【第3話】プレゼント大作戦
「よっ!」
…家でゆっくりしてたらシャルルが現れた。
「シャルル……公爵様、話しかけてくれたわよ…。」
「だろー!?俺が言った通り!」
シャルルはうれしそうだった。
「なんか信じられない…。」
「だから!俺は王子だから分かるんだよ!公爵の考えが!」
シャルルはいつものようにケラケラと笑っていた。
「…で、この後 私はどうすればいいのかしら?(ポリポリ)」
「そうだな…。クレアの存在はレオンに意識づけ出来たし…。次は……何か『プレゼント大作戦』でも決行したいところだな。」
「プレゼント大作戦?私から公爵様にプレゼント出来るような代物なんて何も無いわよ。(ポリポリ)」
「…ったく、ちょっとは考えろよ。………てかクレア、さっきから何 ポリポリ食べてんの?」
私はティータイム中だった。
「え?パンの耳のラスクよ。」
「パンの耳のラスク?なんだそれ?」
シャルルは不思議そうな顔をした。
「シャルル、パンの耳のラスク、食べた事ないの?あまり物で作れるんだよ。」
そう言うと私は、シャルルにひとつ差し出した。
「へー、パンの耳のラスクなんてあるのか。食べた事ないなー。ほら、俺、王子だからさ。」
「…何度も聞いたわよ…。いらないなら返してよ。」
「いただきまーーす!」
シャルルはパクッと噛みついた。
「…………!!」
「何これ!?めっちゃうまいじゃん!!」
シャルルは大きな目をさらに大きくした。
「そ、そう?あ、ありがと…。」
…なんか褒められた。
「クレアが作ったの!?他にもあるの!?」
「えっ?えぇ…。色々あるわよ。」
私は作り置きしていたパンの耳のラスクを順番に取り出した。
「えっと…これは大粒の粉砂糖が付いてるやつ…それからこっちは油を使ってないやつ…それからこっちはニンジンをパウダー状にしてまぜたやつ……」
「へぇー!クレアすごいじゃん!」
すごいと言われたら悪い気はしない。
「そ、そう!?すごいでしょ!?それじゃあねえ……!」
私はさらに自分の『すごさ』をアピールしようとした…。その時……
「これだ!」
シャルルがひざをパンっとたたいた。
「えっ!?どれ!?」
するとシャルルはニヤッと笑いながら、
「『プレゼント大作戦』、パンの耳のラスクだよ!これをレオンにあげるんだ。」
「ええーー!こんな子供のおやつ、公爵様にあげれる訳ないでしょ!?」
私は急いでラスクを片付けようとした。
「まあまて、クレア!…俺の解説、聞く?」
「……一応、聞く…。」
「レオンは公爵だろ?普段は高級なものばかり食べてるはずなんだ。俺は王子だからよく分かる。ちなみに、公爵より王子の方が身分は上だからな!」
「…前にも聞いたわよ。早く続きを聞かせてよ。」
「そこで、パンの耳のラスクの登場だ。レオンはきっと初めて見るだろう。一瞬、なんだこれ?ってなると思う。」
私はうなずきながら聞いた。
「でも、食べてみるとおいしい。今まで食べたことのない素朴な感覚。『こんな、家庭的なおやつを作れるクレアって素敵だな』ってなる訳だ。」
私は首をかしげながら、
「そんなにうまくいくかしら?」
と聞いた。
「だって俺は王子なんだぜ?きっとレオンも同じ事を思うはずだ!」
「…………ん?それって…」
………なんか文脈がおかしいぞ。
「それって、シャルルが私のことを『こんな、家庭的なおやつを作れるクレアって素敵だな』って思ったって事?」
私はニヤニヤしながらイタズラっぽく聞いた。
「ち、ちげーーよ!!そんな訳ないだろ!!」
「べ、別にそこまでムキにならなくても…。」
……否定しすぎだろ。
「ま、まあそういう事だ!あ、ラスクを入れる袋も庶民的なものがいいぞ。」
シャルルはこう付け加えた。
「分かったわ。じゃあ私、色々な種類のラスク作ってみる!シャルルも作るの手伝ってね!」
「はあ!?なんで俺が手伝うんだよ!」
…シャルルはいちいちリアクションが大きい…。
「私の恋愛が成就しないと、アナタも帰れないんでしょ?それにパウダー作るの、結構チカラ仕事なのよ!」
「ぐぅぅ……分かったよ!」
『シャルル!もっとチカラ入れて!………』
『クレア!このタマネギパウダーのやつうまいぞ!………』
『ちょっと!つまみ食いしないでよ!………』
『パンの耳がキバに はさまった!………』
『キャハハハ!…………』
…何時間経っただろうか。
「…うわっ!もうこんな時間じゃん!クレア、ほどほどの所で休めよ!」
「う、うん…でも、もう少し……!」
「………がんばり屋さんなんだな…。じゃあ俺はもう外に出るぞ!明日、がんばれよ!」
シャルルはそう言うと、玄関のドアノブに手を掛けた。
「シャルル、ありがとう。」
私は素直にお礼を言った。
「……お?おう。……。じゃあな…。」
シャルルは出て行った。
よしっ!もうひと踏ん張り!
〜 次の日 〜
「よっ!クレア!」
…今日は朝からシャルルが登場した。
「あ、おはよ。シャルル……。」
「うわっ?なんだ!?すごい量じゃん!」
「そう…結局徹夜しちゃって……。」
私は色々なラスクを試行錯誤しながら作っていた。
「……ほんと、よく頑張ったな…。これならきっとレオンも喜ぶぜ!」
「…だといいんだけど……。」
私は作ったラスクを丁寧に布のふくろに入れていった。
「ん?その袋もいいじゃん!」
シャルルは袋をマジマジと見た。
「そ、そう?ありがと!これも昨日作ったの。少しでもラスクがおいしそうに見えるように。」
「……袋も作ったのか…。ほんと、がんばり屋さんなんだな…。」
私は袋のひもをキュッと結んだ。
「よしっできた!じゃあ、お店に行くね!」
「おうっ絶対喜ぶぜ!…。」
私はラスクの袋をカバンに入れ、お店に出勤し、今日の12時を待つことにした……。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
…そして12時……!
いつもどおり、公爵様がお店の前を通った…!
私はラスクの入った袋をにぎりしめ、勇気を出して公爵様の元へ走った…!
『タッタッタッ………!』
「……!?」
公爵様が私に気づいた……!
「やあ、クレア。ごきげんよう。」
公爵様はニコッとほほえんでくれた。
「あ、あのっ!公爵様……!こ、これをっ……!」
私はラスクの入った袋を渡した…!
「……これは?」
「あのっ!これはラスクです!パンの耳で作ったラスク!公爵様のお口に合えばと思って……!」
「パンの耳のラスク?そんな食べ物があるんだな…。」
シャルルの言った通り、公爵様はパンの耳のラスクを知らない様子だった。
「い、意外とおいしいんですよ……!」
私は精一杯のつくり笑顔を作った…!
すると…
「ほお!パンの耳のラスクとな!?私も昔よく食べたものでした…!」
……なんと公爵様のお付きの人が食いついてきた!
「ほう…ジイヤはパンの耳のラスクとやらは好物なのか?」
「はいっ!早速ひとついただいてみます!」
……なんと最初にラスクを手に取ったのはジイヤだった!
「ほう…。これは良い味をしとる。なかなかの腕前じゃな。」
そしてジイヤに褒められた!
「は、ははっ!あ、ありがとうございます…。」
すると公爵様は、
「ジイヤの好物だったようでなにより。では遠慮なくいただいていくぞ、クレア。ありがとう。」
公爵様はニッコリと笑ってくれた…!
「は、はいっ!」
「ありがとう!クレア殿!」
ジイヤもニッコリと笑ってくれた…!
「……は、ははっ……。よ、喜んでくれたわよね?きっと……。」
私は一応の満足感を得ながら、仕事が終わり、家路についた。
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