ファーストバイト 09
噴水の広場から続く大通りに面した、大き過ぎない広さの飯屋に俺と山崎先輩――サダノーミは居た。内装は西洋風で広めのフロアにテーブルと椅子が点在していた。小綺麗で明るい雰囲気の入りやすそうな店だが、テーブルとテーブルの間に仕切りは無く、ファミレスというよりはトラットリア――大衆食堂といった感じだった。
店内の様子というか雰囲気から察するに、閑古鳥が鳴くようなお店ではないように思えたが……山崎先輩が借り切っているのか営業時間外もしくは休業日だったのか、店内には俺とサダノーミの他にはこの店の制服らしき衣装を着込んだ店員が数名しか居なかった。
「それ……サダノーミにそう言えって言われてませんか?」
急に店員の一人が詰め寄ってきた。
……んん? これってば、どういう状況だ……?
「鶏肉じゃないですよね?」と軽く指摘しただけで、この剣幕……代替食品を使ったプチドッキリってわけでもないってことだよな。ワンチャンも消えた。
俺はちらりとサダノーミに視線を送る。
「ふんッ」とサダノーミはまるで勝ち誇ったような顔をしていた。……こちらもまたどういうことだろうか。先輩が気落ちしていないことは良かったが、先輩に出された「料理」を否定するようなことを言ったのに、殴られすらしなかったぞ……?
「答えてください!」
……うるさい店員だにゃあ。客に対する態度じゃねえぜ? ……って俺もフツウの客としてこの店に来てるわけじゃねえんだけど。
「はいはい。お答え致しますと、先ぱ――サダノーミには俺が感じたままを言えって言われただけで何の文言も強要されてませんよ」
「そんな……」と店員さんはうなだれた。
俺の感想で気落ちしてしまったのは先輩じゃなくて、見知らぬ店員さんだった――ということは……。
「……ヘイ。サダノーミ。人が悪いですよ。さっきの『親子丼』ってあの店員さんが作ったものだったんですか?」
思い返してみれば、確かに、先輩は一度も「俺が作った」とは言っていなかった。ただ俺の前に「親子丼」を出しただけだ。コックコートにコック帽の姿を見て、俺が勝手に「先輩が作った」と思い込んだだけだった。……裏をかかれた。
「いや。あの『親子丼』は俺が作ったもんだぞ」
「はい……?」
……裏の裏で表だった……。……そうだ。山崎先輩が「裏をかく」とかするわけがなかった……。……俺としたことが。考え過ぎたか……。
……っと。俺まで気落ちしてどうする。気を取り直すぜ。
「ええと……何なんですか? これ」




