――後の勇者である。 01
「うんとこしょ、どっこいしょっ――ッと」
俺は今、広大な畑の端っこで大根らしき根菜を引き抜こうと頑張っていた。
「……まだまだカブは抜けません」
「あ? カブじゃねえぞ」
少し離れたところからサダノーミのツッコミが入る。
山崎先輩ではない。サダノーミだ。間違えるとまた殴られるぞ。気を付けろ。
――そう。ここは現実の世界ではなく、グルメファンタジア・オンラインの中だ。
「あれれ。知りません? 『おおきなかぶ』っていう童話だか童謡だか」
「それは知ってる。だがシキトーが抜こうとしてるのはカブじゃねえぞってんだ」
「あー……なんていいましたっけ? これの名前」
さっき教えてもらったばかりだ。忘れたわけではないのだけれど……聞き間違いの可能性もある。
「聞いてなかったのか? さっきも言っただろうが。――センドラゴラだ」
「……マンドラゴラじゃなくて?」
「センドラゴラだ」
……俺の聞き間違いじゃなかったのか。「マン」ドラゴラじゃなくて「セン」ドラゴラね。うん。……なんちゅうネーミングだ。グルメファンタジア・オンラインともあろう神ゲーが。ダジャレかよ。
「ヒャクドラゴラとかオクドラゴラとかもいるんですかね」
「お、勘が良いな。ヒャクドラゴラはいねえがオクドラゴラはいるぞ」
居るんですかぃッ!
「そいつを抜いたら、オクドラゴラの生えてる畑にも行ってみるか? お前じゃまだまだオクドラゴラは抜けねえと思うけどな。ふっはっは」
いや、別に。オクドラゴラを抜きたいとは1ミリも思ってねえんすけどね。だからホントに「お前じゃまだまだ」とか言われても……悔しくなんてないんだからねッ!
「とりあえず……このセンドラゴラを抜いちゃいますよっ――ッと」
力を込めて、この大根にしか見えない「センドラゴラ」を引っ張る。引っ張る。
「ああ。忘れてた。おい、シキトー。センドラゴラはネジみたいに回しながら抜くと抜きやすいぞ」
「……早く言ってくださいよ。力任せに引っ張っちゃってたじゃないですか」
「ふん。俺だったらそんな小細工しなくても引っ張るだけで抜けるんだがな」
「小細工じゃなくてコツでしょうよ。もう。そんなに言うんならサダノーミが抜いてくださいよ。そうやって遠くから見てるだけじゃなくて」
「あァッ!? それじゃあ意味がねえだろうが」
え……意味とかあったのか? これに。シゴキとかカワイガリじゃなくて?
なんて考えていたら、
「あ――抜けました」
そして「センドラゴラ」が抜けたということは――。
「――ギャァァァアアア!!!」




