【第8話】シャルルの気持ち
〜 次の日 〜
お店での仕事中、12時頃にいつもどおり、公爵様がお城から出てきた。手には何か持っている。
「やあクレア、昨日はありがとう。」
公爵様はお店に立ち寄ってくれた。
「あっ公爵様、こちらこそありがとうございました。……それは?」
「ああ。またクレアとキノコ狩りに行く時には、これを着てもらおうと思ってな。」
……出してきたのは凄く高級な生地で作った上下の服だった。
「こ、これは……。」
「ああ。前にクレアが来ていた服、だいぶ古くて傷んでいただろう。次からはこれを着ればよい。」
…シャルルが選んでくれた紫の上下の服の事だった。
「…あ、ありがとうございます。」
公爵様は満足そうな様子で、お付きの人とそのまま歩いていった…。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
私は仕事が終わり、家に帰っていた。
椅子に座り、ゆっくりと紅茶を飲んでいた。すると…
「よ!クレア!」
「…シャルル!」
シャルルが来てくれた…!
「昨日のオムレツ、あのあと食べたわよ!すっごい美味しかったわよ!冷えても美味しいなんてやるじゃない!」
私は昨日のオムレツの味を思いだして言った。
「え?あのあと?レオンの家で食って、家に帰っても食ったのか?」
シャルルが不思議そうにいった。
「…結局、公爵様の家では何も食べなかったの。」
そう 私が言うと、
「……………。そうか…。」
シャルルは何か言いたそうだったけど、そう返事した。
「……ん?あの服は?」
シャルルが公爵様からもらった服に気づいた。
「あ、あれは公爵様が『料理のお礼に』ってくれたの。」
…『紫の服の代わりに』って話はしなかった。
「そうか…よかったな…。」
沈黙…。
「で、昨日はうまくいったのか?」
「え?う、うん。まあね…。」
「そうか…。」
私は昨日のことを少し思いだした。
「…そういえば帰り際、公爵様が『私は、クレアを一人の女性として見ているつもりだ』って言ってたけど、どういう意味か分かる?」
私はシャルルに尋ねた。
「……レオンがそう言ったのか?」
「…うん。」
「……チッ。はっきりしない奴だな…。」
シャルルは吐き捨てるように言った。
………そのあとは、私とシャルルの間で、公爵様の話が出る事はなかった。食べ物の話や最近の出来事の話、ちょっと外に出てハーブを摘んだり少し散歩したりした。
私は、シャルルと一緒に居る時の自分が一番好きだった。
それから数日が過ぎた…。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
…ある日。
私は仕事の途中で薬草の買い出しに出かけていた。
その帰り道…。
「あれは…公爵様?」
公爵様が誰かと話をしているのを見つけた。
(誰と話してるんだろう……)
「…………………シャルル!?」
公爵様が話をしている相手はシャルルだった。
シャルルは興奮した様子だった。
私は二人の元へ駆け寄った…
◇◇◇
「ふざけるな!」
シャルルは大声を上げた。
「どうしたの!?」
私は公爵様に軽く会釈をし、シャルルに尋ねた。
「……クレア!?」
シャルルは驚いた様子だったが、
「クレアには関係ない!」
…こう言って、公爵様をにらんでいた。
「…やあ、クレア。キミの知り合いを怒らせてしまったみたいで すまない。」
公爵様も私に気づいた。
「公爵様、シャルルと何かあったのですか?」
そう私が尋ねると、
「クレアは関係ない!俺とレオンの問題だ!」
…シャルルは大きな声で、こう叫んだ。
シャルルのあまりに大きな声に、周りに人だかりが出来ていた。
「え!?クレアに公爵様、それに『王子さま』まで……!!」
ニイナも騒ぎを聞きつけて出てきていた。
シャルルは周りを気にする様子もなく、さらに叫んだ。
「おい、レオン!お前は本当にクレアの事が好きなのか!?お前の言動からは一切それが伝わらないんだよ!!」
「ちょっとシャルル!何を言ってるの!?やめて!」
シャルルは自制が効かない様子だった。
「シャルル君…。キミにそんな事を言われる筋合いはない。」
公爵様もムッとした様子だった。
「おい!レオン!そのスカした感じもやめろ!誰かを好きになるって事は……誰かを好きになるって事は、そんなカッコつけることじゃないんだ!!」
シャルルはさらに叫ぶ。
周りの人もどんどん増えてくる。
「誰かを好きになるって事!それは理屈じゃないんだ!もっと心の奥底から湧き上がっていく、マグマのような感覚なんだ!!」
シャルルはさらに続けた!
「それをなあ!素性がどうとか、家柄がどうとか、一切関係ねーだろ!なんで一人の人間として見る事ができねーんだ!!」
(公爵様とシャルルが話していたのは私の事だったんだ……!)
「人はそれぞれ考え方が違うのかも知れない!……でもなあ!…」
「誰かを好きになる!」
「誰かを失いたくない!」
「誰かのずっとそばに居たい!」
「そういう『気持ち』っていうのはなあ!理屈で判断するものじゃないんだ!」
シャルルは目に涙を浮かべながら叫んでいた。
その熱を帯びた言葉に、周りの人々も引き込まれていた。
「たとえ……たとえ自分自身でもな!!」
………そして!シャルルは私の方へ向いた……!
「クレア!」
「えっ?」
「俺は…俺は!」
その時!!
『ガバッ……………!!!』
(えっ!?)
私はシャルルの胸に強く抱かれていた!!
「クレア!!俺はクレアの事が、好きだ!!」
「シャルル……!?」
「クレアの事が大好きだ!!!」
……私はシャルルの胸の中でつぶされそうになっていた…!
周りの人々も固唾を飲んで見守っていた。
「シャルル………」
「シャルル…! 私………わたしは………!」
その時!
公爵様がシャルルの腕を持ち、グイッと引っ張った!
公爵様の力は強く、シャルルはその勢いで地面に転がった。
「シャルル!…」
そして、
『パンッ!』
公爵様が白い手袋をシャルルに投げつけた。
「シャルル君…キミに決闘を申し込む。…その手袋を拾わないのなら、キミには去ってもらう。」
そう公爵様は言うと、シャルルに短剣を向けた。
『キャーー!…』『ワーー!…』
……周りからは悲鳴も上がっていた。
シャルルはキッと公爵様をにらむと、
「……本当に自分の事しか考えてないんだな。」
と言った。
公爵様は一瞬 首をかしげたが、
「…まあ、手袋を拾う、拾わないはキミに任せる。2日後の12時、この場所で待っている。」
そうシャルルに言い残すと、お城の方へ歩いていった。
「シャルル!大丈夫!?」
私はシャルルの元へ駆け寄った。
シャルルは、
「…ああ。心配ない。」
と言い、ニコッと笑った。
「クレア……俺、クレアの事が大好きだ。心の底から。クレアに出会えて良かった。だから……だから安心してくれ。」
そう言うと、公爵様の手袋をタキシードのポケットに入れ、群集をかき分けて去っていった。
「シャルル…。」
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