――後の勇者である。 07
「もうすぐだ。黙って待ってろ」
「はぁーい……あ、返事しちゃった。黙ってなくちゃいけないのに。俺のバカ」
「…………」
「……いや、完全スルーはへこむっす。さすがに塩対応が過ぎるっす……」
「……おい、シキトー。来たぞ」
「はい……?」と、サダノーミが見ていた方向――街の在る方に目を向けてみると、
「……なんです? あれ」
一頭の馬が土煙を上げながら猛スピードでこちらに向かってきていた。そして――キキーッとばかりにその馬は俺たちのすぐ前で急停車……急停「馬」をした。
「もー、なんだよ。急に」
馬から降りた青年――のアバターがサダノーミに文句を垂れる。……タメ口だ。
青年はあっさりとした面立ちで長い黒髪を頭の後ろで一つに束ねていた。ボサ頭のワイルド系ではなくて、サラ艶ヘアのキレイ系だ。
……先程のサダノーミやいまの青年の発言、現れたタイミングから考えるに先輩が電話をした相手が青年で、青年は先輩の呼び出しに応えて急いでやってきたわけか。
でも「電話」ってことはリアルの知り合いってことだよな。ゲーム内のメッセージ機能を「電話」とは言わないだろうし、ゲーム内でメッセージの遣り取りをしたならさっきの先輩のログアウトは何だったんだということになる。
……青年がすでにゲーム内に居たならメッセージ機能で事足りるところをわざわざ電話したのだから、あの時点では青年はゲーム内には居なかったはずだ。その青年を先輩は電話一本で呼び付けた。この二人の関係性は……何だろう?
先輩には遠慮が無かった。青年は無茶振りに応えながらも文句を口にしていた。
先輩とこの青年の距離感は……とても近しいように感じられる。
……この青年は一体、何者なのだろうか。
「遅い! 10秒で来いって言っただろ」
「10秒は無理だって。これでも超特急で来たんだから」
軽ブチ切れのサダノーミを青年は慣れた様子でいなしていた。……只者じゃねえ。
俺は、
「ええと。はじめまして。シキトーといいます」
名刺を差し出すような心持ちで青年にお声掛けさせていただいた。
「あ。はい。僕はロンウェンです。でも『はじめまして』じゃないんですよ」
「え? これは失礼をば」……てことはこの青年もサダノーミの店の従業員か。俺はまだサダノーミとその店の面々くらいとしか、このグルメファンタジアでは出会っていない。「会ったことがある」と言われたら必然的にサダノーミの店――ボーダー・リバーの店員さんだということになる、が……店員が店長に向かってタメ口を?
「あの……シキトーは『敷』『島』でシキトーなんですか?」




