――後の勇者である。 13
「はい。なんですか? シキトー」
「そろそろ……、植物園かな……?」
「え? いえ。まだまだ……えーと、5分の2といったところでしょうか」
「ゴブンノニ――!? ……もしかして、出発前に『カンタン』だとかって言ってた『途中まで』ってまだ過ぎてない……?」
「あ、それは大丈夫です。ちょうど此処、参の街がその『途中』ですね」
「てことは……」
「はい。ここからは街道を外れますから、ちょっと上級者向けになっちゃうかと」
「上級者向けになっちゃうのかあ……」
……俺はまだ超が付くような初心者で中級者にもなってないのになあ。
「参の街の『花火空港』から『空中神殿』に飛んで、『巨蛇の街』で『植物園』だ」
「……さらりと言ってくれますなあ。てか、サダノーミ。『花火空港』って……空で大爆発する未来しか見えないネーミングなんですけど……」
「ふん。本当に勘が良いな。……つまらん」
「なはははは……」……すみませんね、俺の危機察知能力は先輩に磨かれた説もあるんですが。
――この後の大冒険に関しては、正直、ほとんど記憶に残っていなかった。
長い長い螺旋階段を駆け上がりながら「一発でも喰らえば致命傷」どころか確実に「即死」であろう攻撃を避ける。避ける。避け続ける。
「すごいですね! 避けまくりじゃないですか。プレイヤースキル、高過ぎですよ。シキトーって実はゲーマーだったりするんですか?」
といったロンウェンからの称賛に応える余裕も無かった。
というか途中からは何を言われても右耳から左耳へと抜けていて、頭の方には何も入ってきていなかった。
白い背景のエリアを全速力で駆け抜ける。立ち止まらないことは当然、右に避ける場面でも右前へと避けるといった感じで一歩でも一秒でも早く突き進む。
「おい。シキトーもポーション……いらねえか」
「だね。シキトーは一撃でももらっちゃったら死ぬだろうから。ポーションで回復は無理かも。行けるところまでこのままサクサク進んじゃおう」
……リポップが早過ぎる。前衛ならぬ「前方」のロンウェンがモンスターを倒すと即座に、俺の左右か後ろに倒されたのと同じ種類のモンスターが湧いていた。
……レベル上げ用の狩り場か。適正レベルのパーティーならオイシイんだろうが。
俺は「前方」に合わせていた目の焦点を意識的にぼやかした。これによって視界の全てが同じ濃度で見える。識別能力は下がってしまうが擬似的に視野が広くなる――気がするのだ。う~ん、思い込みのチカラって案外、バカにならんよね。
視界の中、不意に現れる色や動きの感じられた影をことごとく避ける。決して立ち止まらず、振り返りもせず、走り続ける。
どれくらいの時間、そうしていたのだろう。その最中は延々と長くも感じられたが振り返ろうと思っても何も覚えてないもんだから一瞬だったような気もしてくる。
「……ついたな。見ろ、シキトー。ここが植物園だ」




