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ファーストバイト 07

「……おい。シキトー。なに丸まってんだ。行くぞ」


「ちょちょちょ、蹴らんでくださいよ。ちょっと考えるのをやめてただけですって。……で? 行くって何処に行くんです?」


「あァ? ……お前、何しにグルメファンタジアに来たんだよ。旨いモノを食わしてやるって言っただろ」


「旨いモノ……この味覚ガジェットのことじゃなかったんですね」


「……旨くはねえだろ。ただの機械だぞ。それ自体は」


「まあ、そうなんですけど」


 あの山崎先輩がトンチで攻めてくるとは珍しいと思ったけど……「味覚ガジェットを奢ってやるから一緒にオンラインゲームで遊ぼうぜ」ってことじゃなくて、


「……具体的に決まってたんですか? 食わしてくれるその『旨いモノ』って」


 このゲームの中で特定の「何か」を食わしてくれるってことなのか。


「ああ。食って驚け――とろふわ親子丼だ」




「『親子丼』ですねえ……」


 目の前に出された「料理」の第一印象を述べてみた。


 見た感じ――黄金色に輝く半熟卵とそれに埋もれた一口大よりも少しだけ小さめのお肉たちが、通常の飯茶碗よりも二回りほど大きい丼にたっぷりとよそわれていた。その上に三つ葉は乗せられていなかった。


 卵に隠れて見えないが当然、その下には白い御飯があるのだろう。


 御飯の上には刻み海苔だのがあるのかないのか。肉と一緒に玉ねぎや長ねぎは煮てあるのかないのか。そこまでは分からないが、見た目は完全に「親子丼」だった。


「確かに旨そう……ではありますね」


「おい。こら。『旨そう』じゃねえ。『旨い』んだ」


「見た目」と言えば、俺の目の前に立っているいま現在のサダノーミの格好にも言及しておきたいところだったが、


「さっさと食え。冷めるぞ」


「冷めるんですか? ゲームなのに?」


「グルメファンタジア・オンラインだからな。当然だ」


「……聞きしに勝る再現度ですね」


 しゃーないな。先に「親子丼」から処理しちまおう。


 ……ん? 俺いま「処理」だなんて思ったか……? 先輩に殴られてないところを見ると口には出してないみたいだな。危なかった……。悪気も何も意識してなかったけど、それはつまり俺の本心がこの「親子丼」を「料理」とは認めてなくて、単なるゲームの中のいちアイテムとしてしか捉えてないってことなんだろうな。


「いただきますね」


 期待なんて1ミリもするはずなく、目の前の「親子丼」に箸を付ける。


「んむ……」……へえ。驚いた。卵のとろみ、出汁の風味、肉の食感、更には白米のほかほか具合まで口内に感じられる。


「……凄いですね。この味覚ガジェットって――んがッ!?」


 正直な感想を呟いて、サダノーミに頭をはたかられる。……危ないなあ。ゲームの中じゃなかったら箸の先が喉を貫いてますよ。

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