表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/11

【第5話】公爵様とのキノコ狩り

…公爵様との雑談の日々も数週間が経った。


シャルルとの練習の日々も終わり、今では特に緊張する事もなく、フツーに会話ができてる…気がする…。



そんなある日…



「あっ公爵様。こんにちは。」


「やあクレア。ごきげんよう。」


…公爵様は手に何かを持っていた。


「…公爵様?…それって…。」


「ああ、さっき見つけたんだ。野生のキノコ。こんなキノコ見た事無かったから、城に持ち帰って誰かに調べさせようと思ってな。」



「公爵様、それ、『アニアニのキノコ』ですよ。」


私は一目見てすぐに分かった。


「…アニアニのキノコ?初めて聞いたな…。」


「確かに、このあたりでも珍しいんです。味はあまりしないのですが、食べると魔力回復の効果があるんですよ。」


「ほう…。やはり魔法が生きている国だけあって、キノコもそれに合わせたモノができるんだな。」


公爵様は驚いていた。


「それにクレア、君はキノコに詳しいんだね。」


公爵様が微笑みかけてくれた!


「えっ?ええ…。私、キノコを使った料理や薬を作る事も多いので、この地域のキノコの事はだいたい分かるんですよ。」


…私の得意分野が思わぬ所で炸裂した…!


「ほう、それはすごい。一度、クレアとともにキノコ狩りに行きたいものだな。」



………!思ってもみないお言葉っ………!!



「はっ、はい!私は いつでも構いません!」


「それならクレアの仕事が休みの日にしよう。その方がクレアにとってもいいだろう。」


(や、やさしーーー!)


「ほお!キノコ狩りとですな!それは面白そうですな!私もお供しますぞ!」


(うわっ!お付きの人がなんか言い出した!空気読めよ!ジジイ!……)


「ははっ!ジイヤ。私が行こうとしている場所はかなり丘の上だぞ?ジイヤの足腰では行きはよくても帰りが不安だ。私だけでよい。」


(こ、公爵様、ナイス!)


「…ではクレア、次の休みの日に。」


「は、はい!喜んで…!」


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「ま、まさか公爵様とお出かけができるなんて……!」


私は帰宅後、そわそわしながら当日着ていく服を選んでいた。


すると…。


「よう クレア、久しぶり!」


シャルルが現れた。


「あ、シャルル!最近会ってなかったね!元気してた?」


「ん?あぁ…。……てか、何してんの?」


シャルルは私が引っ張り出してきた服の山を見ながら聞いてきた。


「ああこれ?実はね…。プククク……!なんと!公爵様とキノコ狩りに行く事になったの!…しかも二人で…!」


私はニヤけながら答えた。



「え?マジ?………すごいじゃん。」



シャルルは驚いた様子だった。


「スゴイでしょ!シャルルの言う通り、あれから毎日、公爵様に話しかけたのよ!」



「え?毎日?すごいな。………」



「これもシャルルとの練習のおかげよ!本当にありがと!」


私は満面の笑顔でシャルルにお礼を言った。



「……いや、俺は別になんにもしてねーよ。純粋にクレアの努力の結果だよ。………ホント、頑張り屋さんなんだな…。」



ん?なんか今日のシャルル、おとなしいな…。



「え、えっと!この服の中なら、シャルルはどれがいいと思う!?」


私は当日着ていく服装の意見を求めた。


「ん?…うーん、そうだな……。…とりあえず、このドレス系はいらないんじゃね?キノコ狩りに山へ行くんでしょ?」


確かに…。危うくドレスを着てキノコ狩りに行くところだった。


「じゃあ、これはどうかしら!?」


私は薄いベージュの上下の服をシャルルに見せた。


「うーん、俺はコッチの、濃い紫の上下の方がいいと思うなー。コッチの方がクレアに似合いそう。」


「そう?じゃあ、そうする!」


私は濃い紫の上下の服を手に取った。


「あ、あくまで俺がいいと思っただけだぞ!レオンの奴がどう思うかは知らねーぞ!」


…なんかシャルルがあせってる。


「シャルルは王子だから公爵様の気持ちが分かるんじゃなかったの?よく言ってたじゃない。私、当日は紫にする!」


私は紫の服を高くかかげた。


「ま、まあそうだけどよ…。俺が勝手にクレアに似合うかなって思っただけだからさ…。」



…なんか、いつもの威勢が無いな…。



「シャルルが似合うって言ってくれたからそれで充分よ!ありがとう…!」


私は当日用として、丁寧に服をハンガーにかけた。


「お、おう。……じゃあまたな…。」


シャルルは玄関から出ていこうとした。


「あっ!ちょっと待って!」


「ん?」


「シャルル、もうご飯食べた?今からガーリックのパスタ作るけど、いる?」


「え?ガーリック?ムリムリ。俺、ドラキュラなんだぜ?ニンニクなんて食えないに決まってんだろ?」


「……ドラキュラがニンニク苦手って…。なんでそこは古典的なのよ…。」


「でもトマトソースは好きだぜ!ほら、色が血の色してるだろ?」


「…色だけでしょ…。なんかよく分かんないところでドラキュラらしさを はさんでくるなあ…。」


「いいから いいから!トマトソースないの!?」


「ああもう、厚かましいなあ!分かったわよ!」


「やったあ!ケラケラケラ…!」



……なんだ。いつものシャルルか…。



『…………なんだぜ!』

『キャハハハ!………』

『そうそう!そういえば………』

『ケラケラケラ!………』

『バカじゃないの!………』

『それ笑える!………』



…結局、その日は遅くまで、シャルルと『雑談』していた…。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


〜 キノコ狩り当日 〜


「あっ公爵様!おはようございます!」


「やあクレア、おはよう。今日はよろしく頼むよ。」


「はいっキノコの事は任せてください!」


私は紫の上下の服を身にまとい、キノコ狩りのため、山の上を目指した。


キノコスポットまでは結構距離がある。


(はあっ…はあっ…結構大変…。ド、ドレスじゃなくてよかった…!)


公爵様は息切れもせず、スイスイと歩いて行く。


(はあっ…はあっ…公爵様、ペース早いなあ…。はあっ…はあっ…)


私はついて行くのが精一杯だった。



ふと、街を見下ろすと、結構な高さまで来ていた。


(うわ〜!こんなところまで来たんだ!)


すると、


「大丈夫かい?クレア。」


……公爵様が気遣ってくれた。


「は、はい!大丈夫です!」


…私はさらに歩みを進めた…。



…山道の曲がり角、ちょうど私が働いてるお店が見えるところに来た。


「今日はニイナは出勤日だったはず…。ここから見えるかしら…?」


私はお店の方向を見下ろした。



「…あ!居た!ニイナが見えた!」



だいぶ小さく見えるが、ニイナが店先に出てきているのが分かった。



「あれ?誰かと話してる…。お客さんかな…?」




「……え!?………シャルル!?」



ニイナが店先で話している相手はシャルルだった。



(え!?なんでシャルルがお店でニイナと話してるの……!?………それに、二人ともすごい笑ってる……。)



…遠くても、二人が笑いながら話してるのは分かった。





「……何よ…シャルルのヤツ…。結構楽しそうじゃん………。」





「……………。」


「……ん?クレア、どうした?」


公爵様が振り返って尋ねてきた。


「い、いえ!なんでもないです…!」


……私は歩みを進めた。


………。


◇◇◇


〜 10分前 〜


『こんにちはー!あれっ?こんにちはー!』


『はいっ、いらっしゃいませ……あ!王子さま…!』


『王子さま?俺の事?…キミは…。』


『あっ!ニイナです!…あなたはシャルルさんですよね!?クレアの『いとこみたいなもの』の……!』


『『いとこみたいなもの』?なんだそれ?…てか、今日はクレアは居ないのかな?』


『あっ!クレアは今日休みなんです。公爵様とキノコ狩りに出かけてるはずですよ!』


『…そうか……今日だったんだ…。』


『明日はクレア、出勤日ですよ!』


『……いや、いいよ…。ありがとう。…てか、全然話変わるけど、いい?』


『は、はいっ!なんでしょう…?』


『屋根の上にあるお店の看板、なんか古くなってて危なくね? なんか今にも落ちてきそうなんだけど…。』


『あぁ、そうなんです!なんか留め具が古くなってて…。クレアが少しずつ直してくれてるんですが、結構大変みたいで…。』


『え!?あれをクレアが直そうとしてるの?無茶でしょ!?』


『そうなんですけどね〜。クレアが『自分で直す』って。』


『はははっ!クレアらしいな!』


『ふふふっ!ほんと!』



………山の高い所を誰かが登っているのが見える………



『じゃあさ、俺が直してやるよ!』


『え!?大丈夫ですか!?』


『大丈夫!大丈夫!』


………。


(ヨイショ!ん?この留め具、結構固いな…。それに看板も重い…。これ、クレアがひとりでしてたのか…)


『大丈夫ですかー?』


『ああ、少し時間はかかりそうだけどな!』


………。


◇◇◇


「クレア、このキノコは?」


「公爵様!それはさわったらダメです!やけどを誘うキノコです…!」


「おっと…!そんなキノコがあるのか……。本当に不思議な地域だな…。」


……私はやっとキノコスポットにたどり着いた。


「クレア、キミは本当にくわしいな。」


「え、えぇ…ありがとうございます…。」




…………なんだろう、この、何となくココロが晴れない感じ…。




「あっちにもあるぞ!」


…でも、公爵様は楽しそう。よかった…。



『ゴロゴロゴロゴロ……』



「ん?雨雲が来てる。ひと雨降りそうだ。クレア、山を降りよう!」


「は、はい!」



…黒い雲はみるみるうちに空を覆っていき、ポツポツと雨が降り出した…!



そして……!



「うわっ!すごい雨だな…!」


まもなく小雨は大粒の雨に変わった。


「急ごう……!」


私と公爵様は急いで街まで戻った。



……そして、街に戻った頃には二人ともずぶ濡れになっていた。


「まいったね…。でも雨もすぐに上がったようだ。」


黒い雲はすぐにどこかへ行き、今度は晴れ間が空に広がっていった。


「そうですね…。でも、キノコはたくさん取れて良かったです。」


…雨はキノコ狩りの終盤ごろに降り出したので、キノコは充分に収穫できていた。


「ああ、そうだな。…でも本当に不思議なキノコだ…。果たしてウチの者に分かるかどうか…。」


「今日、公爵様が取られたキノコ、結構 食用のやつも多いんですよ?よければ私が調理しましょうか?」


「おお!それはいい!実は明日、我が城に隣国から知り合いの公爵達が来るんだ。みんなきっと、こんなキノコは見た事がないから、そこで晩餐として振る舞いたい。」


私はパッと笑顔を作り、


「それはいいですね!では、腕を振るってお作りします!」


と答えた。


「では明日の夕方、城に来てもらえるかな?クレア。」


「は、はい!明日の夕方ですね!」


私は初めてお城に招かれた。


「ではまた明日。クレアとは方向が違うから、ここで失礼するよ。」


公爵様とは道の途中でわかれた。


…道の途中では お付きの人が公爵様を迎えに来ていて、濡れた公爵様の体をふいていた。


…私は ずぶ濡れの中、家路を急いだ。



「……早くお風呂に入んなきゃ…!」


………。


◇◇◇


『シャルルさーん!大丈夫ですかー!?』


『…ああ!大丈夫だ!……でも、思ったより時間かかるぞ…これ…。』



『ゴロゴロゴロゴロ……』



『シャルルさーん!雨が降ってきましたよー!下に降りませんかー!?』


『チッ!結構降ってきやがった…!でももうやり切る…!』


『シャルルさん……。』



………。



『…ほらっ出来たぜ。』


『すごいっ……!ありがとうございます!…でもすごい濡れちゃってますね…。着替えていきますか?』


『あー?別にいいよ!このままで!』


『…風邪ひいちゃいますよ?…あっ!そうそう、シャルルさん、この後クレアに会いますか?もし会うなら、これを渡してもらっていいですか?』


『…これは?』


『クレアの忘れ物なんです。『魔法のリング』。それがないと、魔力をうまく操れないんです。』


『ふーん、そんな大事なもの忘れて帰ったのか…。分かったよ!俺が届けとく!』


『ありがとうございます!』


『別にいいよ。じゃあな!……ハ、ハックショイッ!』


………。


◇◇◇


読んでいただきありがとうございます(^-^)

下にある☆☆☆☆☆から、作品への評価をタップいただけるとすごく嬉しいです!(1話毎でもぜひ!)

[ブックマーク]もタップいただけると本当に嬉しいです!

どんな評価でも作品作りの参考にしますので、何卒よろしくお願いいたします(*^▽^*)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ