――後の勇者である。 12
戸惑いながらも龍文君ことロンウェンは、目的地の植物園に到着するまで、そこに何があるのかを少しも口にはしなかった。言おうと思えば言えるタイミングはどこにでもあったと思うんだけどね。律儀な弟クンだ。
「行くぞ。シキトー。ロンウェン。おい。さっさとその馬しまえ」
「うん。わかってるよ」
「悪いね、ロンウェン。合わせてもらっちゃって」
「いえいえいえ。シキトーは初見なんですもんね。だったら歩いて道を覚えたりとかモンスターに慣れたりした方が、馬で急ぐよりも良かったかもしれないですから」
「はは。ありがとう。ロンウェンは優しいなあ。……とても血が繋がってるとは」
「……遅い! いつまで立ち話してるつもりだ。先に行っちまうぞ、お前ら」
「あ、待ってくださいよ。サダノーミが先頭で大丈夫なんですか。ロンウェンにモンスターを蹴散らしてもらわないと。その為にロンウェンを呼び出したんでげしょ?」
「あはは。大丈夫ですよ、途中まではカンタンですから。気楽に行きましょう」
などと言われて出発したのだが――謎の目的地である「植物園」までの道程は遠く険しいものだった。
ゲームの開始場所であり、サダノーミのお店「ボーダー・リバー」が在る街、その名も「壱の街」にまずは戻って、そこから北に伸びる街道をまっすぐに進む。途中で「弐の街」を経由――というか素通りをして「参の街」まで街道を進む。ここまでで出てきたモンスターは、冒険者を見たらすぐに襲ってくるアクティブなツノウサギと座布団サイズのクワガタムシ――ヒュージビートル、サッカーボールに手足が生えたみたいな姿のコロポックに、保護色なのか体毛が緑色のソウゲンイノシシと多種多様であった。
同時に襲ってくる複数体のツノウサギには四苦八苦して、行く手を阻んだヒュージビートルはジャンプ一番で飛び越えた。意外と可愛らしかった見た目のコロポックは断腸の思いで蹴り飛ばして、一直線に突っ込んでくるソウゲンイノシシからは必死に逃げ回った。……こちとらまだ一度もレベルアップを経験していない完全初期値だ。初心者向けのツノウサギや驚かされただけでダメージは無かったセンドラゴラよりも明らかに強いであろう面々からの攻撃を一発でも喰らえば致命傷を負いかねない。
俺は神経を研ぎ澄ましたままの状態で二人の後について行っていた。だから、
「はぁ、はぁ……、ろ、ロンウェン……」
ゲームながらに疲れ果ててしまっていた。筋肉の疲労はなくとも気力が削られるに伴って体の方も疲弊する。実際には動いていなくたって、そりゃ息も切れるさね。




