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騎士団に向かう

いつも通り、快眠の朝。

行き先は騎士団。

もしも隠し武器が見つかったら大事になるので、太腿の武器は持たずに出かける準備をする。


ベアトリスにお返しするショールを持ち、侍女にお返しの焼き菓子を作ってもらって籠に入れた。

鏡を見て、アンネッテを封印する。


今は可愛らしい令嬢でいないと。


早々にお迎えの馬車が来たので、グラファント夫人とビアンカ様は嬉しそうに見送ってくれた。


王城に着くと、視察用の服装を着た皇太子殿下が待っていてくれた。

そして、すぐに騎士団の馬車に乗る。


「そのカゴは?」

「昨日、危機に瀕した際にドレスが……。ですから、ベアトリス様がショールを貸してくれました。そのお礼です」

「ふーん。中には何が?」

「ショールと、ビアンカ様のお家の料理人に作ってもらった焼き菓子です。皇太子殿下は差し入れは食べられませんものね」

「……ああ。毒見をしてもらえれば別だがな」

「もしかして欲しかったんですか?私に酷いことをした人にはあげません」

私は怒った声を出して笑顔を見せた。


「昨日は申し訳なかった。あの状態で女性を放置する危険性を考えてなかった。でも、大胆に足をあげたり…もしかして……」

ナイフを隠し持っていたとは言えないので、どう誤魔化すか考えた。

「あれは、柵を飛び降りたら体の重さで縄が切れないか試そうとしたんです!」

「それじゃ無理だよ」

「そうですよね。でも必死だったんです。あの時、ブラウン団長が来てくださらなかったらどうなっていたか」


そんな話をしていたら、騎士団の庁舎に到着した。

入り口には第一騎士団団長と、第二騎士団のブラウン団長がお出迎えのために立っていた。


馬車のドアが開く瞬間、皇太子殿下の雰囲気が変わった。

少し冷たく威厳に満ちている。


今まで側にいた方が別人になったようだ。

私も今の瞬間から与えられたシェリルというキャラクターを演じなければいけない。冷たい雰囲気の皇太子殿下の真逆である、空気を読まない無邪気な雰囲気で馬車を降りる。


そんな私を見た騎士団員達は何も言わない。

多分、内心では『何だ?この空気の読めないご令嬢は?何で皇太子殿下はこのご令嬢を連れてくるんだ?』と思っているだろう。


なんとなくそんな視線で見られているのがわかる。

唯一、ブラウン団長だけが優しい視線で私を見てくれた。

団長はきっとこれが本当の私ではないって気が付いたんだ。


そして、第一騎士団団長の態度を見る限り、私が騎士団広域課の諜報員だと知らないのかもしれない。

嫌、知っていてこの態度なのかしら?

私も自分に与えられた任務を遂行しないと。



「今日は昨日の件についてのご訪問と伺っております」

第一騎士団団長の言葉に皇太子殿下は頷いた。

「そうだ」

「非公式のご視察の後、その時のご様子を説明頂けるとの事。そのような昨日のお話でお間違えございませんか?」

ブラウン団長は、昨日決めなかった流れを皇太子殿下のお言葉として説明してくれた。

「ああ」

殿下のお返事を聞いて、沢山の騎士達が動く。


第一騎士団団長はブラウン団長が話を進めるので面白くなさそうだが何も言わない。

通常、王族の護衛など花形の職種は第一騎士団の仕事だ。

当然、非公式であっても視察の希望は第一騎士団団長に届くはずなのに、今回は違う。

しかも、権力とは程遠い第二騎士団団長が皇太子殿下を案内する。


きっと屈辱感があるだろう。

今まで築いた関係性があるはずなのに。

でも、やはりエリート。人間性が出来ている。

初めこそ一瞬態度に出ていたが今はもう普通だ。

そこまでの人間性が無いと、トップには上り詰められない。


簡単に視察を終えて、王族が休憩をする部屋に通された。

お茶の準備を指示する声が聞こえる。


私はその場にいる第一騎士団団長にカーテシーをした。

「大変申し訳ないお願いなのですが、私が皆様に紅茶を入れて差し上げますので、こちらにティーセットをお持ちいただけますか?」


私のお願いにその場にいた全員が驚いた。

通常、何があってもお嬢様はお茶を入れない。

それは侍女の仕事であって、そのようなことをするのはお育ちがバレるといわれる。


でも私は天真爛漫なシェリルだから気にしない。

程なくしてティーセットが運ばれてきた。皇太子殿下が意義を言わない限り、お連れである女性のワガママは聞かないといけないのが不文律である。


目の前に置かれたティーセットは陶器製だった。

銀食器を騎士団で管理するのは難しいもの。


私は籠から銀の小さな食器を出した。

これはビアンカ様が外で皇太子殿下が食事をしないといけない時のためにあらかじめ準備してくれてあった物だ。

まず、ポットのお湯だけをそちらに注ぐ。

銀の器は濁っていない、大丈夫だ。そして口に含む。

もちろん、ここまで来る前に毒見をされているのは知っている。でも、念には念を入れて。


「皇太子殿下、白湯に致しますか?それとも紅茶がよろしいですか?」

「では、紅茶にしようか」

「かしこまりました。では、少々お待ちください」

持ってきた大きめの銀食器に茶葉を入れて、そこにダイレクトにお湯を注ぐ。それからしばらく経つと、上澄みを先程白湯を飲んだ器に移して飲む。

その様子を騎士団員は無言で見ていた。

二人の団長は私のやっている事が毒見だとすぐに気がついたようだが、他の団員は途中までわかっていなかったようだ。

まさか私が毒見だとは思っていなかったみたい。


「私はシェリルが利用した食器で良い。早く、皆にお茶を出すように」

「かしこまりました」

私は急いで皇太子殿下にお茶を出すと、他の方々にも手際よくお茶を準備して出した。

今は、時間がかかっても皇太子殿下に味方である事を示さないといけない。

敵か味方か、と疑われていては私自身もシェリルを演じきれない。


「ありがとう」

私が出したお茶に対してブラウン団長だけがお礼を言ってくれた。


そこから、ステッキと剣についての話が始まった。


私は何も言わずに無言を貫く。殆どがブラウン団長がウソの説明をして皇太子殿下に同意を求めるだけになった。

そして、話の終盤。

「では、この武器は皇太子殿下がお持ちになって然るべき時まで保管頂けると。その調査は第二騎士団にお任せ頂けると昨日おっしゃっておりましたがお間違えないですか?」


ブラウン団長はここが言いたくてなんだか上手く伝わらない説明をしたんだ。

でも、皇太子殿下には伝わったようだ。

「そうだ。よろしく頼む」

「御言葉ですが、第一騎士団にもお手伝いをさせては頂けませんでしょうか?」


「高位貴族しか参加していない会場で見つかったのだ。第一騎士団が表立って動くと色々と角が立つ。それ故、普段全く違う任務を行う第二騎士団に依頼をした。第一騎士団ではこの事は話題にしないように」

皇太子殿下の指摘に何も言い返す事が出来ずに第一騎士団団長は騎士の礼をした。


「かしこまりました」

「普段、何事も無いのは第一騎士団のお陰である故、蔑ろにしているわけでは無い」

一晩経って皇太子殿下も冷静になったのだろう。

自分のしようとした事を冷静に受け止めてくれるといいな。


「では、私は帰る」

皇太子殿下と私は馬車へと向かった。その後ろを布に包んだ剣とステッキを持ったブラウン団長と第一騎士団団長がついてくる。

「ご令嬢と共にいらっしゃると思わず至らぬ点が多くて申し訳ありませんでした。ですから帰りは侍女を同伴させて頂きます。ごゆっくり街を散策ください」

「?はあ」


ブラウン団長の謎の気遣いに首を傾げながら馬車に乗ると、ベアトリスがいた!

「フフフ。驚きました?普段、品行方正な皇太子殿下は公務を放棄して遊ばないのは存じておりますが。今日は特別です!でも遊びにいくわけではありませんよ?後ほどブラウン団長のお屋敷に行きますから着替えてください」

「わかりました。昨日はありがとうございます。忘れないうちに。これは昨日のお礼です」

ショールと焼き菓子を渡すと、ベアトリスは喜んでくれた。

「ランチの時間が取れないので、こちらをお召し上がりください。皇太子殿下、質素で申し訳ありません」


ベアトリスからもらったサンドイッチを少しちぎって毒見をし、皇太子殿下に差し上げると、普通にペロッと食べてしまった。

「シェリル様は毒見係も兼ねてるんですね」

「ベアトリス様、誤解です。毒見係を兼ねてるのではなく、私は単なる毒見係なんです」

そう言って笑いかけると、ベアトリス様は私と皇太子殿下の顔を交互に見た。

「あら。殿下はそうは思っていらっしゃらないみたいだけど」

そう言われて皇太子殿下を見たけど、いつもの無表情な殿下だった。



屋敷に着くと、ベアトリスは着替えの籠を持ってきた。


「別荘を求めてやってきた異国のご夫婦と、その侍女になり切りますからね。騎士団の馬車が出入りするのは普通だからです」

楽しそうにそう言われたので、私もにこりと笑った。


案内された部屋で私は異国に多い真っ黒な髪のウィッグを被り、扇子を持つ。

ドレスは少し大人っぽい異国のデザインだ。


「一晩で用意したんですか?」

「違うわ。舞台衣装を数人分、勝手に拝借したの。だから、申し訳ないけど取り扱いには気をつけてね」

「わかりました」

「昨日、ブラウン団長様から聞いたんだけど、もしかして昨日、足を上げていたのは太腿にナイフが仕込んであったの?女性団員の潜入の時はそうするって教えてくれたわ。私てっきり男性を誘っているのかと……」

「そう見えたって後で伺いました。以後気をつけます」

私は複雑な顔でベアトリスを見た。


「やだ!私はわかっているから大丈夫」

ベアトリスはフフフと笑うと自分も侍女の服装を着る。

「では、急ぎましょう」

部屋を出ると、そこには黒髪の皇太子殿下が立っていた。

短髪の黒髪を綺麗にセットして、異国の服を着ている。

着替えを手伝ったのは追いかけるようにしてやってきたブラウン団長だった。


「お似合いですわ。皇太子殿下とは雰囲気が違いますから、素顔でも大丈夫でしょう。ところで髪型は?」

皇太子殿下用に用意してあったウィッグを被っていないのでベアトリスは不思議そうにそう言った。

私から見るとラーシュ小隊長に似ているから、何故かドキドキする。


「今、地毛を黒髪に染めていて、長い金髪はウィッグだよ。君たちに隠しても仕方がない」

「そうなんですね。信用していただきありがとうございます」

ブラウン団長も着替えを済ませたようで、胡散臭い格好をしている。


「不動産業者に見えますか?昨日、先の国王陛下のプライベートな施設を調べました。皇太子殿下が調べると、相手に気づかれてしまうかもしれないですから」

ブラウン団長の言葉に、皇太子殿下は驚いた顔をした。

「そっと調べるのは大変だったろう。それに寝てないのでは?」


「いえ。寝ないのはいつもの事です。それに第二騎士団は、主に下位貴族が起こした犯罪を取り締まる部署です。地図などを調べていても気が付かれません。今現在、亡くなった先代国王陛下の不動産はありませんでした」

「そうだろうな。見つからないだろう」

「だから、過去に非公式で滞在した可能性のある物件を先代国王の手記を元に想像しました」

そう言ってブラウン団長は得意げに笑った。


「怪しいのはこの3つの不動産です。では、見に行きましょう!不動産を探す若夫婦である異国の地から来たリモビッチ夫妻とその侍女をお連れしますよ」

そう言ってブラウン団長は私達を馬車に案内する。

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