――後の勇者である。 15
はっはっは。さて。これで死ぬかもしれない覚悟は決まった。
目標のオクドラゴラ(仮)までは目算でおよそ15歩。1歩、2歩、3歩とゆっくり進んで、4歩、5歩、6歩とスキップしてみた。
「あはは。何やってんですか。シキトー」
「おい。シキトー。マジメにやれ」
「へーい」……軽やかに歩を進めたら怒られてしまったので、7歩、8歩、9歩は、抜き足、差し足、忍び足でいってみた。
「……マジメにやれっていってんのが聞こえねえのか? こら。シキトー」
「うぃ」……冗談はこのくらいにして。そろそろ、きちんと気を引き締め直しますかと思いながら10歩目を踏んだ、その瞬間だった――。
――ボンッ! と聞こえた重ための爆発音。と同時に土煙が舞う。そして、
「え……!?」
俺のすぐ目の前、目線の高さに凶悪な表情の人面カブが浮かんでいた。
「――ピッギャァァァアアア!!!」
「おわぁッ!?」……びっくらこいた。
「はっはっは! だっせぇな。シキトー。腰抜かしてやがる」
「ちょっと。言い過ぎですよぉ。サダノーミ師匠。びっくらこいて尻もちついただけじゃないですか」と言いながら気が付いた。……あれ? 立ち上がれない……?
てか振り返りもできてねえ。俺は、サダノーミとロンウェンの二人に背中を向けたまましゃべっていた。
「……えーと、なんでしょうか、コレは。カラダが全く動かねえんですけど。『腰が抜ける』って『こう』じゃねえすよね?」
「動けねえ」っていうか「動かねえ」……なのにしゃべることは出来るってのがまた……すげえ違和感だな。
「シキトー。それは驚いて『腰を抜かした』んじゃなくて『麻痺』です」
「マヒ? なんで、あ」……もしかしなくても、さっきのオクドラゴラの叫び声か。
「そうです。オクドラゴラの叫びを間近で聞いてしまったからです」
「……サダノーミ師匠ぉ~……。こんなところまでこさせて、師匠が見たかったのは俺のこの情けない姿ってことですかぃ……」
「ふっはっはっは。まだまだ。本番はこれからだぞ。シキトー」
「はい……? これ以上の情けない姿をどうやって晒せと……」
「……来るぞ。ロンウェン。準備は良いか」
「うん。大丈夫」
サダノーミとロンウェンがのっしのっしと近付いてきて、俺に背を向ける。まるで俺のことを守るみたいな陣形だが……。
「あのー……」
「うるせえ。黙ってろ」
「すみません。ちょっとの間、集中させてください」
「……へい」
……んで。何が「来る」って? お二人さん。何の話をしてやがりますか……?




