初めての…?
本日2回目の投稿となります
使用人に紛れていたオリアーナは、
「あまりエンリケ公爵様にはお会いしたく無かったのですが…仕方ありませんね」
そう言ってため息をついた。
「シェリルのお披露目はどこかの夜会を予定しておりましたが、仕方ありません。今日が初お披露目だわ。さあさあ、準備をいたしませんと間に合わなくなりますよ」
ビアンカ様の言葉でオリアーナを含めた私たち4人は午後から行われるパーティーの準備へと取り掛かった。
「この辺りの荘園に来ている貴族をリサーチしませんとね。服装が被るといけませんわ」
ビアンカ様は、食料品を仕入れている業者の所に使用人を走らせて、ここ数日、食品を納入している荘園を調べた。
その結果、この周辺に最近スパが出来て、貴族の週末の滞在先として人気があるという事がわかった。
ということは、誰か招待されているかわからないという事だった。
それなら、それぞれが好きなドレスを選べばいいという事になった。
オリアーナは渋々だったが変装を解いた。
そして栗色の髪を高い位置で結い、ダイヤモンドを散りばめた髪飾りを付けて、タイトなマーメイドラインのドレスを着た姿でエントランスに現れた。
オリアーナの姿はため息が出るほど美しかった。
私はブルーのドレスを選んだ。
本当は腕の赤くなった部分が隠れるドレスがよかったけど、残念ながら長袖はのドレスは持っていないし、膝まである長い手袋も無かった。
半袖のドレスと、手首までの手袋…。
赤い所は隠せない。
仕方がないので、赤くなった所に塗り薬を塗ったあと、肌と近い色のファンデーションを塗った。
「数時間ですし、赤く腫れた所に直接お化粧しているわけではありませんから大丈夫ですよ。でも、ファンデーションがドレスにつかないようにだけ注意してくださいね」
と、オリアーナに念を押された。
エンリケ公爵家の使用人であろうあの黒髪の人に会えるかも。
ある意味では、この傷で私だとわかってくれるかもしれない。
でも、わかってもらっても困るかな……。
会えたからといって何かがあるわけではない。私の顔は見られてないし、使用人に話しかける事もないだろう。
でも、短い間だったけど、すごく楽しかったから何処の誰か知りたい気持ちがあった。
今も、もしも会えるかも、と考えただけでなんだかワクワクする。
これって何なのかな?でも、あんまり深くは考えたくない。
今の私の任務は皇太子殿下にお近づきになる事だ。
自分の任務を再確認して、私の目の色と同じアクアマリンのネックレスをつけて、鏡の前でシェリルの仕草をもう一度やってみて、アンネッテとしての自分を封印した。
午後、4人で馬車に乗りエンリケ公爵の荘園に向かうと、何台かの馬車が停まっており、既にパーティーが始まっていた。
アンネッテとしても、シェリルとしても公の場に参加したことがない。
正真正銘、初めてのパーティーだ。
エンリケ公爵の荘園は、葡萄園に面しており、煉瓦造りの重厚な感じだ。
室内に入ると、沢山の調度品が飾られており、贅を尽くした作りになっている。
簡単な立食パーティーと聞いていたけど、お料理は豪華で、ゆっくり座ってお話できるように、広いホールの所々にソファーやテーブルが置かれていた。
招待されているのは100人くらいだろうか。
若い貴族も多い。
ドキドキしながらそっと周りを見た。
私たちが入って行くと、沢山の方がビアンカ様やグラファント夫人に挨拶に来た。
そしてオリアーナにも挨拶をするが、挨拶の内容でわかってしまった。
オリアーナはやっぱり未亡人なんだ。
しかも、かなりの財産を相続した未亡人……。
内容から推測すると、オリアーナはすごく歳の離れた貿易業を営む、デスタン侯爵様に嫁いだそうだ。
デスタン侯爵様は若い時に奥様を亡くされて、お子様もいなかったため長い間独り身だったみたいだ。
しかしそうは言っても、大変整った容姿の方だったので、女性に大人気で、女性からのアプローチが絶えなかったが、全く相手にせずに独り身を楽しんでいたようだ。
そんなデスタン侯爵様とオリアーナの電撃結婚は、当時の社交界の噂の中心だったようだ。
しかし結婚して1年が経過した頃、デスタン侯爵様が流行病にかかり帰らぬ人となった…。
そしてオリアーナは未亡人になり、遺言によりデスタン侯爵様の残した莫大な遺産を相続したようだ。
今オリアーナはデスタン侯爵家の爵位と貿易会社を侯爵様の弟君に譲り、ご自分は王都のタウンハウスに1人で住んでいると皆に説明している。
オリアーナは未亡人だから一代かぎりの爵位は残るそうだ。
だから、侯爵未亡人と呼ばれているのね。
オリアーナはご主人を亡くされてさぞ辛かっただろう…。
そうは見えないけど、人はそれぞれ苦労をしているのね。
なんだか触れてはいけない事を聞いた気がした。
私以外の3人は沢山の人に声をかけられているので、私は1人でお料理を取りに行くことにした。
その時、新しい参加者がいらっしゃったようで会場がザワザワした。
エンリケ公爵様と同格かそれ以上の貴族の方がいらっしゃったようだけど、私にはあまり関係ない。
そう思って、忙しく働いている使用人の中に、あの男性がいないかこっそり見ながらお料理の前に来て、お皿を手に取った。
すると、会場のザワザワがだんだんと近づいてきた。
そして、
「はじめまして、レディ。何か美味しそうなお料理があったら教えてもらえませんか?」
と声をかけられた。
声の主を見ると、なんと皇太子殿下だった!
皇太子殿下は私を見て笑った。




