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困った事になりました

次の日、広域課に行くとベルツ副総長がお爺ちゃんの格好でお茶を飲んでいた。

「おはよう、アンネッテ。昨日はお疲れ様。やっぱり君は強いね。私も昨日の試験を副総長として見ていたが惚れ惚れしたよ。だからほら、引き抜きの依頼が届いている」

そう言って書類を見せてくれた。


書類には各騎士団からのアピールカードが付いていた。


「どこも魅力的な内容で書いてあるだろ?でも『騎士団副総長』の名前で断りを入れた。アンネッテ嬢は大切な諜報員だからね」

とお爺さんの格好のベルツ副総長は笑っていた。


その言葉に、ホッと胸を撫で下ろした。

先日から自分がもしかしたら男性に免疫がないのかもと疑っているので断ってくれてよかったのかも。

『敵』とか『対戦相手』だと平気なのかもしれないが、同僚だと平気じゃないかもしれない…。

これは今度、オリアーナに相談してみよう。


でも、オリアーナは別の任務でここもと不在だから今度相談しよう。


気を取り直して、今日も在庫管理や、倉庫のチェックや遠征後の後処理で、色々な武器庫や備品庫を回らないといけないが、いつもと違う現象が起きた。


倉庫前に通りかかった他の騎士団員が皆優しいのだ。

「代わりに持つよ」

とか、

「倉庫の管理ならしますから」

とか。


皆、キラキラした眼差しをむけてくる…。

どうなっているの?

私はどうしていいかわからずに、小さな声で「ありがとう」とか「大丈夫です」としか言えない。

…やっぱり男性が苦手なのかな?


しかも、ランチに誘われたりもする。

なんだかおかしい!私は逃げ腰でお断りをして急いで広域課に戻った。


「副総長、なんだか今日、色々な方から話しかけられる上にランチに誘われるんですけど。何が起きてるんですか?」

混乱している私を見て副総長はニヤッと笑った。


「アンネッテ嬢、引き抜き作戦を各団が行っているんだよ。どこも即戦力が欲しいから必死だなー」

そう言って副総長は声を出して笑った。


「副総長は騎士団で二番目に偉いんですから何とかしてください!」

私はすがるように副総長の袖を掴んでお願いをした。


「私が断りを入れても、『本人が移動を希望したら引き抜きをかけれる』から、各団、必死なんだよ。

『灰色の髪の毛のメガネをかけた女性団員を見たら勧誘しろ』ってね。それほどアンネッテ嬢の能力を評価されているわけだ。まあ、騎士団の精鋭が集まった広域課だから当然だけどね」


「そんな…。仕事になりません…。オリアーナもこんな目にあってるんですか?」

私は涙目になって聞いた。


「そうだね。試験官を引き受けて3年間はあったよ。基本的に修練生の試験の対戦相手は広域課が務めるから、毎年引き抜きの依頼が届いているよ。」


「これは…無理です。まるでデートのお誘いのように皆、言うんですよ?今までの対応とは全く違うんです…どうしたらいいのか…」

絶望した私を見て、副総長はクスクスと笑った。


「アンネッテ嬢は、これから諜報員として色々な所に潜入してもらう事になる。その時に、男性を簡単にあしらう方法を身につけないと、諜報活動がままならない時がある、、だから今は訓練だ。そのためにわざわざ君に対戦相手になってもらったんだ」

副総長はそう言ってから一口お茶を飲んだ。


「本当は君という優秀な存在を隠しておきたかったよ。でも、これからの事を考えたら、荒療治が必要になると思ってね」

ベルツ副総長はお爺ちゃんの顔でにっこり笑った。


「じゃあ、私に男性に免疫がない事に気がついていたんですか?」

なおも涙目は治らない私が、絶望しながら聞いた。


「ああ。試験の対戦相手をお願いしに来たユーベルくんとのやりとりを見ていてね。ユーベルくんと君とは親戚の設定だから、彼に免疫をつける訓練をお願いをしたかったんだが…あいにく今日から出張でいないんだよ」


「そうですか…。それはそれで困りましたが。」

私は声が震えた。


「ここに閉じこもってては、荒療治にならんからな。ほら、いつものように仕事を続けないと。君の目標は第一騎士団に入ることなんだろう?そこは見た目がいい男子ばかり数十名所属しているぞ。このままでは第一騎士団に移動は無理だよ。」

そう言って部屋から追い出された。


なんとかコレをやり過ごさないと…。

でも、うまくやり過ごせなくて、この日はマントを羽織り、顔を見えないようにしてコソコソと移動し、人気が無くなったら倉庫に入るを繰り返した。


そして、お昼はいつも広域課で食べていたのに、ベルツ副総長に追い出されて外で食べる事になった。

この日は中庭の植え込みの影に隠れてコソコソと食べた。


なんとか1日を終えたけど、相談したいオリアーナはいない。

どうしたらいいかわからずに、次の日になった。


朝、広域課に行くと、私の机が花束やチョコレートなど贈り物でいっぱいになっていて、しかもそれぞれに個人名でメッセージが付いている。


「これは一体…。」

メッセージカードを読んで呆然とした私を見て、開封したカードをベルツ副総長が横から読み上げた。


「なになに『是非、第五騎士団とアーミナの森に遠征に行きましょう』なんだ!この、情緒のないお誘い文句は」

副総長は笑った。


「こっちは?『貴方様と対戦したという弟から貴方様の素晴らしさを伺いました。是非今度私と2人っきりで手合わせ願えませんでしょうか?』…決闘か?これは。わかっとらんな」

副総長は顔をしかめた。


「ではこちらは『今度、オペラを見に行きませんか?貴方様のために一番眺めの良いボックス席を用意いたします』これはデートのお誘いとしてマトモなカードだ」

副総長はうんうんとしたり顔でカードを読んだ。


こんなカードがついた贈り物が30個程度届いた。各団から一つずつ届き、残りは個人的なお誘いだ。


そして、昨日は私を見かけた騎士団員が声をかけていたわけだが、今日は違う。

倉庫の側に、各団の団員が数名、私を待ち構えているのだ。

しかも、見た目重視で選ばれたとすぐわかるような見目麗しい男性が待機している…。


どうしよう…。


悩んだ挙句、私は救護班に飛び込んだ。

あの、ラパロ伯爵令嬢達の所に来たのだ。だが、彼女達には演習場で救護の仕事があるとの事だった。

…残念。

救護班の倉庫の整理手伝うから、こっちも手伝ってとお願いしようと思ったのに…。


どこの倉庫や武器庫の側にも数名の男性が待機している。

これは困った。


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