ファーストバイト 17
「ああ、はい。でしたら……」とアサミヤ氏が教えてくれた、グルメファンタジア・オンラインの設定は――およそ150年前のこと、リアルの地球よろしく人間がメインを張っていた世界に突如としてモンスターが発生した。モンスターは野生動物の何倍も強くて、人間が武器を手にしても倒すことは困難だった。またモンスターの多くが人間を含めた他の生物を食料としていた。生態系の頂点に君臨し、尚且つ増え続けていくモンスターたちによって、人間も他の野生動物たちも全て喰い滅ぼされてしまうかもしれない。絶望の中、人々は神に祈った。助けを求めた。すると奇跡が起きた。神に祈りを捧げた人間たちの中から、モンスターに対抗し得る能力を開花させる者が現れ始める。彼ら彼女らは世の為、人の為、モンスターどもを狩り尽くす勢いで旅に出る。冒険者となった。ただ冒険者たちはその強さと引き換えに味覚を失っていた。何を食べても味を感じない。彼ら彼女らはひとつの幸せを永遠に失ってしまったのだ――しかしッ! 仕様か不具合か、はたまた神のお慈悲か、味覚を失ったはずの彼ら彼女らだったがモンスターの肉や血や皮や毛や脂やその他、モンスター由来の素材に関してだけは味覚が働いた。冒険者たちは、世の為、人の為、そして何よりも失った自らの「幸せ」を取り戻す為にモンスターどもを狩りまくるのだった――んだとさ。
「……意外とボリューミーなオープニングだったな」
「すみません。覚えきれませんよね。もう一度、話しますか?」
アサミヤ氏はそれこそRPGの説明シーンみたいなことを言ってくれた。
「 はい / いいえ 」の選択肢が見える。俺が選んだのはもちろん――。
「――『はい』。もう一度、今の話を聞かせてください」
「おい! シキトー! お前! いい加減にしろよ!」
「あはははははッ!」
巨漢のサダノーミにガシッと首根っこを掴まれる。そのまま、
「行くぞ!」
サダノーミに引きづられた状態で俺はその場を去ることとなってしまった。
困り顔で見送ってくれたアサミヤ氏には、
「いってきますねぇ~」
と笑顔で手を振っておいた。サダノーミが拉致の疑いで通報されないように。




