黒漆通り
夜里香通りに入るためには、まず黒漆通りを通らなければならない。夜里香通りは十数年前、大人たちの安息の地として誕生したばかりの街だ。そこは快楽を生み出す楽園であり、人々はバラ色の空気に包まれ、桃色の淫靡で心地よい夢の中に浸っている。バラ色の空気、けばけばしいネオンサイン、そして様々な人々。彼らは一夜限りの美夢を成し遂げる。控えめな夜里香は、その頃、甘く淫靡な香りを放ち、迷い込んだ者を次々と引きつけていた。誰もが、控えめで静かな夜里香が、このような甘い香りを帯びているとは想像していなかっただろう。未成年者の立ち入りは禁止されているため、未成年者が入りたい場合は、何らかの手段を講じなければならない。六日が心配しているのもそのためだ。夜里香通りをしばらく歩くと、黒漆通りに入る。黒漆通りは、その名の通り、カラスの羽の色のように漆黒で、星のない夜のように怪奇だ。そこには淫靡な香水の匂いが漂っているが、夜里香通りよりも汚く、夜里香通りよりも濃厚だ。それは、安価な香水や密輸された媚薬が、あちこちで売られているからだ。そこには、そのような強烈で誇張された匂いだけでなく、硝煙の匂い、火薬の匂い、そして血の匂いなども漂っている。堕落した人々はそこで争い、眠り、抱き合う。彼らはそこで汗、火薬、そして血を振りまき、すべてを覆い隠すその通りの中で、生きている証を残そうとする。彼らはそこで、取るに足らない紙くず、ゴミ、バナナの皮、そして不吉な注射器へと変わっていく。
黒漆通りは夜里香通りよりも歴史が古く、かつては支配的な存在だった。しかし、後から現れた夜里香通りにその地位を脅かされ、抑え込まれている。黒漆通りはこれに強い不満を抱いているが、夜里香通りの勢力には敵わない。夜里香通りは政府の黙認のもとで運営される歓楽街であり、黒漆通りの天敵のような存在だ。夜里香通りに住む者たちは、黒漆通りに関わる様々な問題を処理し、手段を選ばないことも厭わないため、黒漆通りは容易に手を出せない状況にある。
六日は、未成年者の立ち入り禁止と書かれた夜里香通りの看板を、憂鬱そうな顔で眺めていた。一方、立秋は門番と巧みに交渉し、大金をちらつかせている。とうとう門が開き、彼らは夜里香通りへと足を踏み入れた。六日は、まるで体が縮んだような気がした。
夜里香通りは、ピンク色に染まりきっていた。それは淫靡なピンク、解放のピンク、そして愛のピンク。六日は、その眩暈を覚えるような色彩に飲み込まれそうになった。記憶を失っている月光は、この光景に何の動揺も見せず、まるでこの場所の常連のように振る舞っていた。それは、不合格の悪魔と満点の悪魔の差を如実に表していた。大暑と立秋は、冷めた目で周囲を見渡し、この光景に何の興味も示さない。
通りには、下品な言葉が飛び交い、人々は互いに触れ合い、欲望のままに行動していた。まるで親密な恋人同士のように。彼らはピンク色の海に身を任せ、その快楽に溺れていた。六日は、この光景に激しい不快感を覚えた。ここは、自分が来るべき場所ではない。そして、決して来たいとも思わない場所だった。
彼らはようやく黒漆通りへとたどり着いた。普段は番人がいるはずの門には誰もいなかった。まるで彼らを招き入れるかのように。空には雷が轟き、雨が降り始めた。立秋は車を遠く離れた場所に停め、指を鳴らすと、高級車が闇に溶け込むように姿を消した。貪欲な悪魔らしい、巧妙な変装だ。
黒漆通りは、街灯の光もまばらで、薄暗い。蛾や虫が光に向かって飛び回り、腐敗した食べ物の匂いが鼻を突く。まるで堕落した人間の集まる場所のようだった。薄暗い光の中で、死んだように動かぬ人影がいくつか見えた。光が当たると動けないのか、それとも暗闇になるとゾンビのように襲い掛かってくるのか。道にはゴミが散乱し、まるでゴミ捨て場のような光景だった。黒漆色の建物は、巨大な蜘蛛が巣を張っているように不気味だった。時々、錆びついた金属片のようなものを手にした人々が通りを走り抜けていく。彼らは注意深くその場を離れ、危険な人物に近づかないようにしていた。
目的地の13号館は、漆黒の闇に包まれていて、不気味な印象を与えた。立秋が先頭に立ち、大暑と月光が続き、六日が最後尾を歩く。建物の中は、外と同じように暗く、まるでホラー映画のトンネルのような雰囲気だった。
突然、足音が止まり、「ガチャ」という音が響いた。彼らはそれぞれ別の部屋に押し込められた。すると、部屋は明るくなり、観客たちが大歓声を上げていた。彼らの歓声は、まるで他人の苦しみを楽しんでいるようだった。スポットライトが月光を照らし、彼はまるでサーカスのライオンのようにリングの中に立たされていた。月光は信じられないという表情で周囲を見渡した。そして、拡声器から男の声が響き渡った。「皆さん、ご清聴ありがとうございます!盛夏の炎天下、魔斗会を開催いたします!」
月光は怒って叫んだ。「これは一体どういうことですが?!」
大暑が冷静さを装いながら答えた。「落ち着け、あいぼ。説明しよう。」羽織を羽織り、団扇を持ち、ポップコーンとジュース、そしてサイリウムまで持った大暑の姿は、冷静とは程遠いように見えた。「毎年夏になると開催される魔斗会だ。様々な悪魔が集まって、賭け事をする。ルシファー会の主催で、場所もルールも毎回変わる。ここでは、力と勝利が全てだ。勝つためにどんな手段を使っても構わない。全ての戦士たちが、ここで最高の栄光を手にすることができるんだ。」
月光は呆気に取られながら呟いた。「はあ……?」観客席を探し、六日の姿を探した。




