表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/57

竜の落日 01

 ド迫力だな――。


 家みたいな大きさの黒いドラゴンが「GYAOOO!」とか言いながら暴れてる。ほんの十数メートル先の光景だ。


 それに対するは勇者ロンウェンが率いるたった4人のパーティーだった。


「行くぞ! みんな!」


「おうよ!」


「ええ」


「は、はいっ!」


 勇者に続くは重騎士に大魔法使いに聖女だ。


 戦闘が始まる。大魔法使いが ぶっ放った ぶっとい氷の矢がドラゴンの顔面にぶち当たって砕ける。痛がったのか嫌がったのか目を閉じて顔を背けたドラゴンに向かって、勇者が一直線に駆けていった。少し遅れてドラゴンが気付く。横薙ぎに振るわれたドラゴンの尻尾を、勇者の手前で重騎士が防いだ。膝を突いた重騎士が白く輝く。聖女はすでに回復の祈りを捧げていたのだ。


「凄いな……」と俺は呟いてしまった。


 流れるような連携とはよく言うが、それ以上だ。彼らの行動はコンビネーションを越えた1つのパッケージとして出来上がっているようだった。


「いいぞー! がんばれー!」


「そらっ! そこだっ! もういっちょ!」


「いくよ? いくよ? せーのっ……ゆうしゃさまー! きゃーっ!」


「Go! Go! Go! Go! いっけー! いけいけ! いけいけ、勇者!」


 俺を含めた「観戦者」と書いて「野次馬」と読む連中は、戦闘範囲外の安全圏から好き勝手に応援の声を張り上げていた。


 結果――1時間以上の長きに渡って繰り広げられた勇者パーティーと黒いドラゴンの壮絶な戦いは、


「これで……終わりだぁぁぁぁぁあああッ!」


「GYAOOOOOO……!」


 聖女の祈りが付与された勇者の剣がドラゴンの喉元に突き刺さったことで幕引きとなった。


「……やったか?」と野次馬の一人が口を滑らせる。


「やめろ、バカ。フラグ立てんな」


「ドラゴンが第二形態に変身したらお前のせいだぞ!」


「え、ええ……? ご、ごめん、勇者! 俺のせいで……」


 両手を合わせて謝る男に、勇者は「いえ――」とてのひらを見せる。


「……ログを確認。『暗黒竜を倒しました。』ってさ。経験値も取得されたよ」


 てことは……。


「討伐、完了だね」


 勇者のお言葉を噛みしめるように「…………」と一拍だけ置いてから、


「うおーッ!!!」


「マジかッ!?」


「ゆーーーーーッ! しゃーーーーーーーッ!!!」


 何十人、下手すれば何百人と居た観戦者たちが一斉に歓声を上げた。


「オンラインサービス開始から3年も過ぎて初! 倒せない設定だと言われてた魔王連中の一角を崩しちまいやがんの!」


「ばっか、そこはストーリーに則って『150年』て言えよ」


「モンスターに怯え続けてた時代が終わるのか? 人類が世界を取り戻すのか?」


「世界からモンスターが居なくなったら、このゲームも終わりだけどな」


「うーん、ジレンマ。カッコ笑い」


「それにしても勇者の強さよ。ニンゲンやめてんじゃねーのかレベルだったな」


「ステータスもだけどプレイヤースキルも高いだろ。当たり判定、見極めてる感」


「あと仲間。連携と信頼のエグさ。絶妙なタイミングのサポートありきで動いてた」


 驚きと称賛の言葉がそこかしこから湧き上がる。


 おいおいおいおい……大はしゃぎしたい気持ちは俺にも分かるがよ、お前さん方、待て待て待て待て、ちょいと早いぜ……だ。ある意味、本番はこれからだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ