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ファーストバイト 12

「うぐ……」と口をつぐんだ店員Aは斬り捨て御免で放置させてもらうとして。


 ……正直、さっき一口食べてみたときにアレっぽいなあとは思ったんだけど。味はともかく調理の段階で鶏肉とあの肉を混同しちゃうかね……。……この「親子丼」を作ったのは山崎先輩なんだよなあ……?


 精肉店に騙されでもしたかな。このたびの食品偽装は先輩も被害者の内で、元凶は肉屋ってか。プレイヤーキルは出来なくても案外、殺伐としたゲームなんかね、このグルメファンタジア・オンラインってのは。


「うーん……口の中で感じたことだけで言えば」


「おう。それを言ってくれりゃあいいんだ」


「あの肉……ワニの肉じゃないですか?」


「ワニ――ッ!?」と店員たちがまた声を上げた。


「ワニってあのワニ?」「ワニの肉ってあんな味なのか?」「ジャーキーなら聞いたことがあるけど」と店内がどよめいている中、サダノーミはひとり、


「……なるほどな。言われてみれば」


 と頷いていた。


「おい。お前ら。聞いたな? あの肉はワニ肉だとよ」


 いやいやいや、俺の勝手な感想ですから。主観ですよ。それで良いって言ったじゃねえですか。別にあの肉の正体が「ワニ肉」だと決まったわけじゃないですから。


「ちょちょちょっと待ってくださいよ。サダノーミ」


「お前らの中でワニ肉をリアルで食ったことがあるヤツはいるか?」


 ……こりゃダメだ。先輩は喋るのと聞くのを同時には出来ないヒトだからな。俺がいま何を言っても先輩は止められねえだろ。自分から止まるのを待つしかない。


「いえ。食べたことないです」


「ワニ肉はさすがに」


「っていうかワニって食っていいものなんですか? ナントカ条約で保護とか」


 店員たちは皆、素直に答えていた。さっきの良いキャラしてた店員A氏も「サメのことをワニと呼ぶ地域もあるみたいですが今回のワニは」と建設的な話題を提供していた。うん。悪いヤツではないんだろう。知ってた、知ってた。


「全員、食ったことがなかったんだな。よし。ワニ肉を喰らうオフ会でもするか! と言いたいところだがお前らの中には顔バレ、身バレを避けたいヤツもいるだろう。俺のオススメのワニ肉が食える店を教えてやるから、ワニ肉を食ってみたいヤツは、各自で好きに行ってみてくれ。強制はしねえぞ。日本人にとってはゲテモノの部類に入るだろうからな。この中にはテメエのカネでメシを食ってねえ未成年のガキも居るかもしれねえしが、そういうヤツは親にムリを言うんじゃねえぞ。ワニ肉はテメエで稼いでから食え。その方が旨いだろうしな」


 サダノーミのお言葉に店員たちは何故だかキャッキャと大興奮していた。


 ネット上とリアルを切り離して完全に別のものとするような山崎先輩の考え方は、イマドキの主流とは違うように思えるけど。この店の連中には指示されてるんだな。サダノーミという朱に交わって赤く染まったのか、もしくは類友の集まりか。


「……何でもいいけど」


 楽しそうだ。店員たちもサダノーミも。


「都内だったら池袋に」とか「熱川にはねえが伊豆にならあるって話だ」とか、サダノーミの熱弁もまだまだ止まりそうになかった。


 ……よくわからんが今回の件、俺は何か利用されたっぽいのか? 山崎先輩のことだからそれも天然な気がするけど。まあ、先輩にメシを奢られたりとかアホみたいに高価なガジェットをただ貰うよりは利用してもらったほうが――「俺たち」らしくていいんだけどさ。

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