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【第6話】シャルルの看病


…私は家に帰りすぐに湯船に浸かった。


そして身体を温めてからゆっくりと紅茶を注いだ。


今日は公爵様との初めてのお出かけ…。


公爵様も楽しんでくれてたようだし、それは良かったけど…。




なぜか、シャルルとニイナの事ばかり考えてしまう………。


(なんで…?なんで、シャルルとニイナが……?)





「なんで……なんであんなに楽しそうに笑ってるのよ……。」





私は紅茶をクイっと飲み干した。



…雨はすっかり上がり、外には月とお星さまが浮かんでいた。



その時……




「よーう、クレア。」




シャルルが現れた…。


「シ、シャルル、こ、こんばんは。」


………。


「…今日はどうだった?」


「えっ?どうって……?」


「レオンだよ!レオンとキノコ狩り行ってたんだろ?どうだったんだって…!」


「あ、ああ……た、楽しかったわよ!」


私はシャルルにニイナとの事を聞こうかどうか迷った。



でも……でも、別に私には関係のない事だし…。



「クレア。はい、これ。」


シャルルは私の手にギュッと、『魔法のリング』を握らせてきた。


「え!?なんで!?」


…私はリングが無かった事に今 気がついた。


「…店に忘れてたんだろ?大事な物らしいじゃん。…ったく、気をつけろよな…。」


「あ、ありがと……。」



(……ん?……てか、今のシャルルの手、めっちゃ冷たかったんだけど…!)



「シ、シャルル、アナタ濡れてるじゃない!もしかして、雨に降られてたの!?」


「ん?ああ。なんか寒いな…今日は。」


「え!?しかも乾かしてないし!ちょっと来て!」


私はシャルルの手をつかんだ!…やっぱり冷たい。


「と、とりあえず湯船に浸かって!着替えは用意しとくから!」


私はシャルルを浴室に押し込むと、男の人でも着れるサイズのローブを用意した。



(………あんなにずぶ濡れになって…一体なにをしていたの…?)



15分…。

30分……。


シャルルはなかなか出てこない…。



そして1時間が経った頃……シャルルがローブを着て浴室から出てきた。


…いつものタキシード姿と違って、なんだか可愛らしく見えた。



「…あ、温まった!?」



「……ん、………まだ寒い…。」


シャルルはガタガタと震えていた。



私はシャルルの手を握った!


「まだ冷たい……。」


そして、シャルルのおでこに手の平を当てた。




「…………!あつい…!すごい熱……!」




シャルルはローブにくるまって、ガタガタと震えたままだった。



「ちょっと待ってて!白魔法を……」



…私は熱冷ましの魔法を唱えようとした。その時…!



「……忘れたのか?俺、ドラキュラだぜ……?」


シャルルが声を振り絞るように言った。



「そ、そうだった…!シャルルに白魔法は効かない……!」



……私は自分のベッドにシャルルを寝かせた。そして、毛布を何重にも重ねた。それから、冷たいおしぼりをおでこに乗せた…。



「……少しは温かくなった…?」


「……うん…。…俺、風邪ひいたのかな……?」


「……多分…。…ゆっくり横になっててね……。」


「…ごめんな……。…ありがとう…。」


「ううん、全然…。」




………私はシャルルの事が心配でたまらなかった。




夜はさらにふけていった…。


窓に残った雨つぶが、月に照らされて静かに光っていた…。


…少しずつ、シャルルの息づかいが荒くなっていく…。



「ハァ…ハァ…」


「シャルル………大丈夫………?」


「ハァ…ハァ………なあクレア………。」


「なに?シャルル…。」


「お願いがあるんだけど…。」


「何でも言って…。」





「……………手、握って…。」





…シャルルは毛布の隙間から片方の手を出してきた。



「………いいわよ。」



私はシャルルの手をギュッと握った。


……さっきより、少しだけ温かくなってる。



「…ありがとう、クレア。……なんか、安心する…。」


シャルルはほんの少し微笑んだ。


私も微笑み返した。


…シャルルの手を握って、なんだか私も安心した…。



「なあ、クレア…。」


「なに…?」


「………良かったな。レオンとうまくいきそうじゃん…。」



「………………。今は余計なこと言わなくていいわよ…。」


「……だって、俺の役目は『恋愛成就』だからな…。」





……………!!!





…そうだった。シャルルは私の『恋愛成就』の魔法で出てきたんだった。



………もし、もしも、私と公爵様が『恋愛成就』したら、シャルルはどうなるの?シャルルは………



しばらくすると……



『……ハアッ!ハアッ!ハアッ!………』


シャルルの息づかいがさらに荒くなってきた!



「シャルル…!今はゆっくり休んで…!私、ずっとそばに居るから……!」



1時間…。

2時間……。



……時間とともに、シャルルの呼吸は少しずつ落ち着いていき、そのまま眠りについた…。


…私もシャルルの横で椅子に座り、手を握ったまま眠った…。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


〜 翌朝〜



……朝早く、私は目を覚ました。



「……シャルルは…!」



パッとベッドに目をやると、シャルルはまだ眠っていた。



…おでこに手を当てると、まだ熱は下がってなかった…。



「……シャルル…。」



私は薬草とキノコのスープを作った。



『コトコトコト……』



……私は、公爵様の家で振る舞うキノコの中から、1番おいしいキノコを手に取り、鍋に入れた。




「………クレア……?」


「…あ、おはよう、シャルル……身体はどう?」



シャルルが目を覚ました。


「昨日の夜よりはマシだけど、まだ頭がボーッとする…。」


「そう……スープ作ったけど、食べれる?」


「うん…ありがと。」



私はスープをお椀に少しに入れて、ベッド横のテーブルに置いた。


シャルルはゆっくりと身体を起こし、ひとくち、スープを口にした…。



「……おいしい!」


「そう?…良かった!…」


シャルルはスープをすぐに飲み干した。



「…おかわり!……。」



シャルルはニコッと微笑んだ。


「ちょっと元気出た?」


「うん、出た出た!…。」


シャルルは精一杯 笑ってくれた。



「…でもこのキノコ、いいのか…?レオンと一緒に取ったやつだろ…?」


シャルルが聞いてきた。



「………シャルルは余計なこと考えなくていいのよ……。」



…私は昨晩の言葉を繰り返した。


…シャルルは何も言わなかった。



「シャルル、今日も一日ゆっくり休むのよ…。」


「…うん。ありがと…。」


…そう言うと、シャルルはまた眠りについた…。



シャルルが眠っている間、私はシャルルのタキシードの仕立て、汗をかいた時の着替えの準備、夜ごはんの準備をした。


シャルルを起こさないようにしながら。


…そして、公爵様の家に向かう準備もした。


それから、シャルルを残したまま、お店に出勤した…。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


…私はお店に着いた。


ふと、目を上にやると、壊れていた看板がしっかりと直っていた。


「あれ?看板が直ってる。修理を頼んだのかしら…。」


私がお店に入るとニイナがいた。


「おはよー、クレア。」


「あっ!おはよー。ねえニイナ、あの看板って…」


「あ、そうそう!実は昨日、例の王子さまが店に来てさ、看板が壊れてるのに気づいて直してくれたの!」


「え!?シャルルが!?」


「そうそう。途中、すっごい雨が降ってきたけど、それでも最後までやり切るって言ってくれて…。」


「そうなんだ……シャルルが濡れてたのってソレだったんだ……。」


「そのとき、クレアが忘れて帰ってた『魔法のリング』をクレアに渡すようにお願いしてたんだけど、受け取った?」


「…あ、うん。」



……それでウチに来てくれたんだ……あの時はもう熱が上がってたはずなのに……。



「…あ!ねえニイナ。………昨日シャルルは何しにお店に来てたの?」


「ん?さあ…。『クレア居る?』って言われたけど、『今日は公爵様とキノコ狩り行ってます』って答えたら、そのまま帰ろうとしてたけどな…。」


「そうなんだ…。」



「あ!そうそう!クレア、昨日のキノコ狩り、どうだったの?」


「…あ、楽しかったよ…。」


「……それだけ?」


「…うん……。で、今日はお城に公爵様のお知り合いが集まるからって、夕方からキノコの料理を作るためにお城にお呼ばれされたの。」


「へー!すごいじゃんクレア!…もしかしてホントにクレアが公爵夫人になる日、近づいてない?」


「そ、そう…?」


「いやー、公爵夫人の友人になる日が近いとは!私も鼻が高いわ!」


…ニイナはいつものように冗談ぽく話してくれていたが、私は何も答えられなかった。




「………………ねえ、クレア。」


「……なに?」


「…クレア、公爵様と居て、楽しい?」


「…え?」


ニイナは急に尋ねてきた。




「…えぇ、楽しいわよ…。」


「……ならいいんだけどさ。あの『王子さま』とは本当に何もないの?」



「………………。」



「まー、ワタシには関係のないことかも知れないけど、クレアの『友人』として聞いてみただけ。」


「……そう………。」



「じゃー、クレアが何もないのなら、やっぱり私が王子さまにアプローチしよっと!」





「ダメ!!」





「………。」


ニイナがジィーッ見てくる。


「な、なによ…。」


ニイナはニヤッと笑いながら、


「……クレア、アナタにとって一番シアワセな道を選んでね。友人として心からそう願ってるわ!」


と言いながら、背中をバンバンとたたいてきた。


「……イタタタタ!………もう……」


読んでいただきありがとうございます(^-^)

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