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悪魔失格

「はい、次はそっちを見てください、こっちを見てください!」カメラマンが熱心に指示を出した。


豪華な衣装をまとった月光は、カメラマンの指示に従い、方向を変えた。フラッシュと反射板の光が次々と閃き、月光の華麗な姿を死角なく照らし出す。彼はまるで、常に舞台の中央に立っているかのようだった。その美しさは、まるで彫刻のように完璧で、どこから見ても美しい。「よし、今日の仕事はこれで終了しました。」カメラマンは成果を隣にいる二人のマネージャーに手渡した。


「すごいな、どんな角度から撮っても死角がないな。」カメラマンは感嘆の声を上げた。「まるで生きたダビデ像みたいだ。まさかこんなモデルを見つけるなんて思わなかったよ。」


二人のマネージャーは心配そうに笑いながら答えた。「はは、ほんとに信じられないよですね……」


彼らは月光が控え室で着替えたりメイクをしているのを見て、改めて彼の天賦の才を感じた。しかし、この人物は無資格者で、記憶を失った病人であるという事実を思い出すたびに、彼らは不安でいっぱいだった。いつその秘密が暴露されるのか、考えるだけで恐ろしかった。


「どうぞ。」一人の男が水を差し出した。その男は高峻だ。ほとんど自分の仕事を見つけていなかったが、収入のために仕方なく月光の専属アシスタントになっていた。彼の内心には不満が多かった。


「なんで普通の水なんですよ? コーラをくれ、すごく暑いんですけど。」月光は当然のように、相手をからかう機会を逃さなかった。高峻は我慢できずに叫んだ。「お前みたいな新人モデルは、もっと自分の体型を管理しでください! 糖分や油っこい食べ物は厳しく制限しなきゃダメです!」


「別に管理する必要ないですけど。」月光はあっさりと反論した。


「.....わざと言ってるんだろう!」高峻は歯を食いしばり、月光が水のボトルを開けるのを見て、心の中で微笑んだ。実はその水に大量の下剤を入れていたから、月光がどうなるか楽しみだった。「どうぞ、飲んで。」月光は高峻に水を無理やり飲ませ、反抗する暇を与えなかった。高峻は急いでトイレに駆け込んだ。「私を困らせようと? そんな簡単にはいかないのことですよ。」その時、一群の、月光ほど目を引かないが一見華やかな人物たちがやって来た。彼らのマネージャーやアシスタントが、彼らを食事や飲み物で優遇しており、他のスタッフはその到着を見て、自動的に脇に避けた。先頭の男は大声で何かを叫びながら、ここでのすべてに不満を漏らしていた。マネージャーがいくら頑張っても、設備がどれほど良くても、彼は納得しない様子だった。ついには、マネージャーを力強く押しのけて、彼は地面に座り込んでしまった。月光はその前に立ち、進行を阻んだ。


「すみません、通してもらえますか?」金髪の男が不耐感を漂わせて尋ねた。月光は礼儀正しくもなく、ただ冷たく言った。「通すべきはあなたたちの方ですよ。」


二人のマネージャーは事態が悪化するのを防ごうと慌てて声をかけた。「立夏さん、彼らはGalaxyの契約モデルです。もし彼らとトラブルを起こしたら、大変なことになります……」


「それがどうした。」立夏は冷たく言った。


「立夏さん!」


「礼儀が足りないんじゃないの? あなた新人でしょう?」


「新人として、前の人を引きずり下ろすのが一番面白いんだ。」


「立夏さん!」


「まさに堂々とした挑発だな。」相手も明らかに不満げだった。月光はさらに挑発しようと考えたが、横で二人のマネージャーが必死にお願いしているのを見て、月光は一瞬黙った。最終的に、彼は言った。「確かに、ちょっと行き過ぎたかもしれませんね。もし気に障ったなら、この水をお飲みください。。」


「え?」先輩は疑念を露わにした。


「私、まだ飲んだことがないのです。どうぞ。」月光は両手で水を差し出し、先輩はそれを受け取った。「ゴクゴク」と何口か飲んだ。


しばらくすると、突然腹部に激しい痛みが走り、先輩は顔を歪めて腹を押さえながら叫んだ。「お腹が痛い! 何を飲ませたんだ!? 」


マネージャーは慌てて先輩を支え、トイレに向かおうとした。月光はまるで他人事のように言った。「分かりませんね。私のアシスタントがくれたものですから、まさか問題があるとは思いませんでした。」


「お前……」先輩は怒鳴ろうとしたが、腹痛が耐えられなくなり、結局言葉を飲み込んで退散するしかなかった。彼の部下も慌てて後を追い、出る前に月光に憤慨した目を向けた。月光は嬉しそうにその背中を見送った。


二人のマネージャーはただ目を丸くしてその光景を見ていた。月光は彼らがそろそろ爆発しそうだと感じたが、予想外に花井さんが口を開いた。


「立夏さん、素晴らしいですね! 本当に素晴らしい!」


「え?」


「焼肉を食べに行きましょう! お祝いしなくちゃね!」永野さんも楽しそうに提案した。


月光は少し驚きながらも、心の中でくすっと笑った。彼らは彼の行動を理解してくれているようだ。どんなに一見不穏な状況でも、月光はその裏にある真意を見逃さなかった。今のところ、問題は解決したようだし、次は自分の楽しみの時間だ。


「その後、給料を上げてあげます!」花井さんがまた言った。


「え??」


「ふぅ……危うく社会的に死ぬところだった……一体この和気あいあいとした雰囲気はどういうことなんだ?!」高は驚きながら叫んだ。


**夜。**


月光は得意げにソファに座ってテレビを見ながら言った。「私は二人を地獄に引きずり込むことに成功した、嬉しい。」


「ひどい……」六日は嫌悪感を示しながら言った。雑誌に載っている見覚えのある顔を見つめ、月光がどこまで行ってしまったのか想像もつかなかった。


「他人の魂を地獄に引き寄せることは、悪魔の必要な任務であり、本能でもある。」偉偉が言った。


「でも、そういうことって他の人に対して失礼じゃないですか……?」


「悪魔が他人に対して尊重とか言ってるわけがないだろ。すべては自分の欲望に従って生きているのが悪魔だ。むしろ汝、全然悪魔らしくない。」偉偉はさらに指摘した。「汝、厳密に言えば、悪魔として失格だ!」


「え——?!」突然非難された六日は不満げに叫んだ。「私、悪魔失格なんて……」もともと、彼女はちゃんとした悪魔になるつもりなんてなかった。


「とにかく、あなたにはまだ学ばなければならないことが多い。」月光はまるで自分には関係ないかのように言った。「迷っているのですか? 近くに、あなたにぴったりな人物がいるでしおう?」


「私が行くわけないでしょ……」海棠と星儿の姿が六日の頭に浮かんだ。その瞬間、怒りが湧き上がり、顔が真っ赤になった。「あんな二人には絶対手を出さない!」と言って、彼女は怒りを感じながら部屋に駆け込んだ。滨滨はすぐに後を追い、心を込めて彼女に寄り添った。たとえ無邪気な猫でも、主人の気持ちには敏感だ。


「怒った……」


「汝は軽率な反応をしたな。」偉偉が言った。


「私の言ったことにはまったく問題ないでしおう? それに、もう悪魔になったんだから、仲間が増えたほうが楽しいでしおう。まあ、後で謝ればいい。」と言って、偉偉はリモコンを乱暴に押した。偉偉はその幻影が見えないことが不安でたまらなかった。この男は一体何を考えているのだろう?


滨滨は六日の後ろをついていき、六日の胸元にどんどん寄っていった。六日は自然にその猫を撫でながら、さっきの会話を思い出していた。月光の言葉に腹が立っていたが、そもそも月光が言うことはすべて受け入れられるわけではない。月光のことは全く分からないし、彼女自身も月光に自分の秘密を話すつもりはなかった。二人は結局、お互いを利用しているだけで、関係が少し良くなったに過ぎないのだと彼女は感じた。ふと思い出すのは、自分の目的、ただ父親を探したかっただけだと、ぼそりとつぶやいた。「私は最初から、父親を見つけたかっただけなのに……」


**翌日。**


「これはあの人たちの供物です、謝罪の意味を込めて。」翌日、学校が終わると、六日は月光から白く包まれた大きな袋を渡された。六日はその中身を見て、やはり心の中で不快感を覚えた。「供物だなんて……みんなあなたのことをよくしてくれてるじゃない。プライベートでもそんな態度を取らなくてもいいのに。」


月光は気にした様子もなく答えた。「私はもともと人間が好きじゃないです。単に利用しているだけだですよ。彼らもこの関係をよく分かっているし、私に利用されることを喜んでいるです。人間は私のような外来者に心を完全には開かないでしょう?結局、悪魔と人間が友好的な関係を結ぶことはあり得ないんですよ。」月光は意味深に微笑み、陰影が彼を包み込むと、その表情が一層恐ろしさを増した。


「それでも……」


「この点については嘘をつけない、わるい。」六日は腕をしっかりと握りしめ、顔に深い哀愁を浮かべながら言った。「明日もモデルの仕事があるから、たくさんの報酬を持って帰るのを楽しみにしててね。」そう言うと、彼はまた飛び出して行き、何をしているのか分からなかった。


「関係が良くなったと思ったら、実際は悪化してるんだな。」偉偉が呟いた。六日は仕方なく食べ物を片付け、月光が自分で片付けるのを待った。


六日は買い物に行った。最近、家に来る人(?)が増えて、外に出て買い物に行く頻度も自然と増えた。


季節が変わったため、価格がかなり下がったジャガイモを見て、六日ムイカはつい月光ゲツコウのことを思い出した。月光は今やカレーの熱狂的なファンで、夕食がカレーだと発表されると、まるで子供のように純粋な笑顔を見せる。


しかし、問題がひとつある。月光が時間通りに帰宅してご飯を食べるかどうかは分からないということだ。


月光の現在の仕事は時間が不規則で、食事に誘われることもある。例えば昨日、彼の顔は一段と輝いていて、袋いっぱいの和牛を持ち帰ってきた。明らかに良い食事をした後だった。しかし、鍋の中には月光の分のご飯が残っていて、その時の月光は「もう食べられません」と言っていた。結局、残ったご飯は捨てることになった。六日ムイカはため息をつきながら思う、もし今日も昨日のようになったら…。


その時、突然、強い殺意とともに何かが六日に向かって飛んできた。機敏な六日は第一の攻撃をかわしたが、次の攻撃を避けられるかどうかは分からなかった。狐の魔力で体を変え、素早く敏捷な狐の姿となった六日は、すばやく動いて攻撃を避けていた。しかし、どうやら敵の方が一枚上手で、六日が敗北しそうになったその時、もう一つの影が急に飛び込んできて、六日を抱きかかえ、危機から救い出してくれた。


「月光…」六日は少し照れくさそうに言った。


「大丈夫です、私にお任せください。」まるで何もなかったかのように、月光は冷静に答えた。そして六日を下ろすと、風のような速さで敵に向かって突進していった。結果的に、月光の方が優れていて、二人は無事に安全を確保した。


正直に言うと、六日ムイカは少し恥ずかしく思った。月光に対して不満を持っていたのは彼女であり、助けられていたのも彼女だった。彼女が心の中で決意を固めていると、月光が言った。


「私が言い過ぎました。すまない。」月光は申し訳なさそうに視線を外し、その姿はまるで雨に濡れた小犬のように可愛らしく見えた。六日はそんな月光を見て、何となく恥ずかしく感じた。月光は悪魔だが、それなら彼は悪魔のように周りの人々に接するのが当然だ。六日は言った。


「私がちょっと感情的になりすぎた、ごめん……それで、あんたのお仕事はどうなりましたか?」


「……私は今、近くで仕事をしていて、あなたに危険が迫っていることに気づいたんです…」月光は眉をひそめ、少し困惑した様子だった。


「それで?」六日は不安そうに尋ねた。


「それで、勝手にここに来ちゃいました…」


「勤務中に抜けたの?」


「…はい!早く戻らないと、クビになっちゃうかもしれません!」


「何やってるのよ!?」六日は叫んだ。


「くそ…」星儿は手で口から流れる血を拭きながら、足を引きずって歩いていた。彼はぶつぶつ言った。

「本当に理不尽だな…」さっき、彼は対戦相手の高校の不良に襲われたが、勝ったもののかなりのダメージを受けていた。小道からゆっくりと歩いて出てきたとき、彼は月光と楽しそうに話している六日を見かけた。二人は暗がりにいる星儿に気づくことなく、直進して通り過ぎていった。


その和やかな様子を見て、星儿の中に一瞬、胸が締めつけられるような痛みが走った。


実は、その痛みを感じるのは初めてではない。


しかし、彼にはもっと達成したい目標があった。


星儿は背を向け、別の方向へと歩き去った

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