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「こ、こんなこともあろうかと……っすか。はじめて見たわ。感動もんすね」


 ……もし、俺の家の冷蔵庫に玉子が入っていたら。先輩はその玉子をポケットから出すことなく帰っていたのだろうか……。……切ねえぜ。


「うるせえな。いいから黙って見とけ」


「うぃーす。さーせん」


 塩っからい肉と梅干しのおにぎりと玉子で何を作るんですか? てか何か作れるんですか? 先輩が? とツッコミ――じゃない、聞きたいところだったが「黙って」と言われて「うぃーす」と返事もしちゃったし、ここは、じぃーっと見ておくか。


 じぃー……――実際、先輩の手際は驚くほどに良かった。


 肉は取り出したフライパンをコンロで熱し直して、割った玉子を流し入れる。軽く火を通したら、先に周囲の包装を剥がしておいたおにぎりの白飯部分を追加する。


 ……はて。俺はいつの間にグルメファンタジア・オンラインにログインしたんだ。そう。山崎先輩が料理上手とか、これがリアルであるはずがないじゃないか。ああ、これは夢か。サダノーミに文字通りぶっ飛ばされて――でも大丈夫だった、フツウに次の日を迎えた――という夢を見てるってことだな。さすがはグルメファンタジア・オンラインだ。サダノーミにぶっ飛ばれて「気絶」してる俺が「夢」まで見るとか、マジで神並の再現度じゃねえか。


「おい。敷島。ぼーっとしてんじゃねえ」


「え……あ、スミマセン。ええと。なんでしたっけ?」


「なんでしたっけ、じゃねえ。チャーハンだ。ほら。食え。熱々なうちに」


「おお……チャーハン。失敗肉とおにぎりと玉子で……旨そうなチャーハンが」


「うるせえな。さっさと食え」


「あ、はい。いただきます」


 もぐ……これは。もぐもぐもぐ……旨いぞ?


 それだけでは食えたもんじゃあなかった失敗肉の塩っからさが、おにぎりの白飯で薄まってちょうどいい濃さの味になってる。肉の焦げ焦げ具合もチャーハンの具材としてなら良いアクセントだ。またふわふわの玉子が肉とは対象的に優しくて、少しも食べ飽きない。


「……梅干しの酸味と上から散らしたちぎり海苔がまた良いですね」


 バラ肉の脂っぽさがやわらいで、全体的に和風な仕上がりになっていた。


 食べ進める手が止まらない――。


「――ごちそうさまでした」


「ふん。これで分かったか」


「さすがはサダノーミですね――痛ッ!?」……って、ホントに痛いぞ? あれ? てことは……これって「夢」でもグルメファンタジア・オンラインの中でもなくて、現実なのか?


「てか、いまのはなんで殴られたんですかね……?」

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