ファーストバイト 31
「あ? 分かんねえのか? 今のあたしは山崎市子だ。サダノーミじゃねえ。グルメファンタジアとリアルを混同すんなってんだよ」
「ああ。そういうことでしたか……重ね重ね、スンマセン。さっき見た調理の手際の良さと出来上がった料理があまりに旨かったもんで、てっきりグルメファンタジアの中に居るのかと……これはリアルじゃねえのかと思ってしまったもんで」
これが夢なのか現実なのかゲームの中なのか、また目の前に居る人物がサダノーミなのか山崎先輩なのか、はたまた全くの別人なのか、頭では分かっているはずなのにココロの方が追っ付いていなかった俺は、全てに対して目を伏せるみたいなキモチでうやうやしく頭を下げていた。なんとなく……そんな気分にさせられていた。
「ふんっ。こんぐらいのこたぁ、リアルだろうがグルメファンタジアだろうが簡単にできんだよ。おら。いつまで土下座してんだ。分かったら頭を上げろ」
……見た感じ「土下座」にはなっちゃってますけども。ウチにはお椅子サマなんて上等なもんはねえもんで、床に座ってチャーハンを頂いていたわけで、その体勢から普通に頭を下げただけでして「土下座ッ!」ってつもりでもなかったんですけどね。
「へえ。先輩は絶対にメシマズだと思ってたもんで。想定外すぎる出来事に混乱してしまって――ぐぐぐ、ぐぬぬ、あの……頭を踏まれている状態ですと、その……頭を上げられないんですが……」
「……あ? あたしは『分かったら頭を上げろ』って言ったんだよ。敷島ぁ。お前、まだ分かってねえだろ? ん? なのに何で頭を上げようとしてんだ? あ?」
「す……スンマセン。あの……頭にかかる重みが徐々に増してるような……ぐぐぐ」
久しぶりに会えた山崎先輩は「サダノーミ」だったり「料理上手」だったりと見知らぬ一面を見せてくれたりもしたが――結局のところ、先輩は先輩でしかなかった。
「あ? なに笑ってんだ。こら。敷島」
「笑ってねえす。スンマセン」
「サダノーミ」だろうが「料理上手」だろうが何も臆することなんてなかったのか。
その生態をより詳しく知ることができると思えば、現状に抵抗するのではなくて、むしろ歓迎するべきなのかもしれない。
グルメファンタジア・オンライン――か。
長い付き合いになるかもしれない。いや、ならないかもしれないけど。




