――後の勇者である。 02
「うるっせぇ……ッ!」
けれども。マンドラゴラとは違ってセンドラゴラの叫びはウルサイだけだ。事前にそれを知っていて、抜いた瞬間に覚悟を決めていれば堪えられる。
ひと鳴きした後のセンドラゴラは、
「…………」
黙りこくってピクリとも動かず、まるでただの根菜みたいなフリをしていたが、
「……誤魔化せると思うなよ。そんな凶悪なツラした人面大根があるか……?」
これでも立派なモンスターだ。
俺は、引き抜いたときのまま、センドラゴラの葉っぱの部分を強く握って、大きく振りかぶる。そして、
「――せいッ!」
思いっ切り、地面に叩きつけてやった――ポキンッ!
センドラゴラは真っ二つに割れて、断末魔の叫びを上げる間もなく息絶えた。白い光に包まれる。
その数秒後。センドラゴラだったものはキレイに消え去って、俺の手の中にはその代わりとして――オレンジ色の根菜が現れていた。
「――なんで人参ッ!? センドラゴラの見た目、完全に大根だったじゃんッ!?」
「ふっ、ははははは……ッ!」
サダノーミが巨大な腹を抱えて笑っていた。
御満悦な御様子だな。サダノーミは俺にコレを見せたかったのか? もしくは俺のこの反応を見たかったのか。
「てか、センドラゴラを倒しても『解体』コマンドは出なかったみたいですけど」
今回のセンドラゴラは倒したらすぐに白い光に包まれた。でもツノウサギのときは「解体」をポチッた直後だった。
「ああ。『解体』が出来るのは動物系のモンスターだけだ。植物系のセンドラゴラは倒すだけで自動的に食材に変換される。まあ、変換っつーか、ドロップっつーか」
「ふむ。ツノウサギのときはバラ肉だったりヒレ肉だったりしましたけど。植物系のセンドラゴラにはそういったランダム要素はないんですか?」
「センドラゴラからドロップするのは毎回、必ず、人参だな。大根だのゴボウだのが落ちたりはしねえ。少なくとも、したってのを俺は見たことも聞いたこともねえな」
「……品目は同じ『人参』でも、違う品種がドロップしたりは?」
「あ? ヒンモク? ヒンシュ? 何のことだ?」
「俺も詳しくはないですけど、この人参はスーパーなんかでよく見るスタンダードな五寸人参だと思うんですよね。この人参はオレンジ色してますけど、もっと濃い赤色ですとか、紫色ですとか、黄色の人参がドロップしたりはしないんですかね。あとは同じオレンジ色でも明らかに細長い人参だとか――ぁ痛ッ!? 何故にッ!? あ、人参の色なのに『オレンジ』色とか言ったからですか? ――痛たたたたッ!?」
「……ふん。センドラゴラが落とすのはその人参だけだな。赤とか紫とか黄色とか、細え人参は落とさねえ。俺は知らねえ。だが――」
お? 「だが」ときましたか。なんだろう。わくわく。
「同じ人参でも大きさとかカタチに多少の違いはあったかもしれねえ」
「へえ……マジですか」




