が続き、マリアは後退を余儀なくされる。


――いまの月光を怒らせてはいけない。


そう本能的に悟りながらも、マリアは息をのんだ。


だが、月光の運はやはり味方してくれない。何発かの雷のあと、彼は視界が揺れ、膝が崩れ落ちそうになる。火種は怒りに呼応して激しく燃え上がるが、それを火口へ投げ入れられなければ意味がない。


そのとき――


「ったく、途中から横取りするなんて趣味が悪いね。」空から降りてきたのは満だった。彼女は膨大な魔力で一瞬にして雲を吹き飛ばす。


いつもの優雅さは消え、どこか荒っぽく、だが痛快な動き。


「そのじいさんの真似事をするには、まだ百年早いんじゃない?」そう言って、満は軽く指を弾き、ふわりとタンポポの綿毛を吹き散らした。


その仕草は、あまりに傲慢で、あまりに余裕だった。



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