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いよいよ試験が始まりました

本日2回目の投稿となります。

私は短剣を右手に持つとスタート地点に立った。


「捕まったら負けだ。気がついているとは思うが、支給された武器に殺傷能力はないので思う存分、戦ってくれたまえ。それでは、スタート!」


試験官の掛け声で、私を含めた4人が一斉にスタートをした。


まず、ぬかるんだ道を進む。防水加工をしてあるドレスだから、汚れないので気にせずに進んだ。

すると、意図的に作られた壁の影から剣を持った数人が出てきて、行く手を阻む。


私は切り掛かってくる一人を避けて、ピンヒールでつま先を踏んだ後、肘打ちをした。


次の相手が大きく振りかぶって斬りかかろうとしてくるので、背中を丸めて懐に入り、溝落ちをグーで殴ってから、膝蹴りをして、怯んだ所をすり抜けた。


尚も向かってくる相手の剣を短剣で受け止めて、背中に回るとピンヒールで頭を蹴り上げた。…多分痛いと思うけどこれは実践だ。

それから、次に立ちはだかった兵士の肩に右足を掛けてジャンプすると、高い塀を飛び越えてゴール。


私が一番乗りだった。

短剣一本で済んでしまった。



12歳の頃から先生は、「騎士というのはいつでもどんな時でも騎士でいないといけない」と言ってドレスでの訓練をしていた。

ご令嬢として夜会に出ていても騎士は騎士なのだ。

それが先生の教えだし、私もそうだと思っている。


それにドレスは理にかなっている。

動きやすいし、警戒されない。だから、戦闘服よりもむしろ戦いやすい。



次は一対一での対戦だ。

半径20メートルの枠から出てしまうか、倒れたらまけ。


相手は、体は大きいけど俊敏さに欠ける騎士だった。

「お前が一次試験を通過したのはマグレだ。俺が数秒で仕留めてやる」

とバカにして煽ってきた。 


相手が剣を振るう前に、後ろに回り、後頭部を蹴って、足を払った。

すると、いとも簡単に気絶してしまった……。

周りを見ると、開始から数十秒で終わったのは私だけだった。


試験官に促されて壁際に移動する。

私の相手は相変わらず気絶していて、先輩騎士に医務室に連れて行かれた。

もう少し手応えのある相手と手合わせしたかったけど、相手は選べないから仕方ないわ。



そしてその次は、1時間内に森を抜けてゴールまで進む課題だった。

第一試験と第二試験をクリアしないとこの試験は受けられないため、大幅に人数が減っていた。


スタートすぐに、私は木に登ると枝から枝へと飛び移り、簡単にゴールできた。

木の上から下を見ると、沢山の騎士が森に隠れていたけど、誰も木の上にはいなかった。


木の上からゴールに向かう受験者がいるとは想定していないのかしら?



試験はこれで終わりだった。

結局、短剣一本しか使わなかった。


そしてその後、面接があった。



「アンネッテ・グリーグ子爵令嬢。いくつか質問がある。」

私はそう言われて、椅子に座るように促された。


「はい。なんなりと」

私は笑顔で試験官を見た。試験官は父よりも年上で威厳があり、どっしりと座っていた。


その横には髪の毛を真ん中分けにして整えた若い文官も座っている。


「今回の実技試験は難しかったですか?」

若手の試験官からの質問だった。


「…いえ…そのような事は。……」

簡単だったと答えていいものか迷って言葉を濁した。


「最終試験があんなに元気だった受験者は数年に一人だから、質問しました。木の上からゴールしたのはグリーグ子爵令嬢が初めてですよ」

試験官は困った声で答えた。


「履歴書を見たが、学校には入らずに家庭教師をつけていたという事だが…。君の他に生徒はいるかな?」

次は威厳のある試験官からの質問だ。


「弟が、先日より一緒に習っています」


「君の武術の先生と、家庭教師の先生を教えてもらってもいいかな?」


「はい。グラファント先生が武術の先生で、先生の奥様が家庭教師として勉強や教養やマナーを教えてくださいました」

私の答えに満足したようで威厳のある試験官の質問は以上だった。


「では、デビュタントはまだのようですが、いつの予定ですか?」


「社交界に出るつもりはないので予定しておりません」

私の答えに試験官は何かを考えていた。



「わかりました。では、不躾な質問だが…婚約者はいますか?もしいたら、騎士団に入団した後にすぐ退団する可能性は…あるのかどうなのか。こんな事を聞いて申し訳ない」

冷や汗を拭きながら質問してきた。

センシティブな話だから、質問した若い文官は顔を硬らせている。


「婚約者はいますが私の意思で婚約したわけではありません。婚約者からの連絡は5年間ありませんし、私は節目にしかカードを送っていません。私としては早く解消したいですし、婚約解消の理由になる事なら何でもしますわ」


私は義務として、お誕生日やニューイヤーのカードを送っているし、プレゼントも贈っているがお礼の返事はない。


「グリーグ子爵令嬢。申し訳ない事を聞いた」

文官様はホッとした顔をしている。


「では、質問は以上となります。ありがとうございました」

文官は優しくそう言うと、出口のドアを開けてくれた。


私はカーテシーをすると、会場を後にした。

婚約はできれば解消したいけど、こちらからは言えない。

相手は侯爵家で、こちらは子爵家。

婚約期間は6年だけど、婚約者に会ったのは数回しかない。


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