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【書籍化】TS剣闘士は異世界で何を見るか。  作者: サイリウム
迷宮編

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78:世界観ブレイカー



というわけでようやく聖都に到着したわけですが……。いや、正直嘗めてたわ。聖都。



「おぉ……。」


「わぁ……。」



これまで基本帝都の建造物とかしか見てこなかったわけでさ。あんまりビックリはしなかったわけよ。確かに『うわ現代じゃもう残ってない様な建造物いっぱいある……!』って昔は驚いたものだけど、『これぞ異世界!』って感じの驚き方はしなかったのよね。まだ常識的な、というか理解可能な範囲内という感じだった。


まだこの世界古代帝政ローマの時代だし、正確な年数は前世の世界と暦が違うので何とも言えないが大体4世紀ぐらいの文化レベル。確かに魔物素材や魔法による部分的な発展や、神のせいで加速しまくっている菓子・料理系の技術ツリーは現代人もびっくりと言うレベルではあるんだけど、建造物はそこまでじゃなかった。



(けどここは……、ほんとに異世界だな。)



タイルで完全に舗装された固い道路に、見渡す限り真っ白な建物たち。そして何よりもこの町の中央に見える純白の逆さピラミッド。階層ごとに植物による彩りが為されていて、内部が庭園化しているのか滝のように水が吐き出されている箇所がいくつも見える。しかもそのピラミッドの最上階から何かしらの青い線が町を覆うように伸びていて、まるで電気が流れているかのように水色の光が絶えず流れている。


いや、ほんとに今異世界を実感してる。聖都、神の都と呼ばれるだけあるな……。この世界マジであの神しかいないみたいだし、話を聞いている感じ全人類どころか全生命体が信者なのだろう。そんな信仰を集める集団が本気出して町を作れば……、こうなるってわけか。すっごいや。



「娯楽がないって言ってたけど……。」


「これ見れただけで十分ですね、これは。」


「帝都の城やヘンリ様のお屋敷見た時も驚きましたけど、聖都はまた……。」



格が違うよねぇ。


馬車から降ろされた場所はあの中央にある逆ピラミッドへと続く大通りなんだけど、確かに聞いていた通り娯楽というかそもそも店がない。多分だけどおそらく全てただの住居。普通の町ならこんな交通の便がいい通りなんて大きめの商会が独占しているようなもんだけど、見渡す限りすべての建物が統一されてるし、サイズも高さも一定だ。町全部が一つの美術品とかそういうノリの都市だこれ……。



「来てくれ、って言われてた時間まで結構あるし……。ちょっと観光していこうか。あれだけおっきな目印があるし、迷うこともないでしょう。」


「ですね!」


「あ、でしたら行ってみたいところがあるのですが……!」



そう言いながら懐からメモを取り出すマリーナ、結構色々書き込んでいるし事前に調べていたのだろう。


前世みたいな写真一杯の旅行雑誌とかこの世界にないし、適当に歩くだけでも楽しいかなぁと思ってNO調査でここまで来ちゃった私だけど、マリーナは違うみたいねぇ。えらいえらい。え、なに? すっごく綺麗な女神像が祭られてるお堂があるの? あとなんかよくわからん塔がある場所がある?



「と言っても正確な場所は解らないのですが……。」


「大丈夫大丈夫、私たちだけだったらあてもなく彷徨うだけだったろうし、目的決めてくれて助かるよ。ね、アル?」


「ですね、それに現地の方に聞けばある程度の場所は解るでしょうし……。あ、ちょうどあそこにいますよ! ちょっと聞きに行きましょう!」



メモを持っていたマリーナの手を取り、それを強く引きながら一緒に聞きに行こうとするアル。


あ~、仲良しでいいですなぁ。最初はちょっとぎこちない感じだったのに、今ではあんなにいい顔するようになって。やっぱ一緒に修行する環境が良かったんかな? あぁ、劇の準備のせいでその過程をあんまり見れてないのが悔やまれる……!



(これからは見逃さないようにしないと。)



そんなことを考えながら彼女たちが道を聞きに行ったここの住民らしき人の方に目を向ける、帝国でも見たシスター服の上から何か羽織っており、その身に着けている装飾品からまぁまぁ高めの階位の聖職者であることがわかる。というかあんまり疑問に思わなかったけど、この世界の聖職者の服かなり進んでるよね。


みんなそれが普通みたいだからあんまり気になってないみたいだけど、普通の人が時代相応のローマスタイルなのに対して聖職者は中世以降のスタイルをしていることが多い。まぁどう考えてもあの神サマのせいだろうが、もうちょっと時代感とか整えた方がいいんじゃないの? ドラマとかだったら『時代考証の人息してる? リストラされた?』とかで話題になる奴だぞこれ。


まぁ異世界なわけだしあんまり深く考えるのはよくないか、そんな風に考えながら私もその人に向かって足を進めようとすると聖職者である彼女の手に明らかに酒瓶のようなものが握られているのが見える。


……ん? ってアレ帝都でも有数の蒸留酒メーカーの50年ものじゃねぇか! あれだけで家買える奴だぞって、それを呷ったァァァ!? ストレートでぇ!? 何かで割るのが基本の奴を!? 喉死ぬぞおい!!!



「え、ちょ! おま! って酒臭っ!」


「う~~、ヒック。観光客さんですかぁ? いいですねぇ? あ、ままさんもどうも~。」


「「……師匠(ジナ様)」」



明らかに救難信号を送って来る二人。


なんで朝っぱらから酒飲んでる聖職者いるんですか! 道理で一定以上近づいた瞬間に二人の速度が落ちるわけだよ! めっちゃくちゃ酒の匂いしてるよこの人! たぶん昨日から飲んでる! というかその酒明らかに呷っちゃダメな奴だろ!? 香り楽しめよ! 喉に流し込むなぁ!?



「おぉ~~、解る人ですかぁ? ままさんも好き者ですねぇ、どうです? のみますぅ?」


「け、結構です。」


「ざんね~ん。じゃあ私がもらいますねぇ? んっ、んっ!」



私が断った瞬間速攻で自分の口にそれを流し込む彼女、お貴族様ですら滅多に呑めないソレをまるで単なる水のように喉へと流し込んでいく彼女。も、もったいな……。いやそこら辺の楽しみ方は個人の自由だけど、もうちょっとなんかこう。あるでしょうに。あ、あとアルたちは私の後ろに下がりなさいね? 聖職者とはいえこの人完全に酔っててなにするか解らんから。



「それでぇ? 何か聞きたいんじゃなかったですかぁ? あ、ごめんなさい。煙いいです? ひっく、魔道具でそっちに行かないようにするのでぇ?」


「あ、はい。」



そう言うと懐から管の様なモノを取り出し、腰に巻かれていた球体の物体。おそらく魔道具へ管を差し込む。その瞬間組み込まれた魔法が起動し、多分風の結界のようなものが生成された。それを確認した直後、慣れた手つきで煙、煙草を吸い始める彼女。あ、これ水の音するし、シーシャって奴か……。え、お前ほんとに聖職者?



「聖職者ですよぉ? 一応聖女見習いなので"司教相当位"な感じです~、まぁまぁ偉いんですよぉ? お金も貰えるほうなので昨日溜め込んでたの全部使ってコレ買っちゃいましたぁ。うひぃくっ!!!」


「あ、そうなんですね。こ、ここに行きたいんですけど解りますか?」



とりあえずかなり酔いが進んでいるようなので話を半ば無視しながら、マリーナが渡してくれた地図を見せる。


というか帝都で何かとお世話になっている司教様と、この色々終わってるっぽい聖職者の方が一緒の階級なんだね。レトゥスさんのことを考えるとほんとに聖職者か? って疑問に思っちゃうんだけど、私達の知るこの世界の神がアレだから……。まぁあの神あってこの聖女見習いあり、と言いますか。


ともかくこの人から漂って来る酒とタバコの匂いはひどい、風の魔法突破して匂って来てるから相当だ。普段は真面な人なのかもしれないが、確実に後ろ二人の教育に悪いので早く退散したい……。



「おぉ~! ここいいところですよぉ? お堂は結界と神聖魔法で毎日清めてていい感じですしぃ、塔はなんでそこにあるか誰も解りませんけど、なんか触ると光るので楽しい……ッ!?!?!?」



自分の住む町のことのおかげか、それとも聖職者としてそれらの場所に誇りがあったのかはわからないが、楽しそうに話し始める彼女。気分の上昇と共に口が回る速度も上がるが、それがダメだったようだ。急に顔全体が真っ白になり、目を白黒させながら口を押さえ始める。


あ、これダメな奴だ。背で隠していたアルとマリーナを抱え『加速』を起動。彼女から距離を取り、着地と共に二人の目を手で隠す。



「っ! ぉおろろ【以下自主規制】」



あぁ、レインボー……。



「ちょッ!!! テクラ様! 何やってんのですか!?」

「あぁぁああああ!!! 掃除するの私たちなんですよぉ!」

「なんでこう、酒はいるとポンコツ化するかなぁ!!!」



彼女が道端に胃袋に入っていたものを盛大にぶちまけた直後、近くの通りにいた他のシスターの方々が声を上げながら走り寄って来る。ちょうど複数いるし……、お任せして良い感じ? というかいいよね?



「もちろんですとも! ウチの者がマジすみません!」

「観光客の方ですよね? マジでヤバいのコイツだけなんで! 他キレイなんで!」

「た、楽しんでくださいってテクラ様どんだけ飲んでるんですか!?」



「うぅ……、有り金ぜんぶぅ。」



「ぜ、全部ってもしかしてこれまで頂いて来たお給金全部……?」



「…………うん。」



……確か聖職者の人って結構高給取りだったよね。清貧を重んじてるからもらった瞬間にその大半を教会の運営のために寄付するっていうよくわからん生態してるとは聞くけど……。それをしてない場合かなりの額に……。



「ちょ、おま! アレなんかあったときのために貯めて置くって言ってた奴じゃないですか! 家どころか一生遊んで暮らせるような額になってましたよね! テクラ様寄付全然しないし!」


「だって私のお金だもん、寄付する方がおかしいもん、狂ってるもん……! お仕事ちゃんとしてるからもらっても別にいいんだもん……!」


「まぁそりゃそうですけど、それ全部一夜で使うとか頭おかしいんじゃないですかあんた! というかコレ滅茶苦茶高い奴! ずりぃ! 私にも一口欲しかった! ってかなんでこんなアホなことしてるんですか!!!」


「だって、だってぇ……! 聖女様によびだされちゃったぁぁぁあああ!!! 絶対破門されるんだァ! 酒もヤニもやめられないから追い出されるんだァ! 無職になっちゃうんだぁぁぁ!!!」


「自業自得じゃねぇですか! ほ、ほらもしそうでも私ら一緒に謝ってあげるから! まだ続けられるように嘆願してあげるから? 泣き止みましょう? ね? ね? 明らかに聖女候補の方が晒していい醜態じゃないですからね? ね?」


「どんな資料調べてもお酒もたばこも禁止されてないのにぃ!!! みんなみんな私のこと白い目で見て! 早くやめろとかいうんだぁ! 私なんか聖女見習いに相応しいどころか聖職者の汚点とか言うんだぁ! 聖女様は『そんな貴方が好きよ、いいじゃないお酒。』とか言ってくれてたけど見限られちゃったんだァ!!! うわぁぁぁぁぁん! もうヤケ酒するぅ!!!」


「あ、おバカ! やめっ!」


「んっ! んっ! んっ……、ッッッ!!! おげ【以下自主規制】」



「「「あぁぁああああ!!!」」」











「なんか、こう。聖職者の方々のイメージが崩れる気がします。」


「マリーナ、多分アレ特殊な奴です。例外です。……まぁ飲めるようになってもお酒は程々にしておこうって教訓にはなりましたね……。」


「だねぇ……。」



私も二人からこんな白い眼向けられるのキツいし、程々にしなきゃ。







 ◇◆◇◆◇







まぁ色々あった後。私たちは町の中央にある例の逆ピラミッドへと足を運んでいた。


いやはや、近づけば近づくほどに壮観だね、ここ。ここ以外の建物の高さが均一になっているからかもしれんけど、より大きさが強調されている感じがする。それに、これどうやってバランス保ってるんだろうね。重さを支えているのはピラミッドの頂点である一点のみ。それ以外の支えが何もないのに、建築物として成立しているソレ。



「帝都で調べたのですが、この『ナアタ大神殿』は帝国建国以前からずっと存在しているそうです。」


「「へぇ~。」」



敷地内に足を踏み入れた瞬間、神聖魔法による結界のせいか全身が何か光の様なモノに包まれている感覚がやって来る。やっぱり神の都ってだけあってそこら辺の神聖さとか色々やばいんだろうなぁ、と考えながらマリーナの説明をアルと一緒に受けていく。


マリーナもアルと同じこの世界の現地民で、あの神の信仰者。結構信心深い方だったみたいで色々と調べてた知識を披露してくれる。一生に一度は来たい場所、ってことみたいだし気合入れて調べてたのかな?


アルも昔は彼女と同じくらい、もしくはもうちょっと控えめだけどちゃんとした信者ではあったんだけど、"例の事件"以降ちょっと信仰の形が変わったことが見て取れる。まぁ自分の信奉してる神がプリン取られて激怒して殴り込みに来てたらまぁ……、ね? 仕方ないのかもしれない。



「上に行けば行くほどその神秘性が深まっていくらしく、大司教様や枢機卿様でも入れないような場所もあるんですって。つまり聖女様だけしか入れないとってもすごい場所……。一度見てみたいものですよね。」


「ん~、多分頼めば見せてくれると思うよ。」


「……何回も聞いてますけど聖女様とどんな関係なんですかジナ様。」



どんなって……、気軽に愚痴を吐き合える仲?


あとこの前聞いたけどその入れない区画、たまに神が遊びに来て寝転がってたり地上に仕事しに来てる天使たちが休憩できるような仮眠室になってたりするみたいだから入ろうと思ったら入れる……、ってことはあんまり伝えない方がいいか。神が"あぁ"だから一部の天使が過労死しかけててむっちゃげっそりしてるって話するのも酷だろうし。



「なんだろうねぇ、まぁ奇妙な縁であることは確かかな、っと。そろそろ時間だし案内してもらおうか。」



ちょっと周りを見渡し、目が合った聖職者の方に声を掛けてみる。どうやらあのヤケ酒してたテクラって奴が例外だったようで、こっちの優しそうなつるつるのおじさんは普通の聖職者だ。着てるものが結構豪華だし、やっぱ大神殿に勤めるとなると階位も高くなるんですかね?



「ご婦人、どうかなされましたかな?」


「ちょっとお呼ばれされてまして、ユアおばさんからこれを渡すようにって言われてるんです。」


「聖女様が? 拝見させていただきます。」



聖女様、まぁ二人の時はユアさんとか、ユアおばさんとかって言ってるんだけど。あの人からもらった招待状を彼へと手渡す、最初はちょっとというか、私の呼び方にかなりびっくりしていたおじさんだったが、ちゃんと伝わっていたようですぐに破顔した後、招待状を返してくれる。



「これはこれは、伺っております。ビクトリア殿、アル殿、マリーナ殿ですね。ご案内させていただきます。」


「どーも。じゃあ行くよ二人とも。」


「はーい!」


「……ユアって聖女様のお名前ですよね。大丈夫なんですか?」



大丈夫だって。というかあの人の前で"聖女様"とか言ったら『役職名で呼ぶなんて! お名前で呼んでくださいまし! 銃殺刑にしますわよ!』とかふざけて返してくれると思うよ。面白い人だし。……あ、銃殺刑がそもそも解らんか。ごめん、忘れて。



「ははは、そうですマリーナ殿。その地位から我々も委縮してしまうのですが、とても気さくな方です。お若いころは賭け事にのめり込んでしまい全財産を摩ってしまわれたと言いますしねぇ。」


「あぁ、聞いた聞いた。確か神サマも一緒に賭けてたんでしょ? 二人とも手堅く行ったのに大穴のお馬さんが勝ったせいで二人とも頭抱えて……。あ、ごめん。これオフレコだった。忘れて?」



即座に聖職者のおじさんとマリーナからヤバい目で見られる私。


いやごめんって、これオフレコでって話なの忘れててさ。いやマジで聖女様から聞いた話だから。というか神本人に聞けばわかる話だから……。ほ、ほらアルも解るでしょ? あの神サマそういうことやらかしそうって……、あ、こっちに話振らないでって顔。やっぱ不敬? まぁそりゃそうか。ごめん。わ~すれて?



「ま、まぁとにかく向かいましょう。一般公開されている1階から5階は泡の魔道具による昇降で移動しますが、聖女様のいらっしゃる階層は転移の魔道具による移動になります。ついてきてください。」



ちょっとだけ態度が固くなっちゃったおじさんに連れられて、奥まで移動する。どうやら転移の魔道具、と言っていたが私の目に入るのは明らかにエレベーター、あの豪華なホテルとかでよくある綺麗な奴。というかボタンの配置とか階層の表示方法とかまんまじゃん。いや確かに魔力感じるから魔道具なんだろうけど……。



「ではこちらに乗り込んでいただき、招待状を中の機器にかざして頂ければ魔道具が動き始めますので。私は聖女様のいらっしゃる階層へ入る権限がございませんので、ここまでとなります。」


「案内、ありがとうございますね?」


「いえいえ、では失礼いたします。」




エレベーターもどきに乗り込みながら、彼を見送る。


ちょっと私のせいで気まずい空気になっちゃったので、速攻でエレベーターのパネルらしきものに招待状をかざすと、魔道具が動き始め目の前の扉が閉まる。



「……師匠?」


「あ~、ごめん。やらかした。」


「じ、ジナ様? さっきのは……。」



あ~うん、まぁ神を信仰している身からすればちょっとヤバい発言だったよね。とりあえず私の信仰というか、宗教関連の話はあとで纏めてするとして、さっきの聖女様と神サマの話だけど、ほんとに聖女様から聞いた話だから。これから会うわけだし、雑談のノリで聞いてみれば話してくれると思うよ?


『わ、解りました。』と返してくれたマリーナに笑みを返すと、チン!という音と共にエレベーターもどきが止まる。扉が自動で開き始めたところを見るに到着したみたいだけど、マジでこれエレベーターだな。大丈夫? オーバーテクノロジーじゃない? 今更か?



「えっと、確かこの階の一番奥の部屋で待ってるってことだから……。」



何の素材で出来ているのか全く解らない白い廊下を二人を連れて歩いていく。聖女レベルじゃないと入れない、って聞いていたけど本当に人の気配が全くないね。だけどそれに不気味さは覚えず、逆に安心感を覚える感じ。この神殿に入ってからずっと感じる聖なる力、"聖域"ってやつのパワーなんですかねぇ?



「っと、ここだね。」



そんなことを考えているといつの間にか目的地まで到着していた、一応自身の身だしなみを確認した後に、アルとマリーナの姿も確認する。アルはアルで何度か顔を合わしたことがあるせいか自然体だが、ちょっとマリーナの方は緊張が勝っている感じ。まるで昔ヘンリ様の前に跪いていた時のようだ。


ほらほらスマイル、スマイル! 緊張するのは解るけど程々にね? さ、準備も整ったし、ノックしてもしも~し?



「あ、はーい! 空いてるわよ! ちょっと今手が離せないから勝手に入って!」



そう言われたので、ちょっと疑問に思いながら手を掛ける。色々多忙と聞いていたので、仕事でもしているのかと思いながらゆっくりと扉を開けると……。




「はぁぁぁああああ!?!? 絶対それ当たってないだろ! 判定! 当たり判定しっかりしろや!」


【にゃははははは!!! 当たり判定じゃなくてプレイヤースキルだしぃ? よわよわ~!】


「あァん!? 環境キャラばっか使ってるクソ神に言われたくねぇ!!!」


【はっはーん! なら勝って見ろしー! ゲームは勝敗が全てでしょー!】




彼女の眼の前には明らかに時代錯誤な巨大薄型テレビ、映し出されているのは『GAME SET』という文字。


そして地面に手に持っていたコントローラーを叩きつけ天井から声が聞こえてくるあの神サマに向かって思いっきり罵倒を放つ聖女さま。ヘンリ様よりも高齢に見えるそのお体からは聞こえるはずの無い様なシャウトが、私たちの脳を揺らす。



…………あ~、うん。とりあえず一言。



ここ異世界だよ? 時代も古代ローマ。もうちょっとなんかこう……、あるでしょう?



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