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【書籍化】TS剣闘士は異世界で何を見るか。  作者: サイリウム
日常編

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55/86

55:お授業ですわ


とまぁそんなわけで帝都から少し離れただだっ広い草原に足を運んだわけですが……。



「やほー! ってあなた、また老けたわね。」


「まぁ実際かなりの年よりですからな。」



本来は一応護衛として付いてきている私が先に降りなければならないのだが、真っ先に馬車から飛び出したヘンリエッタ様。彼女が元気よく話しかけたのはお口に真っ白で長々としたお髭を蓄えたお爺さんだった。というかなんか彼の後ろにどこからどう見ても『ゴーレム』みたいな存在が突っ立っているんだけど、アレ魔物じゃないよね? 切り殺さなくて大丈夫な奴だよね?



「みんな~! この人よこの人! ほらウィウィ先輩! 挨拶!」


「ご紹介に預かりました、魔法学園にて"基礎詠唱魔法学"の講師を務めさせていただいております。ウィルウィトス・ソス・テスラと申します。陛下からは男爵の位を頂いておりますが、どうかお気になさらず。……あぁ、こちらのゴーレムは私のですので、心配ご無用。」


「それで私の学園時代の先輩! 優秀な人なのよ~!」



そう言いながら全力でお爺ちゃんの肩を叩くヘンリ。明らかに人体から出る音ではない激しい音が出ているあたり、二人とも身体強化系の魔法を使っていることが解る。旧友に会えたせいか無茶苦茶はしゃいでますね、ヘンリ様。いつもとはまた違った感じ、まるで学生時代に戻ったかのようなテンションだ。



「そりゃそうよ! だって久しぶりの再会が葬式とかこの年じゃよくあるし!」



あ~、うん。なんとも反応しづらい。


正確な数値は解らんけど、確かにこの世界の人間の平均寿命がクソ短いのは理解できる。治癒魔法は体力の回復は出来ても病気の治療が出来るわけではない。治癒魔法が出来る術者の数も限られてるし、医療技術も地球の同時代よりはちょっと進んでる? 程度だから死ぬときは普通に死ぬ。


子供は病気で死ぬ、大人は病気と戦いで死ぬ、老人は病気と戦いとそれまでの無理がたたって死ぬの段階的負荷増加システムだもんね~。だからこそ体力が大事、って話になって来るんだけど関係ないので置いておこう。


ヘンリエッタ様の返答しにくい冗談をスルーしてお爺ちゃんの前に立ち、手を差し出す。



「初めまして、ビクトリアと申します。本日指導をお願いする二人の近接及び実戦の担当をさせていただいております。」


「これはこれは、学園でも貴殿の名は響いておりますぞ。生徒からはウィウィ先生と呼ばれておりましてな、ぜひそのようにお呼びください。」



軽い挨拶を交えながらしっかりと握手を交わす。にしても、まさに古典的な魔法使い、って風貌だ。年代物だがしっかりと手入れされたローブに大きなトンガリ帽子、長い木の杖を持ちお口に真っ白なお髭を蓄えたお爺ちゃん。正統派ファンタジー映画に出てきそうな人。


話には聞いていたけれど、どこからどう見ても『お爺ちゃんの魔法使い』って感じね。



「あら、そうなのですか?」


「えぇ、えぇ。男女問わず、いえ特に女性の方に人気のようで。あのなんでしたかな? 小さい人形のような……」


「キーホルダーですか?」


「おぉ、そうですそうです。持っている生徒を見かけたことがございますぞ。持っている鞄が隠れるほど付けておりました。」



あ~、デフォルメした私のぬいぐるみキーホルダーね? 元オーナー現プロデューサーと新規グッズ開発の会議した時に、カッコいい系で攻めるか、かわいい系で新規層狙うかで迷って、『こんなに迷うんだったらもう全部作って売る! オーナー決めたもん! もう会議嫌だもん! おうち帰る!』ってなった奴。にしても鞄を埋め尽くすとかもしやそいつ推し活の才能あるな?



「あ、そうだ。二人の教育方針についてのすり合わせなどを後日行いたいなと考えているのですが……。」


「はいはい、理解しておりますとも。実は現在溜まりに溜まった休暇の消化中でしてな。あと三か月ほど帝都にいるつもりなのですが、基本全て空いております。宿の場所はヘンリ殿にお伝えする予定ですので、いつでもご連絡ください。」


「この人休み取らずに、ずっと教室か自分の研究室にいるもんだから半ば学園から追い出されたのよ。」



そう笑いながらヘンリ様が言う。なんでも学生時代から家にも帰らずずっと学園の職員室に質問しに行くか図書室で自習、卒業後はそのまま学園に就職して教師やりながら自分の研究室に籠りっぱなし。十数年前から後進の育成に力を入れ始めて研究室より教室にいる割合が多くなったらしいけど、それでも休みは全くとらない。


学園は国営の施設で、ちゃんと休暇などを取らねば色々問題になってしまう。なのにこのお爺さんは全く休まないものだから運営側としては目の上のたんこぶ。そこをちょうどいい教師役を探していたヘンリエッタ様が目を付け、学園に恩を売ると同時に、ウィウィ先生の希望である『優秀な後進を送り出す』っていう願いを叶えてあげることにしたそうだ。


……相変わらず有能だよね、私の雇い主サマは。



「ささ、立ったままではしんどいですからな。すぐ椅子の用意をいたしましょう。ヘンリエッタ殿? 護衛の方々の椅子も必要ですかな?」


「い~え、この子たちは別件があるからいらないわ。生徒の分と私の分だけでお願い。あ、あと彼女のもね?」


「ほほ。了解了解、では早速。」



彼が何かを唱えながら杖を軽く地面へ叩きつけると、何もなかったはずの地面から土煙と共に何かがせり上がってくる。しかも大量にだ。



「「「おぉ……。」」」



土煙が収まると、私たちの視界に入ってくるのは2セットの学習机と椅子、そして彼の背後からせり上がってきた黒板だった。私の背後にも椅子が浮き上がってきているし、ヘンリエッタ様の方も椅子が生成されている。構造としては石柱の座る部分がへこんでいる簡易なものだが、遠くから見ても綺麗に研磨されているものだということが理解できる。


軽く触ってみるが……、わ。すべすべ。土魔法ってこんなのも作れるんすねぇ。



「ささ、どうぞ座ってください。」



彼の声に従い、目の前の椅子に座る生徒二人。それを確認したウィウィ先生はゴーレムに何かの指示を出し、二人の机の上に何かしらの教材を乗せてくれる。結構な厚みがあるし、アレ一冊で全部収まるタイプの教材かな? というか魔法の授業って何やるんだろ。私ほぼ独学でルーン覚えたし、気になる~!






 ◇◆◇◆◇






「さて、まずは確認なのですが……。お二人は現在どのような魔法をおつかいですかな? 名前順で……、アル殿から。」


「え、あ、はい!」



ヘンリエッタ様の指示で付いてきていた護衛の方々が離れた後、彼女たちの授業はゆっくりと進む。『年が年なので座らせていただきますぞ。』と言いながら自分の席を用意した彼がアルへと話しかけた。


う~ん、なんか授業参観してる気分。



「えっと。ルーン魔法を師匠に教えてもらってまして、それを使ってます。後、火と水に適性があるって言われました。」



最初は少し詰まったが、ちゃんと受け答えできたアル。わ、お母さんうれしいわ!


……とまぁそんな茶番は置いておいて、私は私で仕事をしておこう。今回のご依頼はここにいる全員の護衛だ。ヘンリ様もウィウィ先生とやらも十分戦えるし、アルとマリーナも先日の襲撃の際にその実力を示してくれたが、一番前に出て戦うべきは私だしね~。さっきまで付いてきてた護衛の人たちは『ビクトリア殿がいれば大丈夫やろ。』って感じだったし、ちゃんと見張っとかないと。


ま、ラジオ代わりに講義は聞かせてもらうけどね?



「おぉ、珍しい方式をお使いなのですな。一応私も齧ったことはありますが実際に教えられるのは詠唱のみ、それでもよろしいですかな?」


「大丈夫です!」


「うむ、良いお返事。了解しましたぞ。……では次、マリーナ殿もお教え願えますかな?」


「私は詠唱魔法を、独学にはなりますが家で学んでおりました。属性は風、あとほんの少しですが雷の適性があるとも。」



ほへー、マリーナちゃん雷の適性あったんだ。の割には全然使ってるところ見たことないけど……、今はできないとかなのかね? まぁ風魔法に強いこだわりがありそうだし、『私は風一本でやるぜぇ!』って感じなのかも。


そういえば私の適性って何なんだろね? 一度教会で"才能"を見てもらった時は『魔法? 諦めろ。才能ないぞ。』だったけど一回死んだときにあの神サマから適性貰ったんだよね。でも特にどの属性が使えないとか、この属性が得意とかなかったし……。もしかして全適性があるとか!? キャー! チートよチート! ……厄介なことになりそうだし、"才能"見て貰うの一生やめとこ。



「うむうむ。先にお聞きした内容と間違いないようで。では早速授業を始めていきたいところですが……、まず"魔法"とは何なのか、についてお話させて頂こうかと。」



え、何。むっちゃ気になる。なんかそういうのこの世界の常識っぽくて聞くに聞けなかったんだよね……、私の持ってるルーンの本にも書いてなかったし。というかアレ半分くらい研究論文みたいな奴だったし。ルーンの使用者が少なすぎて手に入る資料がそれぐらいだっていう悲しい本だったからね……。便利やぞルーン。



「魔法とは、自身の体内に宿る魔力や、空気中に漂う魔力を使用して発生させる"奇跡"です。通常人間では為せないようなことや、少し考えればありえないようなことを実現させる。神の奇跡、その劣化ではありますが似たようなことが出来るわけですな。魔力を用いて神が治める世界へと伺いを立て、この世に魔法という現象を出現させる。」



杖を操作し、傍に控えていたゴーレムに黒板へと文字を書かせる彼。座りながらどう授業するんだろ、って思ってたけどそうするんだ。というかそのゴーレム便利やね。……私も作れるかな?



「して、その魔法なのですが……。わかりやすく言いますと、『奇跡のお店屋さん』です。」


「「……お店屋さん。」」



……お店屋さん。




「えぇ、お店屋さんです。"魔力"という硬貨を払い、"魔法"という商品を購入する。より効果の強い"魔法"が欲しい場合、それに見合った"魔力"が求められるわけです。」


「先ほどアル殿とマリーナ殿が教えてくださった属性についてもこちらで説明出来まして、"魔力"という硬貨でも様々な形式があるわけですな。例えば火の魔法を買うとき、まん丸の硬貨であれば三割引き。対して四角の硬貨は扱いにくいから二割増し。人それぞれ得意な属性や苦手な属性があるのは、皆自分の持つ"魔力"という硬貨の形が違うから、というわけです。」


「例えば、私は今動かしているゴーレムのような土魔法を得意としており、あまり大きな魔力を使わず行使できるのですが、逆に氷系の魔法はかなりの魔力を要求されます。理論上『魔力さえあればどの人間もすべての魔法を使える』はずが、実際使えない属性の魔法があるのは求められる硬貨の枚数が自分のお財布、魔力総量よりも大きいのが原因なわけですな。」



へ~、そういう感じだったのね。


にしても『魔力さえあればどの人間もすべての魔法が使える』ね。奴隷になったころ裏の世界で魔力タンクにされて干からびちゃった奴隷見たことあるけど、そういうのに使われてたんだなぁ。……あ、魔力だけど限界まで使っちゃうと普通に死んじゃうから気を付けてね。よくあるRPGみたいに『MP0になれば物理攻撃だ!』は不可能な世界なので。



「ちなみに、先ほどアル殿が使っていらっしゃるといったルーン魔法ですが、こちらは詠唱魔法とかなり違います。アル殿は詠唱魔法への理解を、マリーナ殿は復習代わりにお聞きくだされ。」



あ、それ。私も気になる~!



「まず、ルーン魔法と詠唱魔法ですがこの両者のどちらかが優れている、劣っているというわけではございません。通る道筋、先ほどのお店屋さんに例えると注文方法が変わるだけで実際に払う魔力、起こすことのできる奇跡に差は全くございません。」


「詠唱魔法ですが、こちらは口で発音することで扱います。一つ一つの単語、フレーズですね? こちらに魔力を込めて奇跡を起こすわけです。対してルーンはルーン文字という詠唱魔法のフレーズに当たるものを宙へと書き、効果を及ぼします。この二つの大きな違いとしては……、『フレーズの持つ意味の大きさ』、でしょうな。」



彼の操るゴーレムが先ほど彼の言った言葉を丁寧に書く。さっきのお店屋さんの話の時もそうだったが、単に板書するだけではなくちょっとしたイラストも黒板に描いている。集中が切れないように、注目し続けられるように色々してるんだなぁ、とちょっと感心。やっぱベテランなだけあるんですね。



「そうですな……、例として剣にいたしましょう。ここでは商品である剣を魔法といたします。」


「『詠唱魔法』の場合、自身が欲しい剣の特徴。刃渡りや柄の長さなどですね? こちらを一つ一つ丁寧にフレーズをお店の方に教えることで商品を入手します。複雑であればそれだけ説明の時間が長くなる、詠唱の時間は長くなりますがフレーズさえ覚えてしまえば何度も注文できるわけですね。」


「対して『ルーン魔法』ですが、こちらはルーンを描きながら自身のイメージを世界に反映させることで効果を及ぼします。お店屋さんに例えるとそうですね……、店員の方に『剣が欲しい』とだけお伝えし、一緒にどれがいいのかをじっくり考え手に取って見ながら決める、でしょうか。」


「イメージを固めるのに慣れる、簡単なイメージだけで形成するなど思考する時間が早い魔法であれば詠唱魔法よりも格段に速く効果を及ぼせますが、大規模な魔法となると詠唱よりも非常に長い時間が掛かるそうです。」



あ~、めっちゃわかる。イメージ纏めるのめんどいもん。私は前世の記憶とかでそう言った魔法のイメージとか固めたり、記憶から引き出したりするの早いけど慣れてなきゃすごく遅くなっちゃうと思う。実際複数のルーン使ってより大きな魔法使うときはかなり時間取られるし……。



「結論を申しますと、まぁ一長一短ですな。アル殿はぜひ私の授業を通して自身のより扱いやすい魔法を見つけていただきたいと考えております。」


「あ、はい! わかりました!」



イメージさえ固めれればルーンの方が早くて使いやすいけど、頭の中で固めるのが難しければフレーズ覚えて欲しい結果を及ぼせるようになりなさい、ってことですかね?



「さて、説明としてはこれぐらいでしょうかな……。では今後の授業についての軽い説明を。」


「詠唱時に使用するフレーズの意味や効果、そして個人に合ったフレーズなども一緒に学んでいこうかと思っておりますが、同時に自身が使いにくい属性といったところも見ていきましょう。」


「ヘンリエッタ殿にお聞きしておりますが、お二人が求めているのは自身に降りかかる火の粉を払い、その出元を滅する力。普段私は基礎の基礎。詠唱に使用する単語の意味や、それぞれの属性との相性。そしてその効果などを教えております。」




「では早速始めて行きましょう、教科書の2ページを……。」




本格的に始まる魔法の授業、二人とも頑張っ……。あ、魔物ミッケ。<加速>、首はね、処理完了。ただいま。











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