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――後の勇者である。 03

 芸が細かいな、グルメファンタジア・オンライン。それもリアリティーの追求か。


「味の方は? こっちの人参の方が甘いとか、こっちのは臭みがちょっと強いとか」


「いや。それはねえな。味は全部、同じだ。……俺の舌にとっちゃあな。ウチの店の連中も同じことを言うと思うぞ。他のプレイヤーたちもそう思ってるはずだ。それが定説ってやつだな。真実は知らねえが」


 ふむふむふむ……なんだか「リアル」と「ゲーム」を行ったり来たりしてるな。


 これは狙ってそう作っているのか。それとも制作の脇が甘いのか。


「グルメファンタジア・オンラインはこういうゲーム」っていう確固としたカタチがいまいち見えてこない。まだまだ掴みきれない。


 ゲームだと侮ると足をすくわれてしまいそうで、リアリティーを信頼し過ぎていると不意に裏切られてしまいそうだ。……怖いなあ、神ゲー。


 そんなゲームの中の世界で、サダノーミこと山崎先輩は料理屋を開いてる。料理長として腕をふるってる。作った料理を客に提供している。


 単にゲームとして楽しんでるだけなのか、それとも先輩はリアルでも料理屋を開くことが夢だったりとかしたんだろうか? ……もしかしたら過去形じゃなくて、今もそう思ってたりするんだろうか。


 先輩とはずっと、メシを一緒に食ってはその感想を言い合ってばかりで、将来だの夢だのといった話をしたことはなかった気がする。


 一緒にメシを食うだけの関係――……だからこそ楽しかったわけだけどねん。


「――食ってみるか? シキトー」


「え……?」


「その人参だ」


「あ、ああ。えっと」


「そのまま生でかじるか? 肉じゃねえからイケるぞ?」


「……ワイルド過ぎません? ウサギじゃねえんすから」


「切るだけ切って野菜スティックにするか。じゃなきゃゴマ油と塩コショウで炒めてシリシリとか、すりゴマ・ショウガ・ニンニク・砂糖も入れてナムルにするとか」


 わお。レパートリーが豊富だなや。食材は人参オンリー縛りでとっさにそれだけのメニューが出てくるんだから、先輩の「料理上手」はモノホンなのかもしれない。


 ……あれ? でも。


「この人参、そんな味付けしちゃってもいいんですか?」


「あン?」


「生かせいぜい塩で食って人参の味を確かめたりしなくても?」


「確かめるも何も……どう見ても人参だろうが。人参は人参だろ」


 人参は人参――それはそうなんだけど。見た目で分かるのは五寸人参「系」だってことだけで、その内の何なのかまでは分からない。ナントカ五寸人参とか「五寸」が名前に入ってない品種もあったはずだ。……なんて偉そうに考えちゃったりしたけど俺もリアルで人参の食べ比べをしたことなんかないからさ、ここでこの人参を食べてみても「うむ。これはホニャララ人参だ!」とは言えないんだけど。


 言えないんだけど……先輩は俺にそれをやらせようとしてるんだと思ってた。

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