【第1話】『恋愛成就』の最初の一手
「この魔法が禁断だって事は分かってるの…。でも、ごめんなさい…!公爵様…!」
私は封印されていた『恋愛成就』の魔法のレシピを開封して、それを使おうとしていた。そう、憧れの公爵様とお近づきになるために…!
「あとはこのコウモリのしっぽを調合するだけ…。この魔法を使ったらどうなるんだろう…。痛いのとかは嫌だな…。」
私はコウモリのしっぽを魔法の鍋の中に入れた!
『ブワワワワワワ……!』
すごい煙が立ち上がる…!
「ど、どうなるのかしら……!」
そのとき!
『ブシュワーーーー!』
「きゃあっ!」
さらに煙が立ち上がる!
『………………………!』
『………………………!』
『…………………………!!』
「……………ったく、誰だよもう…。」
「え!?………人が出てきた…!?」
煙の中から現れたのは、タキシードで身をまとった、キレイな顔をした容姿端麗な男の子だった。
「……へっ?」
私はあっけにとられた。
魔法を使ったら煙が立ち上がり、煙の中から男の子が出てきたのである…!
「…オマエだな。」
男の子は私を見つけた。
「……へっ?」
私はまだ状況が飲み込めてない。
「『へ』じゃねーよ。使ったろ?魔法。」
「はっ………はい………!」
私は訳もわからず返事をした。
「だから俺が出てきたんだよ。もしかして、何も知らずに魔法使ったのか?」
「えっ……いやっ……!」
……どうやら、魔法は成功?しているようだ。
「あ、あなたは……。」
私はおそるおそる尋ねた。
「俺?俺はシャルルだ。じゃあ早速話を聞かせてもらうぞ。」
「シ、シャルルさん…。ち、ちょっと状況を整理させてください……。」
私は展開の速さにクラクラしていた。
「俺も忙しいんだよ!アンタ、誰かと恋愛を成就させたいんだろ!?だから早く話を聞かせろって!」
……なんかさっきから好き勝手言われてる。
「だ、だから!状況を整理させてって言ってるでしょ!とりあえずそこの椅子に座って!お茶くらい出すわよ!」
…私は自分のペースを取り戻そうとした。
するとシャルルはキョトンとした様子で椅子に座った。
「…ホントに何も知らずに魔法を使ったみたいだな。じゃあ説明してやるよ。俺はアンタの恋愛を成就させるために呼び出されたんだ。」
私はシャルルの前に紅茶を出した。
「アナタが恋愛を成就させる…?どういう事?」
シャルルは紅茶を少しすすった。
「俺の言う通りに動くんだ。そしたら恋愛は成就する。アチチ…!」
「アナタが指南する通りに動けばいいって事?」
私も椅子に腰をかけた。
「そそ。よく分かってるじゃん。」
シャルルはニコッと笑った。
………シャルルの口から長いキバが2本出ていた。
「凄いキバ……!」
私が思わず口にすると、
「ああこれ?そそ、俺、ドラキュラだからね。ドラキュラ国の王子なんだぜっ。」
シャルルはニュッと長くのびているキバを私に見せてきた。
「……もしかして、血とか吸うの…?」
私は体をのけ反った。
「吸わねーよ!いつの時代のドラキュラだよ!」
シャルルはケラケラと笑っていた。
「…ドラキュラの時代の流行なんて知らないわよ。」
なんかつかめない奴…。
「と、とりあえずアナタの言う通りに動けば恋愛が成就するって魔法なのね…?」
私が確認すると、
「そそ。俺、普段はドラキュラ国の王子として仕事してるんだけど、この魔法で呼び出されたら恋愛を成就させないと戻れないんだ。」
「そ、そうなんだ…。」
なんだか不思議な魔法だなあ。
シャルルは紅茶を飲み終わると、
「で、落ち着いた?じゃあ話を聞かせてよ。」
と、キバをハンカチで拭きながら聞いてきた。
「あっ…!じ、じゃあ……。」
◇◇◇
…私の名前はクレア。
普段は街の回復魔法のお店で簡単な怪我や病気を治してあげる仕事をしている、どこにでも居るフツーの白魔法使い。
そんなフツーの私が公爵様と出会ったのは1ヶ月前の事だった…。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
〜 1ヶ月前 〜
『なんか今日は街ゆく人が多いなあ…。』
すると同僚のニイナがひょっこり顔を出してきた。
『あれ?クレア知らないの?今日、丘の上のお城に新しい公爵様が引っ越してくるらしいわよ!』
『そうなんだ。もう何年も誰も住んでなかったお城なのに…。てか、公爵様も引っ越しとかあるんだ。』
『そうそう!それでお付きの人とかも沢山来てて!ウワサによると、カッコよくてすごく素敵な公爵様らしいわよ!』
ニイナは興奮気味に語っていた。
『へ〜そうなんだ。ま、私には関係なさそうだけど。さっ仕事に戻りましょ!』
私はニイナを両手で店の中へ追いやった。
しばらくすると…。
『あ!公爵様だわ!』
ニイナの声がした。
『ハイハイ。分かったわよ。』
私は帳簿の整理を続けていた。すると…。
『きゃあ!公爵様が…!!』
ニイナの悲鳴が聞こえた。
私は驚いて店の外へ出た。すると…。
『う…うぅ……』
身なりの立派な男の人が右足をかかえてうずくまっていた。
『あ、あれが公爵様…!?』
『野犬よ!野犬に脚を噛まれたの!』
街の向こうで公爵様のお付きらしき人が野犬を追いかけている。
『大変……!』
私は公爵様の元へ夢中で走っていった!
そして公爵様の足下でかがんだ…。
『う…うぅ……。キ、キミは……?』
『お静かに…!……キズは浅いわ。』
私は回復の白魔法を唱えた。
『祝福を…』
その瞬間、周りがポワンと白く光り、野犬に噛まれた傷口がふさがっていった。
『こ、これは白魔法か…。驚いたな…。』
『フゥ…。これで大丈夫です。』
私は一安心した。
『…アナタのおかげで助かった。ありがとう。』
『いえいえ…………はっ!』
(す、素敵すぎる……!)
公爵様と目が合った。ニイナから聞いていた通りの『カッコ良さ』だった。
野犬を追い払ったお付きの人も戻ってきた。
『レオン様!大丈夫でしょうか!』
『あぁ…。こちらの方が助けてくださった。』
(はぁ〜〜!レオン様というのね…!お名前も素敵!)
『さようで御座いましたか。でもどうやって…。』
『この地域ではまだ白魔法が残っているらしい。』
『ほぉ!それは珍しいですな!』
……白魔法とかフツーだと思ってたけど、地域によって違うみたい。
レオン公爵は、
『お代はこれで足りるかな?』
と、金貨を2枚出してきた。
『こんなに…!こんなに受け取れません!』
私がそう伝えると、
『いや、ご遠慮なさらず受け取ってくれ。』
と、私の手にギュッと金貨を握らせてくれた。
(はぁ〜〜素敵!素敵すぎるっ!)
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
…………。
「………それが公爵様との出会いだったの。」
…私は思いだしながらニヤけてしまっていた。
「ヘイヘイ、大体分かったわ。」
シャルルは飽きたような口調で言った。
「で、それからレオンとは?」
シャルルが聞いてきた。
「そ、それからは………それからは特に何も…。」
私はうつむいた。
「えっ?それだけ?何もないの?」
シャルルは逆に身を乗り出してきた。
「ええ…。何もないわ。それからはあいさつ程度よ。」
「そんなのでよく俺を呼んだな。」
シャルルはあきれたような口調で言った。
「別にアナタが出てくるなんて思ってなかったわよ…。」
痛いところを突かれた私は、こう言い返すのが精一杯だった。
しばらく沈黙が続いた……。
「よしっ!」
シャルルがパンっとひざをたたいた。
私はビクッとし、
「な、なに!?」
と返した。
「じゃあ、今から俺が言う事を明日しろ。」
突然の提案に私はゴクリと唾を飲み込んだ。
「う、うん……。」
「いいか、それは…。」
【『あらっ!レオン公爵!元気!?もう野犬には噛まれないでねっ!』って言いながらレオンの背中をバンバン叩く。】
………これだ。
「え?………。」
「えーーー!!無理に決まってるでしょ!!」
私は予想外の指南に思わず大声を上げた。
「『無理』とかじゃなく、それをやるんだよ!やらないと俺が出てきた意味ないだろ!」
「いやいや!アナタ、頭おかしいんじゃない!?」
私は思わず口が悪くなった。
「なんでそんな事言われなきゃいけないんだよ!呼んだのはオマエだろ!」
シャルルも言い返してきた。
「てか、やらないと何も始まんねーぞ!その為に俺が居るんじゃねーか!」
そして痛いところを突いてくる。
「…分かったわよ!確かに、『恋愛成就』の魔法を使ったのは私よ…!やればいいんでしょ!やれば!」
私も半ばヤケクソ気味になった。
「分かってるじゃん。じゃあ早速、明日な!」
シャルルはケラケラと笑うと、そのまま玄関を出て行った。
「はぁ〜〜…。何なのよ、もう……。」
結局その夜、私はほとんど眠れず、次の日となった…。
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