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ファーストバイト 13

「おう。敷島。今夜、グルメファンタジアに来い」と山崎先輩からお誘いを頂いたのは例の「親子丼」の件から数日が経った頃だった。


 待ち合わせ場所は前回と同じ噴水の広場だ。


 ふむふむ……平日の夜でもこないだの週末と同じくらいの人足だ。なるほど。このゲームの人気は本当なんだな。


「ん。来たか。シキトー」


「お待たせしました。すみません」


 言われていた時間よりは早くログインしたはずだけど、山崎先輩ことサダノーミを待たせることとなってしまった。ツムジを見せて謝らねば。


「やかましいな」


「ぁ痛ッ。何も言ってないのに『やかましい』とは、これいかに」


「あァ? んこたあどうでもいいんだよ。シキトー。お前、あれから一回もログインしてなかったろ。何だ。グルメファンタジアはお前にはつまらんなかったか?」


「え、いやぁ~……」


 前回はワニ肉で作られたエセ親子丼のデータっていう……何だろう……ニセモノのニセモノみたいなモノを味わわせていただいただけだったからなあ……。


「味覚ガジェットってスゴいなあってのは思いましたけど。ゲームとしてツマルとかツマラナイとかってのは……ナントモ」


「そうか。だったら今日はグルメファンタジア・オンラインをゲームとしてイチから楽しませてやろう。行くぞ」


「って、何処に?」と俺が思ったのと同時に、


「待ってください。早過ぎますよ。何もかもが」


 一人の女性がサダノーミの前に立ちはだかった。


 中世ヨーロッパの庶民を思わせるシンプルなエプロンドレス姿の女性アバターだ。栗色のショートヘアと古風な女性服のミスマッチ感が、いちご大福的な可愛らしさを醸し出していた。じっと目を凝らせば、アバターの頭上に「アサミヤ」という名前が浮かび上がる。プレイヤーだ。よくできたNPCじゃない。


「先に話をさせてくれるって約束だったじゃないですか」


「お……? ……ああ。悪い悪い。忘れてた」


「アサミヤ」は軽くサダノーミに抗議した後、すっとこちらに振り向いた。


「シキトーさん。こんばんは」


「へえ。こんばんは」


「先日ぶりです」


「……何処かでお会いしましたか?」なんて、うっかり返してしまったけれど。俺がこのゲームにログインしたのは今日で2回目だ。んでもって1回目ではサダノーミとあの店の店員にしか会っていない。ということは――。


「いや、失礼。サダノーミの店の店員さんですよね。制服の印象が強かったもので」


「はい。改めまして。アサミヤといいます。ボーダー・リバーの副料理長をやらせていただいています」

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