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10/11

【第10話】決闘

……結局、夜遅くまでシャルルを探したが、見つける事はできなかった。


…明日の12時が決闘の時間……。


私はシャルルがその場に現れてくれるのを期待した……が、同時にそれは公爵様との決闘を意味する。


…私はどうすればいいのか分からなくなっていた。



〜 決闘当日 〜


…街は朝からあわただしかった。


あれだけの騒ぎになったのだ。ウワサがウワサを呼び、今日の12時には街中の野次馬達が決闘の場に集まるのは間違いなかった。



…私は早朝から、昨日に引き続きシャルルを探した。


…決闘の場にはすでに、人だかりが出来始めていた…。


その人だかりは、私にはまるで他人事のように感じた。


「…シャルル…!」



10時…。



「……すみません!タキシード着た男の子、見なかったですか!?」


「……すみません!キバの生えた男の子、見なかったですか!?」


私は街中の人に尋ねて回った。



11時…。



「……すみません!この間、公爵様と もめてた男の子、見なかったですか!?」


「シャルル……!シャルル!」



…だが、シャルルの所在につながるような目撃談は聞けなかった。


……結局、昨日と同じく、シャルルを見つける事は出来なかった。



そして決闘の30分前…。


私は決闘の場へ向かった。



決闘の場は、すでに大勢の人々で囲まれていた。



私はシャルルには来て欲しいような、来て欲しくないような、複雑な気分だった。



………お城の方から公爵様が出てくるのが見えた。


…公爵様は決闘用の甲冑に身をまとっていた。



……そして、腰には細剣の『レイピア』が装着されていた。



……公爵様の『いでたち』を見た観衆からは、歓声が上がっていた…。


『うおおおお!……』

『どうなるんだ!?……』



…私は公爵様から少し離れた位置に場所を取った。



(公爵様…本気なの?……シャルル……やっぱり来ないで…!)



〜 決闘10分前 〜


決闘の場には、ほとんどの住民が集まっていた。



『あの女の子を巡っての決闘らしいわよ!…』

『へー!それは見ものだな!…』



…野次馬達の声が聞こえてくる。


でも、今の私にはそんな事はどうでも良かった。


シャルルが来るのかどうか……。

シャルルがまだ、この街に居るのかどうか……。

シャルルがまだ、『存在』しているのかどうか……。


それだけを考えてた。



5分前…。


3分前……。




………シャルルが来る気配はない。



『なんだ?この間の男の子、来ないのか?……』


周りもザワつき始めていた。



…公爵様は小さな椅子に腰をかけたまま、表情を変えずにいた。




そして、約束の12時になった…!





………しかし、シャルルは現れなかった。



『なんだよ!期待はずれだな!……』



…無責任な観衆の声が漏れる…。




……すると、公爵様はゆっくりと立ち上がった。


そして、私に向かって言葉を発した。





「クレア、見ての通りだ…。彼は来なかった。」


「……はい。」


「早速、城に戻って今後の準備をする。キミも来てくれるか?」





「…………!」


………私は両手をギュッと握った…!


そして…!



「あ、あの!公爵様……!」



「うん?どうした?」



「あの、私………!」






その時………観衆から歓声が上がった……!



(…え?)






「………フゥ。間に合ったか……。」





「……………シャルル!!」




シャルルが決闘の場に現れた!



『うおおおお!』

『決闘相手が来たぞ!』



周りの観衆達が盛り上がっている。



「…シャルル!…まだ居たのね!」



私は何より、シャルルに会えた事が嬉しかった。



「ああ。……クレア、俺を呼び出した時、『魔法のレシピ』と『魔法の鍋』を使ったんだろ?」



「…え?魔法のレシピと魔法の鍋……?」



…確かに、一番最初、『恋愛成就』の魔法のレシピを見つけて、『魔法の鍋』を使って、シャルルを呼び出していた。



「それを全部 粉々に壊してたんだよ!魔法で戻される事がないようにな!」



「え!……そんなこと……」



「粉々に壊す事で、何がどうなるかは分からない……。でも、何もしないで戻されるよりはマシだ!」



……そうだったんだ…。それで……それを壊し終わってから来てくれたんだ……危険な決闘の場に…。



すると、



「……よく来たな…シャルル。…」



公爵様がシャルルに近づいた。



「…何を言ってるのかよく分からんが、ここに来たからには分かっているだろうな…。」



公爵様の目は『ヤル気』の目だった。



「レオン……。」



シャルルと公爵様は にらみあっていた。



「…ジイヤ。彼に甲冑とレイピアを…。」



公爵様はお付きの人に、シャルル用の甲冑と細剣の準備をするよう促した。




「おい、レオン…。」


シャルルが公爵様に話しかけた。


「なんだ…?もう遅いぞ…」


公爵様は決闘用の仮面をかぶる準備をしていた。




その時、シャルルはポケットから白い手袋を取り出した。


先日、公爵様が決闘を申し込む時、シャルルに投げつけた手袋だった。



シャルルは、その手袋をポンっと公爵様になげた。


「……どういうつもりだ?」


公爵様は不思議そうにシャルルをにらんでいた。



「おいレオン、俺は……俺は決闘を受けない。」



「……………!」



周りの観衆は さらにざわめき出した。




「……何を言うかと思えば…。ではシャルル君、キミはここから『去る』という事でいいんだね?…今後、クレアに近づく事は無いという事だな?………手袋を返しに来てくれたようでありがとう。」



公爵様はシャルルから受け取った手袋をお付きの人に渡した。




「…なあレオン、なんで俺が決闘を受けないか、分かるか?」


…シャルルが公爵様に言った。


「……?………私を恐れているからだろう?」


公爵様は少しあきれたような表情で答えた。



「レオン……なんでお前はいつも自分の事しか考えられないんだ?」


「……………どういう意味だ?」



シャルルが話し出すと、周りの観衆は静かになっていた…。



「もし、ここで俺とお前が決闘をしたら、どうなる?」


シャルルは再び尋ねた。



「……おそらく君は怪我を負う事になるだろう。…場合によっては、怪我だけでは済まないかも知れない。」


公爵様は厳しい表情をしている。



「そうか……。なあレオン、それって何のためなんだ?」


「……?……公爵家の誇りのためだ。決まっているだろう。」


公爵様はさらに厳しい表情をした。



「じゃあレオンに聞くが、もし決闘をして、お前の言う通り、俺が怪我だけじゃすまないような状態になったとして、それでクレアはどう感じると思う?」



「………。」


公爵様は黙っていた。



シャルルは続けた。



「少なくともクレアは、いつもお前の『気持ち』の事を考えていたぞ?


『どうやったらお前に気に入ってもらえるか』

『どうやったらお前に失礼がないか』

『どうやったらお前に喜んでもらえるか』


だがお前はどうだ?何もかも全部、お前自身の為の事しか考えてねーだろ?」



…公爵様の顔がどんどん険しくなっていく。


「そんな訳ないだろう!私は常に、クレアの事を考えている!」


公爵様の声が大きくなってきた。



「じゃあ何で決闘なんか申し込んだんだ?それがクレアの事を考えた結果なのか?さっき、公爵家の誇りのためだと言ったじゃねーか!」


シャルルの声も大きくなる!



「それに……それに!何でクレアがパンの耳のラスクを持っていった時、その場で食べてやらなかったんだ!?」


「なんで!わざわざ料理を作りに来てくれるクレアの送り迎えをやらなかったんだ!?」


「なんで!お前の家で一緒に食事をさせなかったんだ!?」


「この間、お前はクレアの家柄と素性について、俺に聞いてきたよな?それは何が関係があるのか?自分に相応しいかどうか分からない人間は、知り合いに紹介できないっていうのか!?」


「お前は……お前はなんで、もっとクレアの気持ちを考えてやることが出来ないんだ!!」



シャルルの熱弁が街中に響き渡った。


周りに言葉を発する者は一人も居なかった…。



「俺はクレアの事が好きだ!大好きだ!だから、クレアが嫌がるような事はしない!クレアを悲しませるような事はしない!ずっと…ずっとクレアに側に居て欲しいからだ!」


そして、



「……それが……それが『誰かを好きになる』って事じゃねーのか!!」



…ほとんど絶叫に近い、情熱と想いの こもった言葉だった。


周りの観衆も固唾を飲んで見守り続けていた。




「……言いたい事はそれだけか?…シャルル。」


…公爵様の顔は、今まで見た事のないような、まさに『鬼の形相』だった。


「これだけの観衆の前でこれだけの侮辱を私に与えたのだ…。どうなるか、分かるな…。」



レオンは腰のレイピアに手をかけ、細剣を抜いた!



『キャーーー!』

『ワーーーー!!』



周りの観衆の中には逃げ出す者もいた!



そしてすぐさま……!



「シャルル!覚悟!」



レオンはシャルルに襲いかかった!



「やめて!!!」


私は叫んだ!



だが、その声がレオンに届いている感覚はなかった!




レオンのレイピアがシャルルの頭上に振りかざされる!




「くらえ!」




その時!




なんと!シャルルはヒラリと剣をかわした!



レオンは驚いた表情でシャルルを見つめた。



「……ほう。……なかなかやるようだな。」


レオンはそう言うと、ニヤリとわらった!



すると…



「…先に言っとくが、お前じゃ俺には勝てないぜ。なんせ、俺はドラキュラ国の王子だからな。」



シャルルは いつものお決まりの文句をつぶやいてた。



レオンは再び鬼の形相に戻り、さらにシャルルに襲いかかった!



「とりゃーーー!!」



…シャルルも身構える!




「……やめて!!……もう、やめて………。」


私は どうにか なりそうだった。



私の心臓の鼓動が、私の全身に響き渡る……!



『トクンッ!……』

『トクンッ!……』



レオンがシャルルに続けざまに襲いかかる!



「やめてよ……やめて……」



『トクントクンッ!!』

『トクントクンッ!!』



心臓の鼓動はさらに早くなる!!




レオンはレイピアを振り回す!シャルルは それをかわしていく!




そして!





【トクンッ………………………!!】





…私は胸の奥で、何かが 張り裂けた感覚に見舞われた……!





「やめてーーーーーーーーーー!!!」




その時!



身につけていた『魔法のリング』がパリンッと割れた!



そして!私はレオンの方へ手を伸ばした!





「やめてーーーーーーーーーーーーーー!!!!」





その瞬間!私の手の平から、青白く、唸りをあげた、凄まじい波動が飛び出した!!




『ゴオオォォォォォォォォオオ!!』




手から放たれた波動はレオンの方へ向かっている!


そして、波動はレオンに直撃した!





『ドオオォォォォォォォォオオン!!』




!!……その衝撃でレオンの体は宙に浮いた!そして、波動とともに十数メートル吹っ飛んでいった!!




……………。



…周りはシーンとしていた。


…吹っ飛ばされたレオンは、尻もちをついていた。何が起きたか分からない様子だった。


…レイピアは まっぷたつに折れていた。



…シャルルと私も、何が起きたか分からず、呆然としていた。



「ま、魔法のリングが砕けてる……」




『魔法のリング』は魔力を制御するためのもの。


それが壊れ、私は魔力を制御できなくなり、暴走した波動を生み出したのだった。



『シャルルを助けたい』 という一心で…。





「シャルル!!」





私はシャルルの元へ走っていった。



「…クレア……今のは一体……」


シャルルはまだ呆然としていた。



「シャルル…ごめんなさい!私に…私に勇気が無かったばっかりに!…シャルルには いつも迷惑ばかりかけて…!」


私は続けた。


「でも…でも、私に勇気が無くて良かった…!だって、『恋愛成就』の魔法を使ってシャルルと出会えたんだから……!」



…私はシャルルに会えた嬉しさ、今の自分の気持ち、今ならしっかりと言葉に出来る気がした。



「…クレア……。」


シャルルは真っ直ぐ、私のほうを見つめてくれていた。



「シャルルはいっぱい勇気を出してくれた!…私のために…私のためにたくさん…!」



…私は目から涙がたくさん溢れていた。



「だから、今度は私が勇気を出す番!!」



私の頭の中は、もはやシャルルの事だけだった。



そして…




『タッ…………………!!!』




私はシャルルの胸におもいっきり飛び込んだ!!





「私、シャルルがいい………!」


「私、シャルルの事が、大好き!!」





「クレア…!」


シャルルも私を抱きしめ返してくれた!


「クレア!!俺もクレアの事が大好きだ!!」


…シャルルの目にも、大粒の涙が流れていた…!




私はシャルルの背中をギュッと抱きしめた。




「シャルル…。これから…これからも、ずっと私とシャルルとは一緒だから…!!」




私は溢れる涙の中、心の底からの笑顔で、シャルルの胸の中でそう叫んだ!




周りは静寂に包まれていた…。



しかし、しばらくすると……



『うおおあああ!……』

『よかったぞーーー!……』

『おめでとうーーーー!……』

『パチパチパチパチ!……』

『ピィーーーー!……』



……周りの観衆から歓声と拍手、口笛が鳴り響きだした!



…ニイナが私のところへ走ってくる!


「クレア……クレア!…よかった…!」


…ニイナも号泣している。



『ワーーーー!………』

『祝杯の準備だーーーー………』

『すてきーーーーー!………』



周りはお祝いムード 一色に包まれた。



◇◇◇


「……ジイヤ…。」


「……はっ。…レオン公爵様…。」


「……直ちに転居の準備をする…。」


「……は!?し、しかし……」


「……私はもう、この街には居られない…。」


「…承知いたしました…。」



「シャルル……私はキミのような、まっすぐな気持ちにはなれなかった…。私は、クレアには相応しくない男だったようだ……。」


レオンは城の方向へ歩いていった。


◇◇◇



…二人を囲んだ歓声はいつまでも鳴りやまなかった。



私とシャルルは何度も笑い合い、何度も抱擁をした…。



読んでいただきありがとうございます(^-^)

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