【第2話】恋愛指南の実力
〜 次の日 〜
「『あらっ!レオン公爵!元気!?もう野犬には噛まれないでねっ!』………。」
「『あらっ!レオン公爵!元気!?もう野犬には噛まれないでねっ!』………。」……………。
「ブツブツ………。」
「………ちょっと、クレア…さっきから何ブツブツ言ってるの……?」
同僚のニイナが気味悪そうな目で見てくる。
「………何でもない…。ブツブツ…。」
でも今の私にはそんな事より、遂行しなければいけないミッションがあるのだ。私は予行演習を繰り返していた。
公爵様は毎日、お昼の12時くらいにお付きの人と一緒に私のお店の前を通る。そのチャンスを逃すわけにいかないのだ。これがシャルルからの指南なのだ。
10時…。
11時…。
その時は刻一刻と迫ってくる…。
そして12時……!
お城の方向から公爵様とお付きの人が歩いてくるのが見えた…!
時は来た……!
私は『ガタッ』と椅子から立ち上がった!
「わっ!び、びっくりした!クレア、何よ急に…!」
私はびっくりしているニイナに向かって言った。
「ニイナ…。私の一世一代の大勝負、見届けてくれ……!」
「はぁ!?今日のクレアおかしいわよ!」
私は混乱するニイナを尻目に、店の外へ飛び出した…!
公爵様は店の前まで来た…!私に気付いている様子はない……!
いざ公爵様の元へ………!
1歩…!
2歩……!
…そして公爵様の真横まで来た!
…私はついに話しかけた!!
「あらっ!レオン公爵!元気!?もう野犬には噛まれないでねっ!」
さらに!
公爵様の背中を『バンバン』と叩いた……!
『…………。』
『…………。』
『…………どうなる!?』
「……こ、こらーー!!レオン公爵になんてことを!」
「へっ…?」
お付きの人が顔を真っ赤にして怒り出した…!
「……す、すみませーーん!!」
私は思わず走ってお店に逃げ込んだ…!
店に戻ると、一部始終を見ていたニイナが青ざめた顔をしていた。
「クレア……アナタ何してるのよ……」
私は頭の中がグチャグチャのまま、
「ど、どうだった?……公爵様は…。」
と、ニイナに尋ねた。
「ぼ、呆然としてたわよ………。」
「そ、そう………。ねえニイナ、私、今日早退していいかしら………?」
「ど、どうぞご自由に………。」
私は帰り支度をまとめ、家に帰ることにした。
「お、お疲れさまでした………。」
「クレア………ゆっくり休んでね……。」
私はヨロヨロと倒れそうになりながら家路に着いた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「オイ!やったな!!」
……私がベッドで寝込んでいるとシャルルがご機嫌で登場した。
「ねぇシャルル…。」
「ん?どうした?」
「シャルル、百発殴っていい…?」
私はベッドから起き上がる気力すらなかった。
「なんでだよ!完璧だよ!カンペキ!!」
「ど、どこが完璧なのよ…。あー終わった。終わったわー。」
頭が痛い…。頭が痛いっていうか、もはや『頭痛が痛い』。
「あのなあ クレア。俺、だれだか分かってる?恋愛成就の魔法で出てきたドラキュラ国の王子だぜ?あれでいいんだよ!」
シャルルは満足そうに言った。
「ど、どこがいいのよ!私、レオン公爵様に変なヤツだと思われたわ!わーん!」
「……ホント、俺のこと信じてないな。じゃあレオンが今、どんな事かんがえてるか教えてやろうか?」
シャルルは頭をポリポリとかきながら言ってきた。
「公爵様が…? ど、どんな事よ…。」
私は一応聞いてみた。
「『公爵という身分で暮らしてきて、あんな風にあいさつされたの初めてだな。なんか新鮮だな。あの女の子、なんか興味あるな。』……こんな風に考えてるはずだ。」
「……そんな事あるわけないでしょ…。お付きの人、すごい怒ってたし…。」
私は怒っていたお付きの人の事を思いだしてブルブルと震えた。
「お付きのジジイは関係ないだろ。問題はレオンだ。じゃあ試しに明日、レオンの目の前に出て行ってみ?きっとレオンの方からクレアにあいさつしてくるはずだ。間違いない!」
シャルルは自信たっぷりに言ってきた。
「公爵様から…?なんでそんな事が分かるのよ…。」
私が口をとがらせながら言うと、
「アイツは公爵だろ?俺は王子だから分かるんだ。あっ!ちなみに、公爵より王子の方が身分は上だからな!」
シャルルはケラケラと笑っていた。
「……分かったわ。とりあえず今日は寝かせて…。」
私は睡眠不足もあってか、そのまま泥のように眠った…。
〜 次の日 〜
「おはよー、ニイナ。」
「あっクレア!大丈夫?」
「う、うん。ヘーキヘーキ。昨日はごめんね。」
私はとりあえず、仕事に集中することにした。
そして12時…。
「…ク、クレア、公爵様が歩いてるわよ。昨日の事、あやまったほうがいいんじゃない?」
私はあやまるにしても、どうすればいいか分からなかった。
すると、公爵様が私に気づいた…!
「や、やばい……!」
私が口をパクパクしていると、公爵様がコッチに歩いてきた…!
そして…!
「やあ。……ええと、名前は?」
……え!?公爵様から話しかけてきた…!?
「ク、クレアです……!」
「そうか…ごきげんよう、クレア。今日は野犬に噛まれないように気をつけるよ。」
「はっ!?そ、そうですか…!?……ははっははっ………!!」
(公爵様が話しかけてくれた!?しかもちょっと微笑んでる!?)
お付きの人はコッチをジィーッとにらんでいたが、公爵様はそう言うと、
「ではまた。クレア。」
と言い、そのまま歩いていった。
私はしばらく呆然としていたが、ハッと我に返り、お店に戻った。
店に戻ると、こちらも呆然としたニイナが立っていた。
「公爵様…すごいしゃべってたね…。」
私も
「ね…。」
と言った。
「…なんかクレアがうらやましいかったわ……。」
「そ、そう………?は、はは……。」
……シャルルが、言った通りの展開になった…。
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