竜の落日 02
「応援してくれたみんな、どうもありがとう。僕たち、勇者パーティーの役目はここまで。それじゃあ――解体班! あとは頼んだよ!」
「お疲れ、勇者。重騎士に大魔法使いに聖女もな。超グッジョブだったぜ。こっから先は俺たちに任せな。――野郎ども! 始めんぞ!」
勇者たち4人と入れ替わるようにして、解体屋の親方がドラゴンの前に出張る。その後ろでうずうずと腕を鳴らしながら控えていた47人の解体職人たちが「おうさ!」と飛び掛かるような勢いでそれぞれの作業に取り掛かっていった。
……圧巻だ。家みたいな大きさのドラゴンが……見る見るうちにさばかれていく。
「ナマの解体って初めて見るな。本当に『解体』スキル使わないのな」
「スキルで『解体』するとキレイな食材を確実に入手はできるが、獣肉の場合は特にどの部位を得られるかは完全ランダムだからな。トリ肉 目当てでコカトリスを100匹狩って、99回 尻尾の蛇肉がドロップしたとかいうネタ動画もあったな」
「その点、マニュアルでさばけば、キレイにさばけた分だけきちんとその箇所の肉を手に入れられるってわけだ。失敗ゼロで全体をさばききれば『解体』スキルを使った場合の何倍もの量の肉を手に入れられるらしいぞ」
「へえ。そりゃあ、お得だな。俺も今度、やってみるかな」
「やめとけ、やめとけ。ヤツらは簡単そうにさばいてるが、フツウのプレイヤーにはまず無理だから。せっかく狩った獲物をグチャグチャにしちまって何も入手できないのがオチだ」
「だな。スキル無しの解体にチャレンジしてみたことある人間からしたら神業だぜ。初めて討伐された暗黒竜の解体なんて当然、初めてだろうに。48人、全員がさくさくさばいてやがる。ヤバ過ぎるだろ。解体屋」
さっきまでの勇者パーティーVS暗黒竜とはまた違った熱気が野次馬たちの間には漂っていた。ワーキャーの歓声は上がらないが、ホウホウと感嘆の息はあちこちから漏れていた。
……まいったな。お祭り好きなカジュアルプレイヤーたちが集まってるんだと思ってたら、職人たちによる解体の凄さが分かる玄人さん方もけっこう居るのか。
ちょっと……緊張してきてしまった。
「――よし。終わったぞ、勇者!」
解体屋の親方が大声を張り上げた。珍しく笑ってる。大仕事に満足げだった。
「ほら、持て。一番肉だ。どうせSS撮るんだろ」
「あはは。ありがとうございます。記念になります。……あ、待って。親方も一緒に写ってくださいよ――ハイ、チーズ。ありがとうございました。うん。それじゃあ、この肉は……サダノーミ。お願いします」
「お願いされてもな。今回はシンプルに塩振って焼くだけだろ」
「はは……。腕を振るうのはあとに取っておいてよ。まずは食材の味を」
「分かってるよ」
さばかれたドラゴンの肉が勇者の手から、腹の出た大柄なオッサンの手に渡る。
またざわざわと野次馬たちが騒ぎ始めた。