合格通知
本日2回目の投稿となります
試験を受けてから数日後、お父様に呼ばれた。
ノックをしてお父様の待つサロンに入ると、お父様以外にも2人の男性がソファーに座っていた。
それは面接をしてくれた2人の男性だった。
その向かいに座るお父様の顔色が悪い…。
「グリーグ子爵令嬢。今日は、試験日と雰囲気が違いますね。これでは同一人物と言われなければわかりません」
面接をしてくれた文官様は驚いていた。
私は無言で作り笑いを浮かべた。
「さっそくですが、こちらの手紙をお読みください」
そう言って先日、面接をしてくれた文官様はテーブルに置かれた手紙を差し出してきた。
手紙を開封すると、それは内定通知書だった!
『来月の任用』
それだけ書いてあった。
私は嬉しくて、顔を上げたけど不安になってお父様を見た。
試験を受けたのは家族には内緒にしていたので、お父様の反対に合うのが怖かった。
しかし、お父様の顔色はどんどん青白くなって血の気が無くなっていく。
理由はすぐにわかった。私と同じように手元にある手紙を開封したのだ。
「ここに書いてある事は本当だろうか?」
父は文官様に手紙の内容を確認している。
「我が娘アンネッテが王城勤めの試験を受けて、見事合格し、来月から任用される。まず試験を受けたことを知らなかった…。しかも配属されるのが機密事項の多い部署のため婚約を解消するように……と…」
お父様の混乱している。
それを見て試験官だった若い文官様は、
「グリーグ子爵令嬢の試験結果は満点でしたから、重要部署に配属されるのは当然です。優秀なお嬢様ですね」
と言った。
「もしも婚約を解消しない、又は、アンネッテが任用を辞退した場合は、今後、社交界への出入りは一切禁止と書いてある。これは一体…」
父の言葉に私も驚いて文官様を見た。
文官様は父と私を交互に見てにっこり笑った。
「それは、これほどの逸材を逃す事は許されないからです。グリーグ子爵令嬢が辞退したら困った事になってしまいますから。もちろん、重要部署に配属される事は機密事項ですから、婚約解消の本当の理由は言わずに穏便に解消してください。
グリーグ子爵、これからも貴族として生きていきたいなら言う通りにしたほうが身のためですよ。私たちを敵にまわさない方がいい」
文官の冷めた作り笑顔を見て、父は何度も首を縦に振っていた。
ここで今まで沈黙していた壮年の男性が口を開いた。
「グリーグ子爵令嬢。社交界ではまだ君は知られていない。婚約解消の時も含めて、素顔は見せないように。これから重要任務に着く君への最初の命令だ。君の顔を知っている人が一人でも少ない方が助かる。
試験の時のように派手なメイクなら君だと判別つかないからアレなら出歩いてもいいがね」
2人の試験官が帰った後、父はへたり込んでいた。
「お二人は帰られたか?」
「はい先程。お父様、何かお飲み物を準備させますか?」
父は血の気が引いたまま立ち上がれないでいるので、気を落ち着かせるためにそう聞いた。
「アンネッテ、今来訪された方がどなたかご存じないのか?
若い文官が何者かは知らないが、壮年の方は王族の遠縁にあたるダンプド公爵様だ。
あの方に逆らった者は、次の日屋敷ごと消えてなくなると言う噂の、ものすごい方だ」
ダンプド公爵様…聞いたことあるような、ないような…。
私は首を傾げた。
「アンネッテは来月から王城に通わねばならないな。それまでに婚約解消か。気が重い…」
「そうですか?婚約解消できるので私は嬉しいです」
父は私を恨めしそうに見てブツブツ言いながら書斎に籠った。