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【書籍化】TS剣闘士は異世界で何を見るか。  作者: サイリウム
日常編

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53/86

53:わたしはできるよ





(さぁ~って、どうしようかな。)



脳内で『加速』のスイッチを入れ、思考速度を上昇させる。


とりあえず、自分の状態を把握し直そう。現在の私の服装は、私服。帝国で一般的な服装だ、ローマみたいな服装って言えば伝わりやすいかな? つまり防御力は0に等しい。そもそも今日はヘンリ様の家にお邪魔する予定、それもいつもの興行ではなくアルとマリーナの師として伺った形だ。わざわざ物々しい格好でお邪魔するのもマナー的にダメだし、武装も持っていない。


つまり無手ってワケ。



(けど、ま。そっちの方が良かったかもね。)



ルーン魔法を手に入れた私にとって、例え武器や防具を持っていなくてもそれが戦闘能力の低下につながるわけではない。そもそも素手での殴り合いは得意な方だし、比較的低燃費で魔法剣の生成が出来る以上、むしろ相手の油断を誘えるって意味で何もつけない方がいいかもしれない。まぁドロの店で8割近く魔力持って行かれたからカツカツなんですけどね!



(出力弱めて相手の武器弾いて奪うって方法もあるから大丈夫ではあるんだけど。)



それに、もし今の私が鎧を身に纏っていて、普段のロングソードを握っていれば十中八九相手を殺していただろう。私にとって鎧は仕事着、どれだけ意識しようとも殺意や敵意を向けられた瞬間、剣闘士としての自身が出てきてしまう。手加減することは出来るだろうが、力加減を間違えて殺してしまう可能性は非常に高い。現役のころと比べると『加速』の性能や体自体のスペックも変わっているし、そこら辺の感覚を間違えて殺すとか超ありそう。



(相手がどんな身分だろうと人を殺してしまえば司法のお世話になってしまう。"ビクトリア"のイメージダウンを避けるのならば殺しはNG。人の命が軽すぎる世界ではあるけれど、少しでも騒動のタネになるのならば避けるのが鉄則だ。)



と、なると。追跡者くんちゃんを殺さないように捕獲するってのが目標か。追い払っちゃうと今後も後ろを付けられる可能性を考えないといけなくなるからナシ。同じ理由で逃がすのもダメ、アルやマリーナを狙われるってのも痛いしね。この場で無力化して、衛兵が飛んでくる前に情報を吐かせて、後はそのまま司法の手に委ねるのが一番安全ってとこか。



(衛兵はともかく司法の方は言うほど腐敗してないみたいだしね、もし腐ってたとしてもヘンリ様に"お願い"しておけば問題はないだろう。)



さて、考えも纏まったことだし……。ご対面といたしましょうか。


会話のため、『加速』を解除しながらゆっくりと背後へと向き直る。



「やぁ! さっきからずっと付いて来たみたいだけど……、ファンの子かな?」



体勢はそのままに、ちょうど後ろにまで接近していた幼子。彼女に声を掛ける。あ~、一番面倒な奴だ。この子が敵じゃなきゃいいんだけど。キミカワイイね、何歳? 明らかに小学生以下だよね? それで私のこと好きなんだ~、よっぽどなおませさんんか、嘘っぱちかのどっちかだねぇ。……めっちゃキラキラした顔してくれてるから"おませさん"の方に賭けたいんだけど。



「は、はいぃ! さ、さいんくだちゃい!」


「あら噛んじゃって、そんなに緊張しなくていいのに。……あぁ、それと。ちょっとだけ目を瞑って貰ってもいいかな? アル、マリーナ。前にいる奴ら、無力化できるならお願いね? 無理なら時間稼ぎ。」


「了解です!」


「え?」



私がその言葉を発した瞬間、それまでただの通行人として擬態していた奴らが一斉に動き始める。わぁ、その道のプロかな? 初動が早くて無駄がない、ほらさっきまで露店を眺めてたお兄ちゃんを見てよ。もう矢をつがえてるよ。でも私より強そうなやつはいないし、早い奴もいない。ノーモーションで無声での攻撃、明らかに訓練された刺客。となると……、例のララクラ領関連の残党か、復讐のために雇われた奴らか。


先ほどまで通行人として振舞っていた者たちが、一斉に動き始める。その容姿や服装、それぞれが持つ凶器にどれ一つ統一性はないが、私を中心にして囲むように立っている刺客たち、そして目の前にいる囮の幼女のことを考えるに全員が一つの組織またはチームだろう。ただ、今私に武器を向けている、向けようとしている奴らは敵認定してもいいんだろうけど、この目の前にいる幼女をどう判断したらいいのか解らない。


言われた通りちゃんと目を閉じてるしなぁ? 全くの無関係な子が単に囮として利用されたのか、あいつらのグルで襲撃者たちが全員死亡した後に「お姉ちゃん助けてくれてありがとう!」って言いながらナイフを突き立てる役かどうかが解らん。一度同じような戦法を喰らいかけたことがあるので二度目はないんだけど、もし前者だった場合後味が悪すぎる。



(とりあえず守れたら守る方針で行くか。最優先はアルとマリーナの安全で、その次が私。)



<加速>十倍速



速度を上げ、私に向けて放たれた暗器。そして背後の二人に向けて放たれたすべてを回収する。十中八九毒付きだろうから刃の部分などを触れないようにし、1/10になった針やナイフ、矢を一まとめに。場所が裏通りとかの人目に付かない場所ならばそのままお返しして毒殺より哀れな爆殺をしていたのだろうが、無関係な人間の目がある場所で殺すメリットはない。この速度での投げ物は色々飛び散っちゃうからねぇ、見た目が悪いのよ。



(私の側に12人、アルとマリーナの方に4人。)



そのまま加速の世界に入りながら、ゆっくりと襲撃者たちの前へと移動していく。ここからはいい感じにこの襲撃者たちを無力化していかないといけないんだけど……。今の私は十倍速中、腹パンでもしたら上半身と下半身がお別れしちゃう。かといってデコピンでも色々貫いちゃうだろうし……。



(あ~~! たとえ相手が襲撃犯でも殺しちゃった場合色々めんどくさいんだよなぁ! 法制度調べてた時、最悪一月近く拘留されてた前例あるんだよなぁ! たとえヘンリ様っていう後ろ盾があっても『ビクトリア様なんか捕まったらしいよ?』ってイメージ付くのクソ嫌なんだよなぁ!)



正確に言うとアイドルではないんだけど、『ビクトリア』というイメージを売ってご飯を食べている身からすればこういうイメージダウンの出来事はなんとしてでも避けたい。いやそんなこと考えるんだったらあの時"異形"こといーちゃんの股間殴るな、って言われればそうなんだけどさ。……あ! いいこと思いついた!



(軽くシェイクしよ! ほーらみんな美味しいミルクセーキならぬ、お肉セーキになるんやで~。)



襲撃者たちの腰を柔く掴み、上下左右に楽しくシェイクした後地面に放り投げていく。もちろん男女問わずね? ジェットコースターとかで高速で振り回されたら気分悪いでしょ~。それを10倍速でプレゼントしてあげるの。ちょっと最初の方は力加減ミスって指が敵さんの体にめり込んじゃったけど……、多分死んでないからヨシ!


やっこさんの服の端で手に付いた血を拭き、私の方を襲いに来た襲撃者たちを一つの山にしておく。多分『加速』解いた瞬間にお口からいろんなものが出てくるだろうからあんまり近寄らない方がいいと思うよ。誰でもゲロまみれには成りたくないし。



(と、いうことであっさり私の分が終わったわけだけど……。)



残るはアルとマリーナの方を担当していた襲撃者たち。いつもなら残りも私が処理するんだけど……。



(経験値にしてあげる、ってのもアリか。)



私の『加速』があれば、危ない状況に陥っても介入することが可能だ。私が頑張れば安全が確保できるのであれば、二人の修行。その次の段階に進んでもいいかもしれない。アルとマリーナが今やっている修行としては、自主練と模擬戦が主。私が教えた型とか、流れみたいのを反復したり、私と打ち合いしたり、最初にやった模擬戦みたいなのを繰り返している。


同じ魔法使いだし、同門の相手。お互いに刺激を与えながら自身の欠点を見直していくっていうかなりいい状態ではあるんだけど……、経験の偏りを感じていた。同じ相手と戦い続けたら変な癖がついちゃうって奴ね?



(ほんとはヘンリ様のお屋敷にいる護衛兵たちに手伝ってもらう予定だったけど……、それじゃ"模擬戦"の域は出ない。ヘンリエッタ様からのオーダーは、『マリーナを伯爵として恥ずかしくない力量まで引き上げる事』。時間の指定はされてないけれど早ければ早い方がいいのは確か。……それを考えると、一番成長できるのは実戦なんだよね。)



正直二人を危険にさらすのはかなり嫌なのだが、依頼を受けている以上オーダーは完遂しなければならない。そしてマリーナに課題を課した場合、アルにも同じものを課さなければ不公平感が生まれてしまう。どちらにとってもいい結果には繋がらないだろう。


いつか私の元を飛び立つ日が来るのだろうが、それは今じゃない。だけど完全に安全を確保できる戦場ってのはそうそうありえない。二人が成長するほどに私の目から離れる機会も増えてくるだろう、実戦は経験しておいた方がいい。体格や毒を使っているという事実から考えてそんなに厄介そうな奴はいないと考えられる。一対一ならまだ……、行けそうかな。



(自分の戦闘よりも気が抜けない、ね。)



襲撃者四人の後ろに立ち、両端の二人を同じようにシェイクして美味しい美味しいお肉セーキに変えてあげる。後はその二人をドナドナしてお仲間のところにボッシュート。最後に残った哀れな経験値二人の背後に立ちながら『加速』を切れば私の行程は終了だ。


その瞬間に彼らの肩を掴み、二人纏めて潰さない程度にギュ、っとしてやる。もちろん両手にはさっき倒して襲撃者から奪った剣を握り、彼らがすでに詰んでいることを教えてあげる。あ、付着してた毒は危ないから倒れてる彼らの服で拭っといたよ? アルとマリーナの目の前にも同じように処理した剣を一本ずつ地面に刺している。



「や~! 小さい子たちをよってたかって虐めちゃうとか! 君たちすごい趣味してるねェ!」



日本人もびっくり、と付け足そうかと思ったが我が心の母国じゃ特殊性癖の一つに分類されて薄い本とか探せば大量に出てきそうだ。あ、もちろん二次元の話ね? 現実でやったらただの犯罪だから普通に捕まって豚箱にぶち込まれてください♡



「ほら見てよ、君たちのお仲間も『気持ち悪い』って吐いちゃってるよ。きたな~い。」



私の声でようやく仲間たちがどうなったかを理解する彼ら、掴んでいる肩が若干強張る。まぁ仲間たちが一瞬にしてお山のように積み重なって、全員が口から内容物をブチまけていたらビビるよね。meもビビる。あ、一応喉詰めないようにうつぶせにしてあるから安心して? 全員気絶してるけど、死にはしないさ。



「アル、マリーナ!」


「はい!」


「あ、は、はい!」



うんうん、アルはいつものことだから慣れてるよね。マリーナちゃんはちょっと状況把握に時間かかっちゃったか~。今日は大丈夫だったけど、いつか驚いている間に自分の命が無くなっていた、なんて状況が来ちゃうかもだから耐性つけて、いち早く動けるようにしようね。でもちゃんと返事できたのはえらいぞ!



「ちょっと課外レッスンにしようか。今、絶体絶命のこの襲撃者くんたちの無力化が目標ね。2人で1人ずつ倒しましょう。あ、危なそうなら私が介入するし、頑張って~。武器は……、そこにおいてある彼らのを使ってもいいし、使わなくてもいい。ま、方法は問わないからやってみなよ。」


「んで今私に掴まれてる君たちに朗報だ。私はとっても優しくてね? あの子たちにいい経験を積ませられた、と判断できたら見逃してあげよう。もちろんそこに転がっているお仲間を連れて帰ってもいい。でも、この場から逃げようとしたら全身を捩じり切って殺してあげる。」





「さ、二人とも~。がんば!」








 ◇◆◇◆◇







(うへぇ、また無茶ぶりだ。)



そんなことを考えながらも、目の前に突き刺さった剣を引き抜く。普段師匠に使わせてもらっている剣に比べればかなりの鈍で、私の背丈に合ってない少し大きな剣。でも暗殺者が使うような剣のため刃渡り自体はそこまで大きくない。気を付ける必要があるけど、十分使える。


無茶ぶり、と考えてしまったけど師匠が私たちにやらせたい事、経験を積ませたいことは理解している。私と師匠は一緒に暮らしているので、何かと私たちの育成方針について聞かせてもらえることが多い。うんうん頭を悩ませている師匠に水を汲んできて、『何考えてるんですか?』ってな感じで。


そこで聞いたのだが、私たち、特にマリーナに実戦経験が不足していることが問題なんだそうだ。確かに師匠のいう通り、実際の戦いの場の雰囲気はかなり独特だ。一度あの盗賊たちとの戦闘を経験している私でも飲まれそうになる。早ければ早いほど経験しておいた方がいいし、慣れておく方がいい。



(まぁ師匠なら私たちに戦場に立ってほしくない、って考えているんでしょうけど。)



さっきまで襲撃者たちの背後にいたと思ったら私たちの背後に、しかもさっきファンとして近づいて来た女の子を抱き上げて私たちのことを応援し始めている師匠。どこから取り出したのか、私とマリーナの名前が書かれた……、うちわだったっけ? それを軽く振りながら幼女と一緒に『こっち向いて!』なんて言っている。


明らかにふざけ始めた師匠ではあるが、さっきからずっと目が笑っていない。女の子を抱き上げる際も確実にボディチェックしていたし、今も私たちを見る目は剣闘士だった時の師と同じものだ。あと襲撃犯たちが隙を見て逃げようとした瞬間背後に回り込むその速度は何なんです? ほんとに人間ですか?



(さて、私も目の前のコレをどうにかしないと。)



隣にいるマリーナもようやく覚悟を決めれたみたいで、私と同じように剣を構え始める。初動は遅いけど、覚悟を決める時はしっかり決めて、自分の軸をしっかりと持とうとしているのが彼女の強み。その経緯の見せ方というか、自身が背負う責務を全うしようとする姿の見せ方。同門の妹弟子ではあるけど、やっぱり貴族なんだなと考えてしまう。


色々と考えてしまうが、戦いの中で余計なことに思考を割いてしまうのは死につながる。師匠が見ている前でそんなことはできない。利き手で剣を握りながら、もう片方の手でいつでもルーンを描けるようにする。



(警戒すべきは、毒。求められているのは無力化だから殺しちゃダメ、つまり一度も喰らわずに無力化する必要がある。)



つまり殺傷力の高い魔法、火とかは使えない。ならばあんまり慣れてないけど水を主体に組み立てていく必要がある。使うにしても足元を濡らして行動を制限するとか、ぶつけて打撃ダメージにするとか、そういうのだ。どっちみち模擬戦の時のように強い攻撃は使えない。師匠から教わった『敵の頭部を水球で覆って窒息死させる』技を一瞬使おうと思ってしまったが、やめておいた方がいいだろう。



「ᛚ(ラグズ)。」



私がルーンを刻んだ瞬間、襲撃者たちが同時に動く。魔法詠唱者と対峙した時は距離を詰める、鉄則だ。同時に私たちに向かって飛んでくるのは数本のナイフと、おそらく本命の針。両方とも透明だが何らかの液体が塗られていることが見える。わかりやすいナイフをブラフとし、本命の針が刺されば勝ち、ということだろう。


……あ、これマリーナ見えてない奴だ。彼女の視線には自分の頭部と胴体に飛んでくるナイフしか見えておらず、脚部に迫りくる毒針に意識が向いていない。その証拠にさっきまで奴らの背後にいた師匠の姿がブレている。



「マリーナ!」



自身が生み出した水球を目の前に展開し防壁に、それと同時に声を上げながら自身の持っていた剣を彼女の足元へと投げつける。



「え、わっ!」



私の声で踏み出していた足をひっこめた彼女、その足元にはちょうど私の剣が突き刺さっており、同時に甲高い金属音が響く。



「毒針! 多分まだあるよ!」


「ッ! んに~~ッッッ! 感謝を! 『風防壁(ウィンドカーテン)』!」



針に気が付けなかった自身への怒りや、私に助けられたことに関する情けなさなどの色んな感情を押し込めるような声を出した後、彼女は感謝の意を述べて風の防壁を構築する。未だ風の制御が上手く行かないのか、その身に纏う服や顔に赤い線が出来てしまうがこれ以上彼女が投擲物に怯える必要はなくなった。



「! っと! 剣ぐらい取らせてくれてもいいじゃないですか!」



彼女の様子を見て安心したのも束の間、自身の剣を回収するよりも早く私の相手が切りかかってきた。こっちも同じように剣の刃が湿っている。何かしら塗られているのだろう、喰らっちゃだめで、こっちは無手。わぁ、大変。



(無力化、だけど……。)



襲撃者の振るう剣を避けながら、ゆっくりと思考を回す。変に焦ってすぐに崩れてしまう脆い策を立てるより、時間を掛けてゆっくりと策を練る方がいい。だって"視てから"でも避けられるのだから。


自身の才の一つに、『眼力』というものがある。最初は単に目がいいと思っていたのだが、師匠と共に詳細を詰めていくとその良さにも様々な種類があることが解った。単純な視力に、空間把握能力、そのほかにもあまり名前の理解できない色々な種類があるらしいのだが……、その中で一番私が優れているもの。それが『動体視力』だ。


通常の人間であれば把握できない速度で動くものを、把握できる。見ることが出来る。普通の人間ならば、剣を持って腕を振るう相手と相対した際。その腕の向く方向や、体の位置を見てどこから攻撃が来るのかを把握するらしい。だが、私は最初からその全身が見えていたし、振るわれた剣の切っ先も十分に視認可能だった。



(……師匠よりも大分遅い。足元さえ気を付ければ当たらない。)



師匠に剣を教わる前からそうだったのだ、剣闘士の見習いを経て、師匠の弟子として毎日扱かれている私からすれば常人が振るう剣など当たるわけがない。こっちは毎日高速移動して残像を残しつつ『影分身の術~!』って言いながら私に切り掛かってくる人の相手してるんですよ!? むしろ軽く避けられてないと明日の訓練量ガガガ。



(っと、長引かせてもアレだし早めに終わらせないと。)



剣を見てから回避することは出来るが、師匠のように速度のお化けではない私は回避以外の行動をとることは難しい。となると、目の前にいるコイツを無力化するには魔法のみ。……最悪お腹の中が色々と大変なことになってしまうかもしれないが、そこら辺は自業自得ということで納得してもらおう。



「もっかい、ᛚ(ラグズ)。」



利き手の右に水球を生成しながら、そこに回転の力を加える。眼の前の彼は攻撃が当たらないせいか、完全に焦りが出てきている。こっちが何か動きを見せれば、早急に勝負を付けようとするはず、そこに叩き込む。


私の戦い方、魔法の使い方、そのすべてが師匠に教わったものだ。


故に、負けるわけにはいかない。




眼前に迫るのは大上段からの一閃、確かに間違いではない。




だが、どうしようもないほどに遅い。




「そこ。」




振り落とされた刃をはらりとよけ、ぽっかりと空いたその腹に十分に威力の増した水球を叩き込む。


吹き飛ばされ、倒れ伏す敵。


その視線の先に、この結果に満足そうな笑みを浮かべる口と、何か間違ってしまったのだろうかと後悔するような目をした師の姿がそこにあった。……だから心配しすぎなんですって、師匠。


あの時よりも、だいぶ成長しましたって。













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