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ファーストバイト 10

 軽く辺りを見回せば、勝ち誇った顔のサダノーミとうなだれている店員さんの他、向こうの方でも別の店員さん方が青っぽい顔を突き合わせて何やらゴニョゴニョしているし、また別のところでは違う店員さんが額に手を当てて深く考え込んでいた。


「はっはっはっは。今から説明してやる」


 サダノーミはそう言うと俺に背を向けた。……いや、背中で語られても詳細が何も分からんのでちゃんと言葉で説明してほしいんですが。


「おい。お前ら。よぉーく、聞いておけ」


 店員たちの視線が一斉にサダノーミへと集まった。うなだれていた者も考え込んでいた者もサダノーミに顔を向けている。……今のたったの一言で、か。さすがは山崎先輩――サダノーミだ。見事なリーダーシップだった。カリスマってやつですか。


「さてと。シキトー。どこから説明してやるかな。とりあえず、この店は俺の店だ」


「はあ。そうなんですね」としか応えようがない。グルメファンタジア・オンラインというゲームの中で「店を持つ」ということがどれほどのことなのか……少なくともこのときの俺には全く分かっていなかった。


「……『はあ。そうなんですね』って……」と一部の店員がぼそりと困惑だか不快感だかを表明してくださったので、きっと「凄いですね!」と言うべきところだったのだろうとは思えた。……どれくらい「凄い」のかは見当もついていなかったが。


「はっはっはっは」


「なに笑ってんですか」


「いや、お前を連れてきて正解だったと思ってな」


「……意味が分からない」


「おっと。そうだ。説明の途中だったな」


 うーん、そういう話でもないような……。


「さっきお前に食ってもらった丼だがな、この店では『とろふわ親子丼』として提供してるメニューだ。開発者は俺だが、材料の選別はこの店の連中、全員でやった」


「……店ぐるみで食品偽装ですか?」


「お前――ッ!」と狭くない店内に怒声が響いた。その声の主はもちろんサダノーミではなく、店員の一人だった。


「はっはっはっはっはっは――ッ!」とサダノーミはさっきよりも大きく口を開けて笑っていた。


「そうじゃねえ……いや、事実としたらそうなっちまうのかもしれねえが。俺たちにそのつもりはねえんだ」


 ……俺はいま何を聞かされているんだろうか。「言い訳」だよな……?


 山崎先輩が飲食店を経営していて、故意に食品偽装しているとなったら――自然と縁が切れてしまうかもしれないくらいショックを受けたかもしれないが……。言ってしまえば「ゲームの中」の話だ。プログラムの改ざんや外部ツールを使用したチート行為でもないなら、好きにすれば良いと思う。そんな遊び方もきっと仕様の一部だ。本当にダメだとなったら運営が禁止するだろう。

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