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やっぱり広域課は婚活課だった

帰りの馬車の中でだった。


「アンネッテのいなくなった日、私は公務の最中もアンネッテの事が頭から離れなかった。そして帰ってみると、侍従から老婆やの所に行ったと聞かされた。一晩経ったら冷静に話し合えるかもしれないと思っていた。でも、シェリルは消えていた。どこにもいなかった」

「そうですね」

「まだ運がよかったのは、広域課より支給されたドレスを売っただろう?あのドレスには政府のマークが付いていて、ドレスのマーケットでは流通させられないんだ。アンから買った店主はその事を知らなかったから買い取ってもらえたわけだが」

あのドレスはそんな厳格に管理されたな物だったとは知らず冷や汗が出る。


「そんな厳重なものなんですか?」

「国の備品だ。銃や剣を売るのと同じで、国の資産を簡単に売られては困るだろ?」

「確かに」

「だから、買い取った店や君が代わりに買ったドレスがわかった。それから同じようなドレスを着た女性を見なかったかしらみ潰しに聞いて回った。」

「そしてここに辿り着いたと」

「ああ。アンを見つけるまで、どんなに不安だっか。毎日が本当に辛かった」

「私の事はわかりました。第一王妃はどうやって見つけたんですか?」

「それは……君が居なくなって、役立たずになりかけた私の前に自ら現れた。メイドの格好をして、掃除婦さながらモップを持って。『何をバカな事をしている。早くアンを探して、愛を囁け』とね」

「フフフ。面白い」


「では、オリアーナは何故あんな事をしていたのですか?」

「あれについてもすごくお叱りを受けた。オリアーナの任務は、スパイ活動をしている同胞のセイフティーハウスの管理だった」

「それはなんですか?」

「潜入捜査中にスパイだとバレそうになった人が逃げ込む先だよ。定期的に場所を変更しないと、安全ではないだろう?私達が訪問したことによって、観光客がくるようになってね。セイフティーハウスの役割が出来なくなってしまった」

私たちのした事は最悪の事だったんだ……。

すごく反省をしてしまった。


「あの時、法務大臣であるエンリケ公爵のところにスパイを差し向けていたらしいんだ。そのセイフティーハウスを私達は潰してしまったわけだよ」

「それは最悪ですね」

「そうだな。ただ、ブラウンの色々な能力は私を含め、複数の目に留まる結果となった。そのため彼はもうしばらくで、かなり上の役職に召し上げられる」


あの夜会の時、ブラウン団長に助けられたのは偶然だった。

偶然の出会いが、こうしていい結果をうんだのならいい。


「アンを探すとき、ブラウン団長の部下である第二騎士団もかなりの活躍を見せてくれたんだ。やはり指導者がいいせいなのか。彼らの多くもこれを機に出世して行くよ」

「それは素晴らしいですね」



こうして私の失踪劇は幕を閉じた。



「アン。シェリルとして過ごした部屋に滞在してもらうことになるけど……」

王城に戻った時に申し訳なさそうに言われた。

「いいですよ。もう本当の婚約者ですから。ちゃんと責任は取ってもらいました」

と言って、微笑んだら、エルドレッド殿下は私の頬にキスをしてくれた。


部屋付きのメイドはびっくりしただろう。

名前も違えば髪色も顔も違うのに、スッピンは同じっていう女性が部屋に戻ってきたので。

でも、そこはやはりプロフェッショナル。

何事もなかったかのように振る舞ってくれている。


今、シェリルという女の子の事を覚えている人はほとんどいない。エルドレッド殿下が公務にシェリルを連れていたのはごく短い期間だったので、皆の記憶から消えてしまった。



私が戻ってすぐに、エルドレッド王子とアンネッテ・グリーグ子爵令嬢の婚約が発表された。



この後、私達よりも先に国を挙げての結婚式を挙げたのは、なんとオリアーナと、ユーベル伯爵だった。


オリアーナの実家は没落寸前の男爵家で、美人のオリアーナをどこかに売り渡す予定だったそうだ。

それを阻止して広域課に入れたのが、当時、子爵を名乗っていたユーベル伯爵だった。


ユーベル伯爵のお父様は王弟殿下で、なんと王位継承権がある方だ。

そんな人に思いを寄せても仕方がないという事で、オリアーナは白い結婚を選んだらしい。


しかし、今は公爵未亡人で、資産もある。

という事で、結婚が認められたらしい。

この2人の恋物語を知りたくて根掘り葉掘り聞いたけど、何も教えてもらえなかった。

どちらから告白したのかしら?

いつからお付き合いしていたのかしら?

興味が湧く!



世の中どうなるかわからない。



どうなるかわからないといえば。

私がお部屋を借りていたおばあちゃんのお家は、観光名所になっているそうだ。

『ある日突然、王子様が迎えに来た家』として。


そして働いていた花屋さんは。

『ここで買った花をプレゼントしてもらうと幸せになれる』という噂が広まって大盛況だそうだ。


最後にあの食堂では。

『王子様が店員にプロポーズしたお店』

として、若いカップルがプロポーズをしたり、パーティーをしたりするそうだ。

常連のおじさん達は、そんなカップルを見ては、にっこり微笑むようだ。


私が下宿をしていたお家にも、働いていた花屋にも、そしてあの食堂にも。私とエルドレッド殿下と店主で撮った写真が飾ってあるのを、訪れた人は見ることになるだろう。




そして、ブラウン団長と結婚したベアトリスはまだ劇団に所属している。

その劇団では、私の失踪劇を上演して大盛況を収めた。

もちろん、私の役はベアトリスが演じている。

本当の事を知っているベアトリスだけど、そこは機密事項もかなり絡むので、完全フィクションで上演してもらっているがこの舞台を見ている観客は実話に基づいた話だと思っているようだ。



広域課は今も健在だ。

なんと私の辞表は不受理になっていた!

そのため、私もオリアーナ様も『妃』と呼ばれる立場なのに、未だに諜報員を続けている。

私もオリアーナ様も、働くお妃様だ。


その広域課は、オリアーナ様と私がそれぞれ王位継承権のある王子様と結婚したので、ますます『婚活課』と呼ばれ、希望する女性が殺到しているが、採用された人は未だ居ない。


これは広域課に配属されたアンネッテの恋物語。


これでこのお話は完結となります。

いかがだったでしょうか?

楽しんで読んで頂けたら幸いです。


誤字脱字が気になる方もいらっしゃるかと思いますが、そこは大目に見てくださいね。

いろいろありまして、誤字脱字報告は受け付けないにしてあります。

申し訳ありません。


また次のお話をお待ちいただけると、作者としてもうれしく思います。

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