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ファーストバイト 06

「調べんじゃねえよ。ヒトからのもらいもんの値段を」


「あはは。すみません。型落ちで多少は安くなってたのかもしれないですけど、それでも高価な物を、わざわざ買っていただいて。ありがとうございます。大事にさせ」


「あ? 別にわざわざ買ってはねえぞ」


「……戴き物ですか? 懸賞に当たったとか」


「いや。当時、フツウに買ったやつだ」


「……当時?」


「ああ。こないだ最新のが出て、それ買ったから。いままで使ってたやつがいらなくなったんでお前にくれてやったんだ。わざわざ、お前にやる為に買ったわけじゃねえから。気にすんな」


「……は? え……? ちょっと……コレ、先輩のお古なんですかッ!?」


「そうだな。言ってなかったか?」


「聞いてないですよ!」


 味覚ガジェットは口にくわえて、口ん中で機能する機器だぞ。


「先輩……なんちゅうもんを食わせてくれたんや!」


「なんで急に関西弁。お前、関東の出身だったよな」


「ええ、生まれも育ちもチバですけど……じゃなくて。コレ! このガジェット! 先輩が口ん中に入れてたもんなんですか!? 今、俺の口ん中に入ってんですけど」


「だから『先輩』って言うなっての」


「ぎゃんッ!?」――ゴロゴロゴロ……「って。それどころじゃねえですよ!」


「あァ? 何を今更、気にしてんだ。一緒にメシ食ってたら一口くれとか、やるとかよくやってたじゃねえか。同じ鍋に直箸 突っ込み合って食ったりとかよお」


「濃度が違いますよ! コレ、先輩がしゃぶりつくしたガジェットなんですよね?」


「言い方」


「す、すみません。ちょっと興奮してしまいました。でも」


「……シキトーって別に潔癖症じゃなかったよな? 渡す前には洗ってあるぞ?」


「洗ったって言っても……」


「よく考えろ。いや、考えすぎるな――か? 外にメシを食いに行ったら、箸はまあ割り箸とかあるけどよ、スプーンだのフォークだのは店の物を使うだろ? 使い捨てじゃねえ。他の客が使って、洗われたスプーンだのフォークだのだ。それと同じだ」


「それは……」……そうなのか? 同じ……なのか?


「……おい、シキトー。不特定多数の知らねえオッサンやらオバハンやらが使ってたスプーンは使えても、俺が使ってた味覚ガジェットは使えねえってのか?」


「いや……それは……その……」


 いままで考えた事がなかっただけで、改めて「不特定多数の~」などと言われると店のスプーンだのフォークだのが今後、使いづらくなってしまうじゃないか……。


「シキトー」


 先輩――サダノーミは力強く言ってくれた。


「気にすんな」


 ……それが正解かもしれない。現代のプライバシーに関する考え方と一緒だ。考え過ぎはココロに良くない。諦めや忘却も大事だ。


「そう……ですね」


 小さく頷いて、俺は考えるのをやめた――ドォーン。

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