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ファーストバイト 28

「……そこまでカツカツの薄給でもないんだけどね。日頃から節約しとけば、先輩とまたメシ食いに行ける日も近くなるかなぁ~とさ」


 山崎先輩のことを思い浮かべたちょうどそのとき、俺は精肉コーナーの前を歩いていた。生の豚肉が目に入る。豚バラ肉のスライスだ。


「……この量なら3人前分かな。俺が一人で食うなら3食分か」


 パンかおにぎりの他におかずとして惣菜――コロッケでも買おうかと思っていたのだが、お値段の割合で考えれば豚バラ肉(3食分)の方がお買い得だ。


「昨夜のツノウサギじゃないけど、焼いて塩振るだけでも立派なおかずになるか?」


 と簡単に考えてその豚バラ肉のスライスを購入してしまったが……失敗だった。


「うわ、なんだ。肉がフライパンにくっついて……」


「ふん。フライパンを十分に温めてなかったからだな」とのちに先輩からありがたいアドバイスをたまわることになる。


「くっ、この……よし。うん。こっちのも、もうちょいで」


 フライパンからなんとか剥がし取った肉を「へへへ」と口に放り込む――が。


「うぇ……塩っかれえ。振り過ぎたか……。……水洗いして焼き直せば食えるか?」


「やめろ、バカ」とのちに先輩からシンプルに怒られる。


「あ~……肉ひとつ焼くだけでも大変なんだな……。……先輩はめっちゃ簡単そうにツノウサギの肉を調理してたけど。ゲームだったからか。味の再現だけじゃなくて、調理の簡単さもグルメファンタジア・オンラインの良きポイントなのかもね……」


 といった内容のメッセージを愚痴半分ネタ半分のつもりで先輩に送ってみたら、


「なめんな」


 と4文字のカウンターパンチを喰らわされてしまった。ぎゃふん。


「今からお前んちに行ってやるから。その肉もおにぎりも食わずに待ってろ」


「え? 今からですか? もう夜遅いですけど」と慌てて返した俺のメッセージにはいつまで経っても既読が付かなかった。


 ――約30分後。


 ピンポーンとウチのインターホンが鳴らされた。


「……マジで来たんですか」と玄関に向かう。


 家賃で決めた築40年のワンルームマンションには、エントランスにオートロックが無く、入居者だろうがその友人だろうが全く無関係の者だろうが誰でも簡単に部屋のドアの前にまで来ることができた。今回の訪問者ももうすぐそこに居る。この部屋のドアの前で、その横に設置されているインターホンを押したのだ。


 ――ガチャ、ガチャガチャガチャッ! とドアノブが踊ってる。


「敷島! 居るのはわかってるぞ! 開けろ!」と閉まってるドア越しに先輩の声が聞こてきた。結構なボリュームだった。

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