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「俺、まだレベル1なんですけど。てか、このゲームに『レベル』とかがあるのかも知らんレベルなんですけど。この状態で1対3て。負けイベントですか。初戦で負けイベントって。FF2ですか。ふぁーすと・ふぁいと・2秒で死亡っすよ」


「問題無い」


「問題だらけですって」


「ここのツノウサギはこっちから攻撃しなければ、向こうからは攻撃してこない」


 ん……? それは、ついさっきアサミヤ氏から聞いた設定と矛盾してないかい? 人間も他の野生動物たちも全て、モンスターに喰い滅ぼされかねなかったんじゃねえんですかい。反撃しかしないんならこちらから手を出さなければいいだけなんじゃ。


「言っておくがここのツノウサギだけだからな。北の街道に出るツノウサギは向こうから襲ってくるぞ。気を抜くな」


「……同じ『ツノウサギ』なのに?」


「東の平原は『初心者向け』だからな」


 うーん。このゲームのホームページをくまなく読むか、街中のNPCたちから話を聞きまくれば、納得の裏設定を知ることもできるんか知らんけど。メタ的な御都合で本来の物語と矛盾しまくってくるとプレイヤーとしては冷めるんだよなあ。


「ここのツノウサギに限った話だけどな、複数で行動してるように見えてもヤツらは単独だ。攻撃を仕掛けた1匹からは反撃されるがそのすぐ近くに居ても他のヤツらは攻撃してこねえから。焦って別のツノウサギを攻撃するなよ。その瞬間から2対1になるぞ」


「ふむ。あの3匹もトリオじゃなくてピンが3組ってことですか。すぐ近くで同種が人間から攻撃を受けてても我関せずだなんて随分と仲間意識が希薄なんですね」


「知らん。そういう設定だ。ここのツノウサギだけはな」


「……先輩。冷めるんで『設定』とか言わんでくださいよ――痛いッ」


「分かったから。お前も『先輩』はやめろ。俺は『サダノーミ』だ」


「へいへい。サダノウ――めちゃ痛ぃッ!?」


「俺は『サダノーミ』だ。……ソレは本当にやめろ」


「へーい。了解っす。サダノーミ」


「……ふッ」と不意にサダノーミが笑った。


「どうかしましたか?」


 サダノーミ――山崎先輩と俺の間ではこの程度の掛け合いは日常茶飯事だ。楽しくないわけでは決してないが、いつものこと過ぎて思わず笑ってしまうほどのことでもないはずだ……と俺なんかは思うんだけど。


「……今の『冷める』もそうだが、アサミヤの長い話に興味を示したり、シキトーもちゃんとグルメファンタジアを楽しむ気持ちはあるんだなと思っただけだ」


 アサミヤ氏の話をもう一度、聞こうとしたのは、興味云々というよりも、その裏でお預けを食っていたサダノーミが非常に良い顔をしていたからなんだけど……まあ、


「そりゃあ、ありますよ。サダノーミが誘ってくれたゲームですからね」


 これもウソじゃない。


「なんだかんだ言いながら楽しむ気満々じゃねえかと思ったら笑けただけだ」


「せっかくですしね。どうせなら楽しみますよ」

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